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第十七話 離反

 バルデムの奥にある領主の城に、俺たちは突撃した。

 バルデムの街中の制圧は、後続の部隊に任せ、主力は城の前に集結していた。ここまでの作戦は順調だ。

 今度は、俺達が先鋒で、翔流達の道を切り開くのが役目になる。ボスに会ったとしても、倒してしまわないように気を付けなければ。

 城門を破った後、俺達を先頭にして城内に突入していく。


 俺はアサルトライフルのM16A2を装備している。AK47に威力では1歩劣るものの、グレネードランチャーが付いているのだ。

 グレネードを発射すると何故か手榴弾を消費して、グレネードを打てる仕様になっているのだが、このグレネードの威力が馬鹿げているのだ。一発で装甲車が吹っ飛ぶのだから、トンデモ威力この上ない。

 先頭の道を切り開くにはこの上ないだろう。前のほうに味方はいないのだから、グレネードを撃ちまくっても大丈夫だし。


 大挙して押し寄せて来る敵モンスターをM16A2から間断なく吐き出されるM855弾でなぎ払いつつ、グレネードで吹っ飛ばしていく。

 敵に穴があき、そこに押し込む形で俺が突っ込み、更に穴を深く切り裂く、そして俺に続く、バルバラさん、ドロテア、カミラ、エウフェミアが敵陣に開いた穴を広げるべく攻撃を繰り出す。


 城門を抜けると、城の入口までの広場がある。敵が埋め尽くさんばかりにいるが、グレネードでフッ飛ばしつつ、M16A2を引き金引きっぱなしブッパで敵を殺していく。戦線にすぐ穴が開くので、そこにねじ込むように突撃していく。

 グレネードが炸裂するたびに、モンスターが纏めて吹っ飛び、M855弾が雨のように降注ぐと、モンスターをズタズタに引き千切っていく。


 広場を抜けて、入口をグレネードで爆破して、城の中に入ると正面ロビー様な場所に出た。当然、ここにも敵がウジャウジャいる。

 俺のグレネードとカミラの魔法で敵を吹っ飛ばしていく。そこから漏れた敵を、バルバラさん、ドロテア、エウフェミアが倒していく。

 俺は主にこちらに掛かってくる近接攻撃系の敵を、カミラは魔法を使う遠距離攻撃系の敵を優先的に狙うよう分担している。しかし、魔法には詠唱時間があるため、そのフォローも俺がしている。俺は詠唱時間も無く連射できるからな。

