第29章ー固定された通路ー
施設内の地下通路
薄暗いコンクリートの廊下で赤い非常灯だけが明滅している。
あきととかぁりは警戒しながら敵と対峙していた。
遠くでは爆発音が聞こえ振動が伝わる。
誰かが戦っている。
「あっち派手だねぇ」
かぁりが軽く笑う。
「あー……りゅーいちの兄貴か、ぽた達かな」
あきとも前を見たまま返す。
2人の前には男女ペアの敵がいた。
男は大柄で短髪、身体は筋肉質。
腕には無数の傷跡。
女は細身長い黒髪。
壁へ寄りかかるように立っている。
だが、空気が違う。
強い。
あきとが目を細めた。
「兄妹はすでに向かった。俺たちも通っていいか?」
女が即答する。
「無理」
その瞬間、男が踏み込んだ。
速い。
床が砕ける。
拳が真正面から向かってくる。
あきとが咄嗟に腕で受ける。
ドゴォッ!!
「っ……!」
拳は重く、あきとはそのまま吹き飛ばされ、壁へ激突する。
「痛っ……!」
かぁりが即座に手を振る。
周囲の廃材と金属片を集め、どこからか薬液を取り出す。
複数物質が空中で混ざる。
すると、白煙が周囲を取り囲む。
その瞬間、爆発が起きる。
ドォン!!
だが、男が煙の中から飛び出した。
「効かねぇなぁ」
かぁりが目を細める。
(硬い……?)
すると、後方の女が静かに口を開く。
「アンタ、前出すぎ」
男が軽く舌打ちする。
「悪ぃ」
呼吸と距離感、それに視線。
明らかに慣れている。
長年組んできた連携じゃないと出せない技。
女が静かに前へ出た。
その時、両目に深緑色の紋章が浮かぶ。
「私が宿すのは停止の紋章」
低い声。
「空間、物質、エネルギーの動きを一定範囲で固定する能力」
瞬間、空気が変わる。
重いし、動きづらい。
床へ足が吸い付くような感覚。
「……なにこれ」
かぁりが顔をしかめる。
あきとも眉を寄せる。
「範囲制限型か」
女は淡々としていた。
「そうよ。相手を逃がさないための紋章」
その直後、男が笑う。
両目に暗赤色の紋章が浮かぶ。
「俺の紋章は蓄積の紋章」
拳を握る。
「受けた衝撃や力を体内へ蓄積し、任意で解放できる」
ドンッ!!
床が砕ける。
ただ踏み込んだだけ。
なのに、衝撃が異常。
「あぁ、めんどそうな能力…」
あきとが顔をしかめる。
男が笑う。
「今まで食らった分、返してやるよ」
そう言うと、男は突撃し、拳をこちらに向けている。
あきとがとっさに避ける。
しかし、壁や床が衝撃だけで砕ける。
威力が高すぎる。
さらに、女の宿す停止の紋章により動きづらい。
この状況は相性が悪い。
男が拳を振るう。
ドゴォッ!!
あきとが受け流す。
だが、押される。
かぁりが横から薬液弾を投げる。
女が手を向けた。
ピタッと空中停止する。
「は?」
液体がその場で止まる。
床に落ちず、流れない。
「うわ、ズル」
かぁりが眉をひそめる。
女は冷静だった。
「能力は使ってこそでしょ?」
その瞬間。
男が突っ込む。
「終わりだ!!」
あきとが咄嗟に防御。
ドゴォッ!!
今度は完全に吹き飛ばされた。
壁が砕ける。
「っ……!」
かぁりが目を見開く。
(まずい)
押されている。完全に
しかも敵2人はお互いを完全に信頼していた。
隙がない。
女が言う。
「右」
男が即座に動く。
その連携だけで、攻撃範囲が完成する。
あきとが舌打ちした。
「めちゃくちゃやりにくいな……!」
かぁりも苦笑する。
「だねぇ」
だが、まだ2人とも
紋章を使っていなかった。




