表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シグナリア  作者: もへもへーぬ
第1部ー紋章の継承者ー
29/29

第28章ー入口での戦いー

施設入口前でアスノとぽたは戦闘を続けていた。


崩れた外壁、上る黒煙に飛び散る火花。


そして、響く戦闘音。


島全体が揺れているようだった。


敵陣営の中に家族が入っていったので、アスノとぽたは入口を守っていた。


2人の前には十数人の敵。


その中心に明らかに格の違う2人がいた。


1人は前線に立つ大男。


巨大な戦斧を持ち、傷だらけの肉体をしている。


明らかに歴戦の戦士だった。


そして後方にもう1人。


軍服のようなコートを羽織った細身の男。


静かな視線で戦場を見渡している。


大男が笑った。


「へぇ」


戦斧を肩へ乗せる。


「ガキかと思ったが、妙に落ち着いてんな」


赤黒い紋章が両目に浮かぶ。


「俺ァ、ガルド」


地面を踏み鳴らす。


ドゴッ!!


床が砕ける。


「砕撃の紋章を宿してる」


戦斧を軽く振る。


衝撃だけで瓦礫が吹き飛んだ。


「紋章の能力は衝撃を与え、発生する衝撃を操る」


ぽたが「うわ」と笑う。


「絶対痛いやつじゃん」


後方の男が静かに口を開く。


「私はレイス」


細い瞳に青白い紋章。



「統制の紋章を宿している」


直後周囲の雑兵達の動きが変わった。


呼吸、足並み、視線。


全てが揃う。


「他者の動きを最適化する能力」


アスノが静かに観察する。


(指揮型だね)


面倒。


それもかなり厄介な相手。


レイスは淡々と言った。


「時間稼ぎで構わない。奴らをここで足止めしろ!」


その瞬間雑兵達が一斉に動いた。


銃撃に火炎瓶、岩槍。


能力と武器が同時に飛ぶ。


ぽたが前へ出た。


「っ!」


回転し跳躍する。


ぽたは紙一重で敵の攻撃を躱す。


そのまま懐へ潜り込み――


ドゴッ!!


拳を入れる。


敵が吹き飛ぶ。


「ぐぇっ!?」


さらに蹴りを加え。


肘も入れていく


体術だけで次々と敵を沈めていく。


ぽたが笑う。


「思ったよりちゃんとしてるねぇ!」


だが敵側も崩れない。


レイスの指示が飛ぶ。


「右側を包囲せよ」


瞬間敵が同時に動く。


ぽたの退路を塞ぐ。


そこへ。ガルドが現れる。


「ブッ潰れろォ!!」


戦斧が振り下ろされた。


ドォォォン!!


衝撃波が発生し床が爆ぜる。


ぽたが咄嗟に跳ぶ。


「っぶな!?」


ぽたが空中に浮かぶとそこへ容赦なく銃撃を浴びせる。


このままでは避けきれない。


ヒュンッ!!


矢が通り抜ける。


アスノの矢が銃弾を弾いた。


ぽたが着地する。


「助かった〜」


アスノは静かに弓を引く。


敵の肩、武器、足とアスノは正確に射抜く。


致命傷は避けている。


だが確実に戦力を削っていた。


レイスが目を細めた。


「射撃は精密だな」


アスノは答えない。


その時ガルドが突っ込んだ。


速い。


巨体とは思えない速度。


アスノへ接近し戦斧横薙ぎ。


アスノが後ろへ跳ぶ。


しかし、衝撃が追ってくる。


「っ……!」


壁へ叩きつけられる。


ガルドが笑う。


「避けても意味ねぇぞ!」


衝撃そのものを飛ばしている。


こちらもかなり厄介。


ぽたが割って入る。


回し蹴りを繰り出すもガルドが腕で防ぐ。


ドゴッ!!


重い音がし、力は互角。


ガルドが目を見開く。


「……細ぇのに、重いな。お前の蹴りは」


ぽたは笑う。


「そっちこそ。見せかけの筋肉じゃないみたいだね」


その瞬間レイスが静かに手を上げた。


敵達が同時に動く。


連携し、アスノとぽたは完全包囲されてしまう。


アスノとぽたの死角をどんどん潰していく。


アスノが小さく息を吐く。


「……面倒だね」


ぽたも笑顔を消した。


「うん」


力は互角でも圧倒的な人数不利。


しかも敵の紋章能力相性は悪くない。


ガルドの範囲攻撃。


レイスの集団統制。


普通ならとっくに押し潰されている。


だがそれでもアスノ達は崩れない。


ガルドが笑う。


「いいねぇ」


戦斧を構える。


「九識ってのは、もっと化け物かと思ってたが、こんなもんか」


アスノが静かに矢を番える。


ぽたが軽く構える。


2人とも。


まだ紋章を使っていない。


レイスが違和感に気づいた。


「……待てガルド」


視線がすごい…


レイスは咄嗟に2人の目を見る。


紋章は出ていない。


なのに互角。


その事実に気付いたレイスの表情が僅かに変わった。


ガルドが笑う。


「待たねぇ!!」


戦斧を担ぎ直す。


「九識共これで終いだ!!」


ドォン!!


