第23章ー証言ー
正門前に拘束された二人の適合者。
筋骨隆々の男はなおも暴れようとしていた。
「離せッ!!」
腕へ力を込める。
だが、動かない。
身体に巻き付いた糸が、まるで生き物のように締まっていた。
「ぐッ……!」
筋肉が軋む。
それでも切れない。
魔法系の男も同じだった。
光を発生させようとする。
だが指先が動かない。
紋章を起動するより早く、糸が関節の動きを封じている。
「なんだよこれ……!」
恐怖が混ざった声。
その前でカナムは静かに二人を見下ろしていた。
そして。
「りゅーいち」
「おう」
「あきと」
「はいよ」
床に座っていたあきとが面倒そうに立ち上がる。
「筋肉の方を地下牢へ」
「りょーかい」
りゅーいちが男を担ぎ上げた。
「離せコラァ!!」
暴れる。
だが、りゅーいちは気にしない。
「あーうるせぇ」
「あきと、脚持て」
「やだ」
「働け」
そんな会話をしながら、二人は地下へ消えていった。
残った魔法系の男へ、カナムが視線を向ける。
「そっちは?」
アヤが聞く。
「私が連れていく」
短く答える。
男が顔を引きつらせた。
「ま、待て……!」
カナムは無言。
そのまま歩き出す。
魔法系の男の身体も、糸に引かれるように動かされる。
抵抗している。
だが身体が言うことを聞いていない。
まるで、自分の身体じゃないように。
その姿を見て京慈は少しだけ背筋が寒くなった。
数時間後。
九識邸・大広間。
現在いるのは、
京慈。
めい。
ぽた。
そしてアスノだけだった。
他の兄妹は尋問へ向かっている。
「……長いですね」
京慈が呟く。
アスノは紅茶を飲みながら頷いた。
「まぁ、相手も必死でしょうし」
めいは少し落ち着かない様子だった。
当然だ。ついさっきまで戦闘があったのだ。
しかも今行われているのは尋問や拷問。
普通の生活では聞くことのない言葉ばかりだった。
ぽたがそんなめいを見て、静かに口を開く。
「安心して」
「必要以上のことはしないと思うから」
穏やかな声だった。
だが逆にリアルだった。
必要なら、やる。
そういう意味でもある。
めいは小さく頷く。
京慈も黙っていた。
この家の“裏側”を。
少しずつ理解し始めていた。
しばらくして扉が開く。
戻ってきたのは、
りゅーいち。
らき。
そら。
りすず。
かぁり。
あきと。
そして最後に、カナムとアヤ。
空気で分かった。
成果はあったようだ。
アヤがそのままソファへ座る。
「疲れたー」
完全に仕事終わりの声だった。
「どうだったんですか」
京慈が聞く。
するとりゅーいちが肩を回しながら言う。
「最初は全然喋らなかった」
「忠誠心だけは一丁前にあるんだな」
そらが続ける。
「何者かに忠誠誓ってる感じだった」
「どちらかというと洗脳に近い感じ」
りすずが端末を操作しながら補足する。
「だから軽めに拷問した。」
めいが少し固まる。
京慈も微妙な顔をした。
かぁりが慌てて補足する。
「ほんと軽くだよ!?」
「死なない程度!」
「フォローになってない」
京慈が思わず突っ込む。
だがアヤは淡々としていた。
「それでも根幹部分は吐かなかった」
「だから仕方なく自白剤を使用した」
空気が静まる。
「結果、わかったことは」
アヤの目が細くなる。
「主犯はモードでほぼ確定。」
モニターへ、新しい情報が表示される。
二人の証言記録。
『病弱だった』
『彼から治療を受けた』
『最初は地獄みたいに苦しかった』
『でも山を越えた瞬間、全部消えた』
京慈は息を飲む。
「…紋章…移植」
ぽたが静かに呟く。
アヤが頷いた。
「おそらく、この治療の時に紋章を入れられてる。地獄みたいな苦しみは紋章の反応だと想定できる」
人体実験。
そう呼ぶのが、一番近かった。
めいの顔が少し青くなる。
京慈も拳を握っていた。
カナムが静かに言う。
「適合者の数は?」
りすずが画面を切り替える。
「曖昧だった」
「ただ」
数字が表示される。
『最低10名』
「少なくとも10人以上は確定。あたしたちで出した概算から最低値は少し下がった。」
そらが続けた。
「もとは15で、今回2人来たから誤差は3か。」
「つまり10〜13が最低値。」
京慈は小さく息を吐く。
それでも多い。しかも、13人全員が紋章持ちの可能性。
アヤが最後の情報を表示する。
地図赤くマーキングされた場所。
「拠点位置も私たちが調べたやつとほぼ一致してる。場所は芳骨島。」
「複数証言から見て、ここで間違いない」
カナムが静かに立ち上がる。
黄金の瞳が全員を見る。
「数日後」
短く告げる。
「セブンスター財団と九識家による共同戦線を決行する」
空気が変わる。
本格的に始まる。
これはもう。
調査ではない。討伐だ。
そして、その中心に。
京慈も立っていた。




