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61「湖水の解析」

カイルに《魔力貯蔵器》を使い始めた頃、シュウは治療士の冒険者にお願いし、ナード農園へ向かってもらった。

 目的は、湖水の影響で魔力の過剰蓄積に苦しんでいたおばあちゃんの様子を確認し、適切な処置をしてもらうことだった。


 一週間ほど時間が経ち、カイルの魔力の放出が順調に進んだころ、治療士から連絡が届く。

 「おばあさんも、ようやく座って話せるようになりましたよ」


 シュウは胸の中で安堵のため息をついた。

 「よかった……これで、おばあちゃんも無事に回復してくれたんだな」


 カイルの回復とあわせ、シュウの肩の荷が少しずつ軽くなっていくのを感じた。

 過去の失敗や危険があっても、努力と協力によって少しずつ状況は改善されている。

 作業小屋には、久しぶりに穏やかな空気が流れ始めた。


一段落ついた作業小屋で、シュウは机に向かい、カイルの回復とこれからの計画を手紙に綴った。


 ——カイルの容態は順調に回復し、座って会話ができるまでになりました。

 ——今回の件で湖水の魔力がどれほど危険であるかを実感しました。

 ——今後は、この湖水の性質を深く知るため、解析や実験を進めていきます。


 ペンを置き、シュウは深く息をついた。

 「これでレオニードにも現状を伝えられる……」


 手紙を封筒に入れ、シュウは郵便の手配を済ませると、次に進むための準備に意識を切り替えた。


シュウは作業小屋の机に向かい、湖水の小瓶を手に取る。水面を覗き込むと、微かに緑がかった光が揺れていた。あの光に込められた魔力の密度——まだ分析も完全ではないが、とんでもない強さであることは分かる。


 「……これをそのまま扱ったら、カイルみたいに魔力暴走を起こすかもしれない」

 慎重に呟きながら、シュウは思案した。


 魔力を安全に扱うためには、まず密度を薄める必要がある。

 方法は二つ——物理的に希釈するか、魔力を他の媒介で分散させるか。


 物理的希釈は簡単だ。普通の水や液体に少しずつ混ぜ、濃度を下げていく。しかし濃すぎると効果が薄れ、薄めすぎると使い物にならない。

 魔力媒介を使った分散は、魔法の理屈を利用して、魔力を一時的に魔道具に取り込ませること。シュウはカイルの治療で使った魔力貯蔵器の仕組みを思い出した。


 「つまり、魔力を少しずつ取り出して、濃度を調整すれば安全に扱える……か」

 ノートに簡単な図を書き、希釈比や魔力吸収のタイミングをメモする。


 シュウは決めた——まず小量の湖水を魔力貯蔵器で吸い取り、他の液体で薄めながら特性を観察する。そして徐々に濃度を上げ、最終的に酒造用の素材として使えるレベルに調整する。


 「これなら安全に、そして効率的に魔力を活用できそうだ」

 指先に力を込めて、シュウは小瓶を慎重に振る。湖水の緑の光がゆらりと揺れ、これから始まる解析と試作への期待を映していた。

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