46「教会の中へ」
張り詰めた空気のまま、牧師とシュウ、レヴァンの会話は延々と続いた。
「酒は人の心を腐らせる毒……汝らはその毒を撒き散らしているに過ぎぬ」
「腐らせる? 違うな。人に笑顔を与えるものだ」
「笑顔……? それは堕落の仮面にすぎん」
互いに譲らぬ言葉が何度もぶつかり合う。
だが突然、一人の信徒が牧師に近づき、そっと耳打ちをした。
牧師の顔に、ふっと冷たい笑みが浮かぶ。
「……なるほど。そういうことか」
その目が、愉悦と悪意にきらめいた。
「では——特別に招待しよう」
両手を広げ、まるで歓迎するかのように告げる牧師。
「さあ、教会の中へ。神の裁きを見届けるといい」
レヴァンが一歩踏み出し、低く問う。
「……カイルは、中にいるんだな?」
牧師は答えず、ただニコリと笑った。
教会の重厚な扉が、ギィ……と音を立てて開かれる。
薄暗い内部からは、香のような、しかしどこか焦げ臭い匂いが流れ出してきた。
炎に照らされた祭壇の奥に、人影がかすかに揺らめいている。
シュウは喉を鳴らし、拳を固く握る。
(カイル……! 無事でいてくれよ)
こうして二人は、牧師に導かれるまま、闇深き教会の中へと足を踏み入れていった——。
祭壇の奥に、かすかに動く人影。
シュウは一瞬でそれがカイルだと理解した。
「カ……イル!」
声を張り上げ、シュウは駆け寄る。
だが目の前にいるのは、いつもの元気な商人の面影はなく、目に生気を失った男――薬か何かを盛られたのか、体も硬直し、微動だにしない。
シュウの胸が張り裂けそうになる。
「頼む……目を覚ませ、カイル……!」
何度も呼びかけるが、返ってくるのは沈黙だけ。
祭壇の蝋燭の炎が二人の顔を揺らめかせる。
その中で、牧師が薄笑いを浮かべ、ゆっくりと歩み寄ってきた。
「ほう……ようやく見つけたか。君の“仲間”は、もう手遅れのようだがな」
シュウの心臓が跳ね上がる。
(手遅れ……じゃない! 絶対に助けてみせる!)
握りしめた拳から、ほんの微かに魔力が光を帯びる。
心の中でシュウは決意を固めた——
(ここから先は、絶対に負けられない!)




