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第十九話 決戦

 

 ついに、魔王城の最深奥部まで来た。


 翔流かける達の目の前に、巨大で堅牢で豪奢な扉がそびえている。この向こうに魔王の座する、王座の間がある。

 ここに来るのには、いつもの作戦を使っていた。要するに、大部隊で魔王城を攻め立て、少数精鋭部隊で城内に侵入するパターンだ。

 俺もまたいつものようにスニーキングして翔流達の後をコソコソと付いていく。


 陽動作戦で敵を引き付けていたとはいえ、さすがは魔王城、なかなか容易ではなかった。魔王直属のモンスターが近衛として控えているのだ。それでも翔流達はその強大な敵たちを打ち倒しながら魔王城をひた走り、ついには王座の間までたどり着いたのだ。

 俺もいつものように隠れた場所から援護射撃を行なっている。

 魔王直属のモンスターともなるとかなり強いので、スナイパーライフル、ワルサーWA2000が大活躍だ。それ以下の武器となると、一発の威力が足らない。



「いくよ」

 翔流が他の仲間達に声をかけ、扉に手をかける。

 翔流が扉を押し開き、王座の間へ入っていく。他のみんなもそれに付いていき、中へ入っていった。

 俺もしばらく時間を置いてから、こっそりと誰にも気付かれないように中へ入った。


 王座の間は、さすが魔王の座する場所といった感じの絢爛豪華な場所だった。広く天井も高くそして威圧的な空間。王座の間を飾り立てる調度品はみな格調高く、そして豪奢で精緻な作りをしている。天井を支える支柱も精巧な彫刻が施されている。どれも素晴らしく、そしておどろおどろしかった。


 俺はスニーキングしたまま、柱の影に隠れて様子を伺う。

 魔王は王座に座ったまま、まだ戦う様子は見えない。どうやら、翔流達と会話しているようだった。

 周りをそっと見回してみたが、魔王以外には誰もいない。陽動に引っかかって、皆出払ってしまった、ということじゃないことはこれまでの道中でわかっている。

 魔王一人だけで勝つ自信があるのだろう。


「悪いとは思うけど、討たせてもらいます」

 翔流が魔王に言った。

「フッ、我が居城に土足で入り込み、その上、我を討つとは。傲岸不遜もいいところであるな」

「勇者って言うのは、そういうもんです」

「勇者か……。笑わせる。勇者であろうが、人間風情に我を倒すことは出来ん。そうなっておるのだ」

「事、ここに至らば、問答は無用! いざ、勝負!」

「意気や良し! しからば、我が前に立ったことを後悔しながら、死ぬが良い!」

 魔王が王座から立ち上がり、マントを翻した。

 そして、剣を抜く。

 その刀身は禍々しいほどドス黒く、抜いた瞬間、黒い炎が立ち上ったかのように見えた。遠くてわからないが、柄などには何か装飾が施されているみたいだ。


「皆、行くぞ!」

『おう!!』

 翔流の声に皆威勢のいい声で応える。そして、一斉に構えた。


「フォースアーマー!」

「精霊王の加護!」

「サンクチュアリ!」

「カリヨン・フォートレス!」

 葛葉くずは美琥斗みこと達が強化呪文でパーティーメンバにバフを掛けていく。

 魔王は突っ立ったままその様子を見ている。ほんとにヨユーかましている。ここで、アンチマテリアルライフルXM500で一発かましてやろうか? いや、ここは翔流達に任せるべきか。


「シールド・アサルト!!」

 重騎士のグロリアが大盾を構えたまま、突撃した。そのまま盾を叩きつけようというのだろう。大質量の大盾とスキルの威力と勢いが合わされば、下手なものだと圧殺確実だろう。

 しかし、魔王は剣を振るい、グロリアの大盾に打ち当てた。バフの効果プラス大盾に付加されているエンチャントが魔王の剣の魔力とぶつかり合う。バチンバチンと青白い火花が散った。