 遠間から飛んでくる弓矢はエウフェミアの精霊魔法ですべて防がれていた。

 ロビーの敵も戦線をすぐに崩し、その隙をついてこちらの兵士達が雪崩れ込んでいく。


 ロビーを真っ直ぐに進むと、中庭に出た。

 目に付く端からグレネードをぶち込んでいく。次々に起こる爆発。土を抉り、城の壁を吹っ飛ばし、敵が宙を飛んでいく。

 さらに狙いも良くつけずにぶっ放すM16A2。こちらに攻撃しようとする暇も無く敵が倒れていく。


 中庭を通り抜け、奥の建物に入る。この建物は3階建てのはずだ。

 一階にはこれまで同様、大量の敵が詰めていた。これを蹴散らし、二階に上がると、敵の数は目に見えて少なくなった。

 二階を通り抜けて、更に三階に上がる。

 三階にいたのは、少数だが選りすぐられた上位のモンスターたちだった。

 これまでの敵よりも手ごわかったため、時間が掛かってしまったが、これまでの冒険でもこれぐらいのモンスターと戦ったことはある。

 俺達は冒険で培ってきた役割分担で、危なげなく少数精鋭部隊を退ける。

 そして、三階の一番奥の部屋に到達する。ここがボス部屋だ。

 俺は部屋の扉を開け、中に雪崩れ込んだ。


 部屋は広く、領主の執務室と応接室を合わせたような形になっていた。部屋の奥に大きく立派な机が置かれており、そこで領主が執務を行うのだろう。

 今、その机には、煌びやかで厳かな、まるで最高位の神官が着る様な服を身につけた骸骨が座っていた。

 魔力を感知できない俺でも、その骸骨が禍々しい雰囲気を纏っていることがわかる。


「リッチ……」

 カミラが戦慄したように呟いた。

 俺でも知っているアンデッド系の中でも最強ランクのモンスター。とてつもない力を持った魔道師か神官が不死の秘法を用いて自らアンデッドへと堕ちた者、それがリッチだ。

 リッチは立ち上がると、宙に浮かび上がり、そのまま部屋の中央へ浮遊した。

 宙に浮かぶ体の下の床に魔法陣が浮かび上がる。

 うめき声のような、暗闇から聞こえる怨嗟の声のようなくぐもった声がリッチから発せられた。


 魔法を使うきか。

 俺はすかさずM16A2を向け、銃弾を撃ち込む。

 しかしというか、案の定というか、魔力による障壁に阻まれ、リッチの体に届かない。

 そこですぐにホルスターから武器を切り替える。

 取り出したのは、エイリアン・ショットガン。

 80年代のB級SFに登場しそうなフォルムの銃だ。『クリムゾン・ロウ』のDLCの一つで、ロイヤルポートにエイリアンが侵攻してくる拡張パックがある。そこで、エイリアンから手に入れることが出来る武器の一つが、これだ。


 俺は魔法を詠唱しているリッチに向け、エイリアン・ショットガンを発砲した。ビショアンという微妙な発砲音と共に、眩い拡散粒子が発射され、魔力障壁を叩く。

 すると、ピシリという音がし、魔力障壁に大きく罅が入った。

 この世界では、何故かエイリアン・ショットガンの拡散粒子は、魔法属性扱いなのだ。

 しかし、流石リッチ。強力なエイリアン・ショットガンでも一発じゃ、まだ届かないか。物理耐性だけでなく、魔法耐性も高いと見える。

 さらに2発打ち込むと魔法障壁が割れた。

 その直後、リッチの魔法が完成し、魔法陣が輝きを増した後、波紋が広がるように拡散していく。


 しかし、何も起こらない。

 俺達は怪訝な表情でお互いに見合った。魔法に最も詳しいカミラも首を傾げている。

 他のメンバーの様子も伺ったが、特に変わった様子はない。

 何だったんだ? そう疑問に思った瞬間、城内のいたるところからモンスターの唸り声と兵士達の悲鳴が上がりだした。

 ここからでは、声は聞こえるが、何が起こったのかわからない。

 とりあえず、リッチに集中することにした。


 エイリアン・ショットガンを打ち込む。しかし、魔法障壁を張りなおされてしまい、リッチには届かなかった。さらに打ち込み、魔法障壁を破壊する。

 良し、これで攻撃が届くぞ!

 そう思った瞬間、室内に先ほど倒したモンスター達が雪崩れ込んできた。

 完全に不意を突かれ、背後を取られている。

 倒したはずなのに!


