↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/26

第二十一話 決闘

 

 デザートイーグルが火を噴き、弾丸が飛び出す。

 しかし、前に出ていたグロリアの大盾が甲高い音を立てて、弾き返した。

 俺はさらに左右のデザートイーグルで3回発砲するが、すべて同じ結果となった。グロリアは何の痛痒も感じていない様子だ。

 グロリアは好機と見たのか大盾を構えたまま突進してくる。その影に沿うように翔流も迫ってきた。

 グロリアの突進の勢いを利用したシールドバッシュをバク転でかわすが、その後に翔流が切りかかってきた。「聖魔剣グリザ・エア」の漆黒の刀身が空間を食らうような軌跡を描いて、俺に降りかかってくる。

 すかさず、翔流にデザートイーグルを向ける。するとエイム補正が掛かり、時間の流れが遅くなった。


 エイム補正。銃で狙いをつけると補正が掛かり、ゲーム時間の流れが遅くなるような仕様になっている。これでシューティングが苦手な人でもあわてずに照準できるようになっているのだ。

 勿論、照準を着けるだけが使い道じゃない。こうやって攻撃をかわすときにも使うことが出来る。


 ゆっくりになった翔流の斬撃を回避し、俺は後ろに距離を取った。

「今のが本物のチートかい?」

 翔流が剣を構えなおした。

「今のはゲームの仕様だ。チートはこれからだ」

 俺は後ろへ飛び下がりながら、グレネードポーチからフラッシュバンを取り出し、床へ転がした。


 一瞬の強烈な閃光と轟音。


 ほんのつかの間の目晦ましだ。しかし、それで十分。

 轟音の残響が王座の間に木霊する中、俺はすかさずスニーキングして、柱の影に隠れた。スニーキングLv10だ。そうそう見つかるまい。

 俺はポーチからスマホを取り出し、MODマネージャーからあるMODを起動する。


 Console Command Controller。


 通称CCC。

 コンソールコマンドをボタン一つで実行できるMODだ。

 コンソールについては長々と説明しない。「SKYRIM コンソール」でググってくれ。

 CCCではボタンにコンソールコマンドを登録し、ボタンを押すとそのコマンドが実行されるのだ。

 そして、俺はボタン1から3までを2回ずつ押した。ゲームプレイ中からすでに登録していたボタンだ。


 登録してあるコマンドは1から以下の通り。

 ボタン1:player.addav attackdamagemult 0.2

 ボタン2:player.addav handgunmod armorpiercingmult 0.2

 ボタン3:player.addav handgunmod stoppingpowermult 0.2

 ダメージ倍率とハンドガンの貫通力と衝撃力の倍率に0.2を加算するコマンドだ。


 俺は柱の影から飛び出し、反対側の柱へ向かって走りながら、グロリアの大盾に向かって数発弾丸を撃ち込んだ。今回も弾き返されたが、グロリアの反応が先ほどとは違う。

 少しグロリアの足が止まった。

 柱の影に入り込み、またCCCのボタン1から3までを今度は3回ずつ押す。これで、ダメージ、貫通力、衝撃力が2倍だ。


 柱の影から、グレネードを放り投げる。

「グロリア!」

 翔流が慌てて声を掛けると、グロリアは転がるグレネードに向けて大盾を構える。

 グレネードが炸裂するが、グロリアの大盾と防御スキルによって被害を免れられてしまった。

 しかし、その隙に柱の陰から飛び出し、デザートイーグルを乱射しながら走り出す。


「くっ!」

「キャアア!」


 でたらめに撃った銃弾がエレナと葛葉にダメージを与えた。

 俺は別の柱の陰に隠れ、この座標をCCCでブックマークする。そのあとすぐに柱を飛び出し、次の柱へ。そこでも座標をCCCでブックマークする。

 それを何度も繰り返した。


「ちょこまかと! コソコソと卑劣な戦い方しかできないのか!」

 翔流がブチギレして叫んだ。

 卑劣って言われても、こっちは1対8よ。それに俺はシューティングしてるんだから、突っ立って戦うわけないじゃない。