「ふんっ」

 魔王が剣を振りぬくと、グロリアは後ろに飛ばされ、仲間達のところまで後退させたれた。しかし、その瞬間を狙い済まして、戦士のエレナが飛び掛る。


「龍牙咬神撃!!」

 大斧が魔王に振り下ろされる。魔王はその渾身の一撃を剣で受け止める。

 その隙を突いて、翔流が切りかかった。


「ロスト・ファンタズム!」

 聖剣エア・セリウスがさらに輝きを増す。斬撃が光の軌跡を描いて、魔王を切り裂いた。「ぬっ!」

 魔王は剣で振り払うように硬直中の翔流をなぎ払ったが、ドロテアが翔流を引き戻したため、魔王の剣は虚しく空を切った。


「ツェーラー・イグナシオン!!」

 葛葉が杖を掲げると、そこから極大で精緻な魔方陣が展開され、魔方陣から極太の熱光線が照射された。青白い熱光線が魔王を飲み込む。魔王も剣で光線を受けるような形で抵抗していた。

 魔王の周りの床が焼け爛れ歪んでいく。

 熱光線のの照射が終わる。魔王は明らかにダメージを食らっていた。


 いける。翔流達が押している。ここまで強くなっていたのか、こいつら。まだ油断は出来ないが、このまま上手くいけば、勝てる。




 魔王がついに膝を付いた。

「ぐっ……ぬう……」

 力尽きたかのように頭を垂れている。

 ついに勝った! しかし、翔流達に油断はない。むしろより一層警戒している。さすが歴戦の勇者パーティーだ。

 魔王の強力な全体攻撃を繰り出してきたときなど、危機的な状況は何度かあった。しかし、翔流達はその状況に慣れているのか、あわてず体勢を立て直し、自分達の陣形、戦い方を崩さないよう慎重に戦った。さしもの魔王も力尽きたというわけだ。

 あとは止めを刺すだけだ。


「ぐくくくく」

 魔王がくぐもった笑い声を上げた。

「ここまでやるとはな」

「……」

 翔流は応えない。油断なく構えている。

「そう。その通りよ。戦いはこれからよ!」

 魔王がよろめきながら立ち上がった。いや、俺の目からはもうこれ以上戦いようがないように見えた。しかし、翔流達にはそうではなかったみたいだ。翔流達が驚きに目を見開いた。


「なっ、魔力が……」

「回復? いや、復元していっている……」

 魔力が見えない俺にはわからなかったが、魔力が元に戻り、魔王が復活を遂げてしまったようだ。

「さあ、また戦おうか」

 魔王の宣言の元、翔流達はまたも激しい戦いを繰り広げ始めた。


 そして、2回目の決戦も翔流達が勝ちを収めたが、再び魔王は復活した。

「なぜ……」

 翔流がポツリと呟く。

「その問いに答えるほど我は愚かではない」


 このままではジリ貧だ。

 次も勝つことは出来るだろう。でもその次は危うい。そして、その次の次は負ける確立が高くなる。

 どうしたらいい?

 今、動けるのは俺だけだ。俺が魔王復活の秘密を暴き、それを阻止しなければならない。しかし、俺には魔力を探知することが全く出来ない。魔王がどこから力を得ているか探ることなんて出来るのだろうか。

 いや、それでも動かなければならない。

 俺はこの場を翔流達に任せて、王座の間の奥へ進むことにした。


 王座の間の奥には小さな扉があり、さらに奥へと続いていた。

 俺は扉を開け、先に進む。そこにはこれまでのような広さとは比べ物にならないほどの狭い廊下が続いている。俺は廊下を通り抜けた。

 そして、一旦、魔王城の外に出ると、連絡橋のようなものが別の尖塔へと続いていた。

 ここまで一本道だ。もし、隠し扉のようなものがあったら、俺には見つけられない。アウトだ。

 このまま、進むしかない。

 俺は連絡橋を渡り、尖塔の内部に入る。


 尖塔は螺旋階段になっており、さらに上のほうへと続いていた。魔王の王座の間よりもさらに高い位置にある建物。なんとなく怪しい。

 螺旋階段を上っていくと、そこには礼拝堂のようなものがあった。

 俺は、礼拝堂の扉を開け、中に入った。


「おやおや、こんなところまで、ゴミ虫が紛れ込んでくるとは……」

「魔王様が懸念されていた通りだな」

 礼拝堂の中では、二人の魔将が待ち構えていた。

「ドーモ、コンニチハ」

 俺は挨拶しながら、礼拝堂を見渡した。広さとしてはカルレオン城の執務室ぐらいの広さだろうか、さまざまな悪魔を描いたステンドグラスが荘厳で冒涜的な光を差し込んでいる。


