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シグナリア  作者: もへもへーぬ
第1部ー紋章の継承者ー
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第21章ー作戦会議ー

九識邸、大広間中央。


展開された戦術モニターには、大量のデータが映し出されていた。


王国内の地図に赤い点が紋章発現反応を示した場所。


暴走案件の時系列。


数値。


一般人の京慈からすれば、見ただけで頭が痛くなりそうな量だった。


だが、カナム、りすず、アヤは、それを当然のように処理している。


「ここ」


りすずが画面を拡大する。


「この期間だけ、反応数が急増してる」


アヤが頷く。


「でも暴走件数とは一致してない」


「ズレがあるな」


3人の会話に、そらも加わる。


「発現反応だけ残ってる地点が複数」


「未発見の被害者か、紋章発現の成功例、もしくは無関係なものか…」


空気が重い。


京慈は静かにモニターを見る。


「……成功例」


その言葉の意味が分かってしまう。


暴走しなかった者。


つまり、紋章を“扱えた”側。


アヤが端末を操作する。


「今確認されてる発現波長数は38」


「そのうち暴走確認済みが23」


数字が並ぶ。


そして、りすずがぽつりと言った。


「差し引いた値が敵戦力の最大値と捉えるべきか…それとも最低数で捉えるか…」


画面へ、新しい数字が表示される。


『15』


静寂。


「推定15名の紋章適合者がいる。あくまで概算だからそれ以上も以下もあり得る。」


アヤが言う。


「暗数もあるはずだから、15人以上で考えるべきかな。」


空気がさらに重くなる。


めいも不安そうに京慈を見ていた。


「流石に多すぎるね」


ぽたが静かに呟く。


「ああ」


りゅーいちも珍しく真面目な顔だった。


通常、紋章持ちは稀少な存在だ。


それが、確定してるだけで15人。


しかも、人工的に生み出された可能性がある。


「しかも問題は数だけじゃない」


アヤが続ける。


「紋章持ちには、可能なら“紋章持ち”をぶつけた方がいい」


京慈は少し眉をひそめた。


「……相性ですか?」


「単純な話なんだけど」


アヤが頷く。


「普通の人間じゃ、能力への対応が難しい」


「紋章の有無によっては戦い方が別物だから」


例えば硬化などの身体強化や空間干渉、幻覚などは普通の戦闘経験では対処しきれない。


だから“同じ側”が必要になる。


アヤが周囲を見る。


「現在、こちら側の紋章戦力は」


「九識兄妹と京慈の計10名。あいにくセブンスター財団には紋章持ちがいないからな…」


そこにカナムが静かに言った。


「お前も行けるだろ、アヤ」


アヤが少しだけ笑う。


「私のこと買いかぶりすぎだし、それでも数負けしてるよ」


11対15+α。


しかも相手の能力は不明。


全員が適合成功者とは限らない。


だが逆に言えば、“成功してる可能性”がある。


完全な未知数だった。


「しかも、」


そらが端末を操作する。


「万が一、相手側に複数紋章保持者がいた場合、数値以上に不利になる」


「最悪、1人で2~3人の能力持ちと戦わなきゃならないかもしれない。」


かぁりが珍しく真顔になる。


「それはかなりヤバいね」


京慈も小さく息を飲む。


そんな相手を、どう止めるのか。


するとカナムが腕を組む。


「なら、どう転がってもいいように作戦を複数想定する。」


その一言で、空気が切り替わる。


アヤがモニターを切り替えた。


『CASE-1 各個撃破』


「正直、これが一番ベスト。」


アヤが言う。


「適合者を発見次第、即時分断・拘束する。最も安全な手段」


りゅーいちが頷く。


「数を減らせるならそれが理想だな」


だが、りすずが首を振る。


「問題は情報共有速度だ。敵側がコミュニケーションネットワーク持ってたら、即逃げられる。」


次。


『CASE-2 囮作戦』


「こちらが意図的に動いて、相手を釣る」


そらが補足する。


「相手側も、紋章持ちには興味ある可能性高い」


京慈が少し嫌な顔をした。


「つまり、狙われ役ですか」


「正解」


即答だった。


「即答しないでください」


だが、アヤは軽く笑う。


「安心して。死ぬ役はやらせない」


「安心できないんですけど」


少しだけ空気が緩む。


だが、すぐに三つ目が表示される。


『CASE-3 強襲制圧』


空気が変わった。


「モードの拠点を発見できた場合」


アヤの声が低くなる。


「九識家とセブンスター財団戦力で、一気に潰す。これは時間との戦いでもある。」


真正面からの総力戦。


その意味を、全員理解していた。


ぽたが静かに呟く。


「一番被害が出る可能性が高いですよね」


「だが、」


カナムが言う。


「最も確実な手段でもある」


静寂が訪れる。


それぞれ思うことがあるのだろう。


そして、アヤが最後に言った。


「問題は、“どれになるか分からない”こと」


敵の規模も、能力も、目的も。


全部が未知数。


だから全パターンを想定する必要がある。


京慈はモニターを見つめる。


気づけば自分も、その輪の中に立っていた。


少し前まで紋章なんて知らなかったのに。


今はその戦いの中心へ、足を踏み入れようとしている。


その時りすずの画面が、突然赤く点滅した。


全員の視線が向く。


「……紋章反応?」


そらが眉をひそめる。


りすずは数秒黙り。


そして、


「違う」


珍しく、少しだけ表情を変えた。


「これ」


画面を拡大する。


そこにはたった一つ。


異常なまでに濃い、紋章波長が表示されていた。


部屋の空気が、一瞬で凍りつく。


アヤが静かに呟く。


「…どうやら…見つかったかもね」

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