第18話「6つの瓶と運命の一杯」
樽から小分けにして煮立たせた麦酒は、今テーブルの上にずらりと並んでいる。
それぞれ、三種類のハーブを組み合わせて作った6パターン。
色も香りも、瓶ごとに微妙に違っていた。
「……さあ、飲むぞ。」
一つ目。
舌に触れた瞬間、草原のような香りが広がる。だが後味は甘く、酒というよりは薄いハーブティーのようだ。
二つ目。
口に入れた瞬間、舌を刺すような強い苦味。悪くないが、喉の奥でえぐみが残る。
三つ目。
口当たりは柔らかく、ほんのりと花の香り。だが甘みが主張しすぎて、麦の旨味を押しのけてしまっている。
四つ目。
色も香りも地味で、味も平凡。いわゆる「普通」の酒。悪くはないが記憶に残らない。
五つ目。
爽やかさはあるが、後味がもたつく。飲み干したあとに水を飲みたくなる。
そして六つ目――。
口に含んだ瞬間、舌にガツンと衝撃が走った。
苦味は力強いのに、喉を通ったあとには一瞬で消え、麦の香ばしさと淡い甘みだけが残る。
「……これだ!」
俺は瓶を見下ろす。ラベル代わりに貼った紙にはこう書かれていた――“ヤミシラ+ヒレツナ”。
あの農家のじいさんが教えてくれた中でも、一番クセの強い二種類のハーブだ。
ネリィにも飲ませると、彼女は目を細めて言った。
「……これは、癖になる味ね。パンチがあるのに、後味が引きずらない」
「そうだ……この路線でいこう。あとは配合を詰めるだけだ」
胸が高鳴る。異世界で初めて、“本当にうまい”と思える一杯に近づいた気がした。
「次は?」とネリィ。
「この酒に合うツマミだ」
俺は空になったグラスを置き、口角を上げた。
「パンチのある相棒には、相応しい相棒を見つけなきゃな」
こうして、ツマミ探しの旅が始まった。