 そして、一番奥には何かの石像が祭られていた。

 大きさとしては、人の倍ぐらいの大きさだろうか。その石像はこれまでの彫刻品と違って、荒削りで、抽象的だった。炎のようにも見えるし、所々に人の顔や獣の顔が浮かんでいるようにも見える。

 抽象画のようにディフォルメされているのか、それとも写実的に彫刻しようにも対象がとらえどころがなく、こうとしか表現しようがなかったのか。


「おや、魔神像に目を付けるとは、存外見る目があるわね」

 ボンテージ風のドレスを纏ったグラマラスな美女が嘲るように言った。美女とはいえ、背中からコオモリの羽が広がっているが。

「油断はするな。魔神像を前にして平然としておる人間だぞ」

 こちらは獅子の顔をした武人のようだ。質実剛健そうな甲冑を着込んでいるが、むしろ中身が甲冑を弾けさせんばかりに充実している。


「わかっているわ、皆取り囲むのよ」

 物陰から十匹以上のモンスターが湧いてきた。これまでのモンスターの中で最上位種の強力なモンスターたちだ。

 魔将が二人に、最上位モンスターが十匹以上。本来なら、王座の間で魔王を護衛しているものたちだろう。

 それが、ここにいる。ビンゴかもしれない。

 しかし、この場面、絶体絶命じゃないか、俺?

 手加減は出来ないな。

 モンスターたちが俺を取り囲み、一斉に飛び掛らんばかりだ。

 俺はホルスターから武器を抜いた。


 武器を構えて、礼拝堂の真ん中を目掛けて打つ。

 すると、その場所に、直径1メートルほどの黒い球体が出現した。

 ブラックホールだ。

 ブラックホールは出現すると、たちまち凄まじい吸引力で周囲のものを吸い込み始める。モンスターたちも抵抗むなしく次々と黒い球体の中へ飲み込まれていった。

 さらにもう一発。

 二個のブラックホールが猛威を振るう。

 あれだけいたモンスターたちは一匹残らずブラックホールの中に消えた。

 そして、魔将たちも何とか抵抗しているが、もう少しで、吸い込めそうだ。

 そこでダメ押しのブラックホール3個目。

 それで、必死に抵抗していた魔将の二人も、ついにブラックホールの中に吸い込まれて、消えしまった。


 ブラックホーラー


 それが、今、俺が使った特殊武器枠の武器だ。

 DLC『ジョッキー博士の有頂天絶頂ウェポンパック』で購入可能なDLC武器。効果のほどは今見てもらった通りだ。


 ブラックホールが収まると礼拝堂の中は俺以外誰もいなくなってしまった。

 俺は石像へ脚を向けた。

「魔神像か」

 石像はブラックホールに飲み込まれていない。ブラックホーラーの欠点としては、オブジェクト属性のものは吸い込めないという点だ。

 背景まで吸い込んでしまっては、ゲームにならないからな。


「こいつを何とかしないといけないのか」

 そこで、出番なのがこいつ。

 俺は近接武器枠からとりだした。

 それはライトセイバーだった。

 比喩でもなんでもなく、マジモンのライトセイバーだ。効果としては、なんでも切り裂く。それこそオブジェクトだろうがなんだろうがだ。


 俺はライトセイバーで魔神像を真っ二つに切り裂いた。さらにぶつ切りにして、細かく砕いていく。

 石像一つがただの石の山になるまでにそう時間は掛からなかった。

 これでいいのだろうか。いまいち不安なので、もう一つ手を打っておく。


 今度はサブマシンガン枠から武器を取り出す。

 エクトプラズムスプレーガンだ。見た目はただのスプレーガンだ。DLC『ヴァンパイアナイト・バイ・ナイト』で取れるDLC武器で、物理攻撃が効かないゴースト系の敵や、呪われたオブジェクトを腐食し溶かすことが出来る。

 理屈はわからないが、『クリムゾン・ロウ』では魔力とか霊とかゾンビとかオカルト的なものにはこのエクトプラズムスプレーガンを使うことになっている。


 俺は魔神像の残骸にエクトプラズムスプレーを吹きかけていく。泡立ちが凄まじくよく、魔神像の残骸はすぐに白いアワアワのモコモコになってしまった。

 シュワシャワシャワと泡がはじける音とともに残骸が溶けていく。


 これでいいはずだ。戻ろう。

 翔流達は上手くいっているか?

 勝っているのだろうか?




魔王戦のBGMは「Assault of Brave Flame」といったところでしょうか

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