再び地面を踏み砕く。


衝撃が走り瓦礫や破片が雨のように降り注ぐ。


アスノとぽたへ同時に襲いかかる。


ぽたが前へ出た。


「姉ちゃん!」


アスノが矢を放つ。


ヒュンッ!!


飛来する瓦礫を撃ち落とす。


だがその隙にレイスが静かに手を振った。


「左三、右二、前衛突入」


雑兵達が一斉に動く。


完全連携し死角をなくし2人を包囲する。


まず先にぽたの動きを封じに来る。


「っ……!」


ぽたが舌打ちする。


(やりにくっ……)


レイスの統制の紋章。


周囲の人間の動きや判断を最適化し、

組織的な戦闘能力を大幅に引き上げる能力。


個の力は低くても、

集団になるほど真価を発揮する。


実際に雑兵達の動きは、まるで一つの生物だった。


「追い込め」


レイスが冷静に言う。


ガルドも笑う。


「終わりだァ!!」


戦斧が振り下ろされる。


ドォォォン!!


砕撃の紋章。


衝撃そのものを操る能力。


振動、圧力、破壊。


一撃ごとに周囲を巻き込む純粋火力型。


床が吹き飛ぶ。


ぽたは横へ跳ぶ。


だが、そこへ雑兵がおり銃口がぽたに向く。


「もらっ――」


瞬間、ぽたの目が細くなる。


(……うるさいなぁ)


静かに、一歩踏み込む。


その時ぽたの両目に白い紋章が浮かんだ。


場の空気が変わる。


レイスが目を見開く。


「……っ!」


ぽたが、ゆっくり息を吐く。


「じゃ、そろそろ本気でいこっか」


「僕の宿す紋章は神楽の紋章」


「九識相伝紋章の一種で、九識に伝わる舞を舞うことで、自身、または対象者の身体能力を大幅に引き上げる能力」


身体強化型。


だが、ただ強くなるだけではない。


動きそのものが“舞”として完成される。


流れや重心、速度など。


全てが滑らかに繋がる。


その瞬間ぽたの動きが変わった。


軽く速い。そして柔らかい。


なのに見えない。


「なっ――」


敵が反応する前。


ぽたはもう背後にいた。


ドゴォッ!!


掌底を命中させ、雑兵が吹き飛ぶ。


回転し舞いを続ける。


その流れのまま次へ。


肘、蹴り、拳。


一切止まらない。


まるで演舞。


だが一撃一撃が重い。


「速っ……!?」


「見えねぇ!!」


敵が崩れる。


ぽたはそのまま、流れるように一直線にレイスへ向かった。


レイスが即座に指示を飛ばす。


「ヤツを止めろ!!」


雑兵達が前へ出る。


だが遅い。


ぽたは舞う。


滑るように敵の間を抜ける。


「っ……!」


レイスが初めて焦りを見せた。


「近づ――」


ドゴッ!!


腹部へ拳。


レイスの身体が浮く。


ぽたがそのまま回転。


蹴り。


レイスが岩壁へ叩きつけられた。


「がはっ……!」


レイスは崩れ、意識が飛んだ。


レイスが気絶したことで統制が消えた。


雑兵達の連携が崩壊する。


「隊列が……!」


「指示がない!?」


ぽたが笑う。


「司令塔はこれで落ちたねぇ」


だが次の瞬間。


「情けねぇな!レイス!」


ガルド。


巨大な衝撃を纏い、アスノへ突撃していた。


「姉ちゃん!!」


ぽたが叫ぶ。


だが間に合わない。


ガルドの瞳で赤黒い紋章が激しく輝く。


「これで終わりだァァァ!!」


戦斧を全力で振り上げる。


一撃必殺。


戦斧が振り下ろされる。


直後、轟音が鳴り響く。


そして爆煙が周囲を包む。


地面が砕けた。


ぽたの表情が変わる。


「……っ」


ガルドが笑う。


「終わ――」


戦斧が止まる違和感を感じる。


戦斧が進まない。


爆煙の中。


アスノが立っていた。


静かに黄色の紋章を両目へ浮かべながら。


「これが私の紋章…受容の紋章」


「相手の攻撃やエネルギーを“受け止め”、無効化する能力」


完全防御特化。


だが単純な防御ではない。


“受け入れる”ことで成立する紋章。


ガルドの全力の一撃。


それをアスノは真正面から受け止めていた。


「……は?」


ガルドの顔が固まる。


衝撃、圧力、破壊全てを受け入れた。


そして戦斧がアスノの前で止まっている。


アスノが静かに言う。


「アンタの力や紋章じゃ私の紋章を破ることはできない。」


ガルドが力を込める。


だが一ミリも動かない。


「な、んだよそれ……!」


アスノは静かに弓を持ち直した。


ゼロ距離で矢を番える。


ガルドの目が開く。


「待――」


ヒュンッ。


矢を放ちガルドの肩を貫く。


「がぁぁぁぁっ!!」


戦斧が落ちた。


続けて二本を太腿と脇腹に射る。


致命傷は避けている。


だが戦闘不能状態に陥る。


ガルドが膝をつく。


「く、そ……」


アスノは静かに息を吐いた。


黄色の紋章がゆっくり消えていく。


ぽたが近寄る。


「お疲れ、姉ちゃん」


アスノは小さく頷いた。


そして入口前。


敵部隊は完全に沈黙していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