「グルウウアアア!!」

 モンスターが唸り声を上げながら、一番後列のカミラに襲い掛かる。

「キャ……」

 カミラが立ちすくむ。

「危ないナ!」

 一番早く反応して動けたドロテアがカミラを庇った。倒れこむようにして、モンスターの攻撃を避ける。しかし、床に倒れてしまってすぐに動けない。

「バルバラさんはリッチを!」

 カミラたちを襲ったモンスターにエイリアン・ショットガンを発砲する。モンスターはよろけるが、攻撃が聞いている様子がない。なんて耐久性だ……。

 いや、そうじゃない。あれはアンデッドだ。ゾンビになってしまったんだ。だから、攻撃されても怯まないんだ。


 室内に入ったモンスターゾンビどもにショットガンを叩き込むが、一向に倒れない。

 倒れた二人に、別のモンスターゾンビが襲い掛かる。

「クソ!」

 ショットガンを撃つが、頭が吹き飛んでも、モンスターゾンビは止まらなかった。モンスターゾンビの振り上げた腕が二人に叩きつけられるそのとき、

「閃光斬!」

 モンスターの腕が斬り飛ばされた。

 翔流の『聖剣・エアセリウス』が光の軌跡を描きながらモンスターゾンビ達を切り刻んでいく。

 聖属性の近接攻撃こそがモンスターゾンビ達の弱点のようだ


「た、助かったナ~」

「あ、ありがとぉ」

 二人は葛葉と美琥斗に助け起こされた。

「悪い。助かった」

「いや、問題ないよ。それより、城内で死んだ者達がこちらの兵士も含めて全部アンデッドになって甦ったんだ。今、混乱している」

「翔流はリッチを頼む。こいつとは相性が悪い。こっちはこの部屋にアンデッドが入らないように防ぐ」

「分かった」

 多少事務的ではあったが、久しぶりに翔流と言葉を交わした。


 体勢を入れ替え、翔流パーティーが部屋の中央でリッチを相手にし、こっちのパーティーが部屋の入口でゾンビ達を迎え撃つ。

「いくぞ!」

 背後から翔流の掛け声が聞こえてくる。

 こちらも改めて戦闘開始だ。廊下をワラワラとゾンビがこちらに向ってくる。エイリアン・ショットガンからM16A2に持ち替え、ゾンビの群れの真ん中にグレネードを放り込む。死なないのならば、体をバラバラにして動けなくすればいいだけだ。

 足がちぎれ、モゾモゾと這いよろうとするゾンビ達に焼夷手榴弾を放り投げる。轟炎が立ち昇り、たちまちゾンビ達を火葬にしていった。

 良し。こっちは何とかなりそうだな。


 そこからは、戦況は安定して、こちらの有利に進んだ。

 翔流パーティーは魔将リッチと危なげなく戦い。そして、ピンチになることなく、倒しきった。

 成長している。着実に全員がレベルアップしている。

 前は苦労した魔将を、今回は危なげなく倒している。聖属性の剣を持っていて、相性が良かったとはいえ、相手は魔将だ。強くなっているな。

 剣を一振りし、血払きをしたあと、剣を鞘に収める様子はかなり様になっている。翔流の姿に頼もしさが増したようだ。

 リッチが滅ぶと、ゾンビたちも糸が切れたように倒れて、動かなくなる。

 ともあれ、魔将が倒され、バルデムの奪還は成った。




「じゃあ、俺達は帰るわ」

 俺は一言挨拶して、勝利に湧き立つバルデムを後にすることにした。

「ああ、じゃあ」

 翔流も素っ気無い訳じゃないが、あっさりとした口調で応えた。

 そうして、俺達はバルデムの門を出た。

 一人を除いて。


 ドロテアが立ち止まる。

「どうした?」

「ナ~……」

 ドロテアが困ったような顔をしていた。

「さあ、帰ろうぜ」

「あ~……あたし、やっぱり勇者に付いて行くことにするナ」

 え?


「2回も助けてもらったしナ。それに、クロードは帰るためだけに戦ってるナ。カミラとエウフェミアはそれでもいいかもしれないけど。あたしはやっぱり報奨も名誉も必要だナ。勇者と共に魔王と戦う者としての地位と名誉は捨てがたいナ。同じ戦いに身を置くリスクを負うなら、より見返りがいいほうを選びたいのナ。クロードも元の世界に帰るためという自分だけの理由で戦ってるナ。なら、あたしだって自分の理由で戦ってもいいナ。こっちも魔王と戦った後の生活があるのナ。勇者と一緒に行くチャンスがあるなら、そっちを取りたいナ。上手くいけば王国の英雄様になれるのナ」

 ドロテアがそうまくし立てた。

 俺は……。

 呆然として、俺は何も言い返せなかった。

 ドロテアが踵を返して、街へ戻っていく。


「追いかけないのぉ?」

 カミラに言われるまで、色々と逡巡して、俺は動けなかった。

 ただ、確かにドロテアの言い分には一理ある。

「まあ、戦う理由は人それぞれだ。その理由がより叶う場所があるのなら、そこへ行くのもいいだろう」

 エウフェミアがやや苦い顔をして言う。俺を慰めると言うよりは、自分を納得させるために呟いたように思えた。

「余計なことはいわなくていいわぁ」

 カミラの顔も寂しげだ。


 ドロテアの姿はもう見えない。

 俺達は街に背を向け、苦く悲しい気持から逃げるようにバルデムを後にした。


エタったと思われたところからの更新・・・

完成してますので、これから毎日更新されます。

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