 そう思いながら、CCCで次のコマンドを仕込む。


「そう怒るなよ。これが俺の戦い方だって知ってるだろ」

 そう言って、俺は柱の陰から姿を現した。

 左右にデザートイーグルを構え、片方をグロリアに発砲、もう片方を美琥斗に向けた。


「ぐううっ!」

「いやぁぁ!」


「貴様っ!」

 激高した翔流とエレナが俺に突っ込んでくる。

「封神剣弐拾式愛羅新陰斬っっ!!」「アークドラゴンスマイトっっ!!」

 恐るべき威力を秘めた剣がさらにスキルらしきものによってとてつもない衝撃をまとって、俺に迫ってくる。

 世界を削るような黒い残光が俺の左肩から袈裟切りに胴を叩き切ろうとしている。エレナの斧というよりは鉄塊を円盤状の矢の上に生物学的な配列で施された異様な斧が、俺の頭を叩き潰すべくアクシズのように撃ちこまれてくる。

「「獲った!」」

 二人の確信は深かった。


 だが、「聖魔剣グリザ・エア」が俺の肩に食い込もうとしたと同時、エレナの斧が俺の前髪にふれた瞬間。忽然と俺は姿を消していた。


 俺は反対側の柱の陰に瞬間移動していた。置き土産を置いてね。


 先のコマンドは

 Sleep 500

 COC player bookmark1

 5秒後にブックマークに瞬間移動するコマンドだ。


「くぅ、どこに!」

 必殺の一撃が空を切り、悔しがる翔流が俺を目で探そうとした。しかし、其の足元には黒い円盤、地雷が設置してあった。

 爆発によって、翔流とエレナが吹っ飛ぶ。


 柱の陰から柱の陰へ走りながら、銃を乱射し、さらにCOCコマンドで瞬間移動を繰り返す。ダメージ倍率と貫通力と衝撃力の倍率をさらに上げると、銃弾1発でグロリアですら怯む様になった。後衛で防御の薄い葛葉、ハーデ、フェリシア王女はかなりのダメージを受けるようだった。

 何度も回復魔法を使用している。


 俺のチョコマカはまだまだこんなもんじゃないぞ。

 Sleep 50

 COC player bookmark11

 Sleep 50

 COC player bookmark12

 Sleep 50

 COC player bookmark13

 Sleep 50

 COC player bookmark14

 Sleep 50

 COC player bookmark15

 Sleep 50

 COC player bookmark16

 ・・・・・・


 0.5秒ごとにブックマークを瞬間移動しながら、デザートイーグルの乱射とグレネードを浴びせかける。

 連続したグレネードの爆発の中に、銃弾が降り注いだ。

 立ち上る爆炎、肌を焼く熱風、目を潰すような黒煙。鳴りやまない銃声とマズルフラッシュ。空気を切り裂く銃弾。四方から飛び交う火線。

 まるで阿鼻叫喚の戦場だ。

 これこそがクリムゾン・ロウだ。


 俺は柱の陰に身を潜め、スニーキングして様子を伺った。

 煙が晴れた後には、ボロボロになった翔流たちが辛うじて立っていた。

 その表情には、驚愕と絶望が滲んでいる。

 当然だろう。ラスボスを倒したのだ。強くなったつもりでいたのだろう。それなのに、ここまで一方的にボコボコにされるとは思いもしなかったに違いない。

 そうでなければ、あそこまで増長しなかったろう。


 さて、そろそろチートというものをわからせるか。


 俺はCCCで次のコマンドを叩いた。


 tcl


 俺は2メートルの高さまで空中を歩くと、今まで隠れていた柱の中に入り込んだ。

 顔だけ、柱の中から突き出して、翔流達の方を向く。


「よう。そろそろ勝てないことがわかってきたか?」


「なっ!!」

 翔流が面白いほど驚愕してくれる。大理石の柱の中から顔だけ出している奴を見たら、当然の反応だろうか。

 驚きのあまり、絶句する翔流達を見ながら、俺は柱の中から出て、柱に垂直に立った。

「ほら~、地下鉄~」

 俺は床に向かって歩き出す。しかも、柱を床に見立て、階段を下るように柱に体を埋めていく。よくあるパントマイム芸だが、縦横が逆になったトリックアートとして現実にして見せた。

 しかし、足がすぐに柱の反対側から突き出て、柱に垂直、床に平行のまま、斜め下にスライドする人みたいになってしまった。そのまま、床を突き抜けて、部屋の外に出て、また床から部屋に戻った。

 非現実的な光景に見えたのだろうか。翔流達は目を見開きながら呆然としている。


「なに油断してんだ? 俺たちは戦ってんだぞ?」

 美琥斗に向けて、デザートイーグルの引き金を引く。銃弾は美琥斗の太ももをたやすく貫通し、醜く穿たれた銃創から鮮血が吹き出す。

「ああっ・・・」

 美琥斗は悲鳴を上げて、膝をついた。


「くそっ!」

 翔流がすぐさまグリザ・エアで斬りかかった。

 しかし、その斬撃は俺の体をすり抜ける。

 エレナとグロリアも攻撃してきたが、なんの手ごたえもなくすり抜けていく。

 俺は3人の攻撃を無視して歩き出す。うずくまる美琥斗と回復魔法をかけている王女の体をそのまま貫通して、ゆっくりと翔流たちに向き直る。


 翔流が魂が消えたかのような顔で俺を見ていた。

「なにを・・・したんだ・・・」

「なにって? チートだよ。ほんとのチートを見せてやるって言ったろ」

 俺は腕をグロリアの大盾に通り抜けさせた。

「俺の体から、当たり判定(コリジョン)を外したんだよ。当たり判定(コリジョン)が無いから、当然、衝突も発生しないし、攻撃も食らわない。本来は地形にスタックした時なんかに使ったりする」

 大盾を貫いた俺の腕をゆっくりと持ち上げた。手に握られたデザートイーグルの銃口は、グロリアの額を通り抜けて、頭の中に潜り込んでいる。


 ちらりと美琥斗の方へ目を向ける。先ほどの傷は、王女が回復魔法で治していた。

「でも、撃った銃弾には当たり判定(コリジョン)が発生するんだから、まったく本当にヒドイお話だと思わない? この状態で銃を撃ったら、どうなると思う?」

 グロリアがギクリと硬直する。

「脳みそが吹き飛ぶだけだから大したことじゃない」

「そんなの・・・即死じゃない・・・」

 葛葉が顔を蒼褪めさせる。

「蘇生してやるから、安心しろ。当然、蘇生コマンドも即死コマンドも使えるから、簡単に生き返ることができるよ。とりあえず、全員、一回死んでみるか? 大丈夫、ちゃんと生き返らせてやるよ」


 翔流たちから戦意が喪失される。武器を持つ腕から力が抜け、弛緩したようにダラリと下がった。

 俺は空気の階段を登るように空中を歩く。

当たり判定(コリジョン)がないから、物理判定がなくなる。つまり、重力も効かなくなる。この世界の物理演算エンジンはなんだろう? ハヴォック神だったらイヤだと思わない?」

 俺は空中を歩きながら、CCCを操作し、もう一度、tclコマンドを打つ。

 途端に、体に重力が掛り、床に着地した。

「よっと。これでまた当たり判定(コリジョン)が戻った」


「さっき言った。蘇生と即死のコマンドも試してみるか」

 CCCを操作し、いざという時のために登録しておいたキャラクターに対してコマンドを実行する。


 resurrection character_a


 魔王の体がピクリと動いた。

「う・・・あ・・・」

 呻きながら、魔王は体をゆっくりと持ち上げ、立ち上がった。

「我は・・・一体? 勇者に討たれたのでは、なかったか・・・?」

 とりあえず、試しに、さっき死んだ魔王を生き返らせてみた。


 自分が生き返ったとは、すぐには理解できないのだろう。魔王はまるで状況が呑み込めていないようだった。

 それは、翔流たちも同じのようだ。

 全員が呆けた顔で、俺を見つめた。


「貴様が、もう一人の勇者か・・・」

 魔王がそう呟いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。