*エピローグ
(1501字)
あの日のダンスは、本当に夢のような時間だったわねぇ。
***
私は、ジョルジオ様の肖像画に語りかけました。
ジョルジオ様は在りし日の眼差しで微笑みかけてくれます。
あれから・・・いろいろあったわね。
娘と息子も生まれたし。
娘は学校で医学を学んだ後、ブランナー先生に師事し、ハミルトン領で医院を開いてくれたわね。
息子は、ジョルジオ様の後を継いで、ハミルトン領の領主として頑張っているわ。
娘には二人、息子には三人子どもができて、今では私、五人の孫をもつおばあちゃんよ。
ふふふっ。
末孫のソフィーに良いお相手ができれば、もう思い残すことはないわね。
ソフラン商会の方は、ロゼが引き継いでくれたし。
それにしても、人の縁とは不思議なものね。
まさか刺繍を教えて差し上げたサラ様の結婚相手が、私を婚約破棄したドイル・マーラー様の弟だったなんて。あの祝賀会で知った時は、本当に驚いたわ。
でもドイル様のお父様とお母様にもう一度お会いできてよかったわ。私の中であの婚約破棄は、すでに思い出になっていたけど、自他共にただの思い出にできたから。
それに、ドイル様の婿入りした家が珍しい布地を扱っているとお聞きできたし。
私も逞しくなったわね。その後ドイル様に連絡を取って、《ソフラン》に布地を卸してもらうように頼むなんて・・。おかげで、《ソフラン》を建てたときのエマール商会の借金が早く返せたわ。その上、私が《ソフラン》を買い取って独立する資金もできたのよね。
独立後は、《ソフラン・2号店》をハミルトン領に建てて、ソフラン商会を立ち上げたわ。
お客様がたくさん来てくださって、やりがいがあったわねぇ・・・。
でも結局、後を継ぐ子がいなかったから、ロゼに引き継いでもらったんだけど。
ロゼったら、自分のお店になったんだから、好きなように店名もロゴも変えていいって言ったのに、変えなかったのよね。
「”少女よ!未来を切り開け!”私はこのリボンのついたハサミが大好きなんです!」
嬉しいことを言ってくれるわ。
あら、スキップしているみたいな足音が近づいてくるわ。
***
「お祖母様、ただいま戻りました」
「おかえり、ソフィー。初デートはどうだったの?」
「それがね、可笑しいのよ。彼ったらね、待ち合わせ場所に一時間も前に来ていたのよ。私は30分前に着いたんだけど、彼はね、もし私が30分前に来るのなら、その30分前に自分がいなくては駄目だと思ったんですって」
「あらまあ!」
「カフェではね、彼はコーヒーとチーズケーキを頼んで、私は紅茶とアップルパイを頼んだの。チーズケーキも美味しいから食べてみてって、少し分けてくれたの。すごく美味しかったわ。私のアップルパイもお返しに分けたら、アップルパイも美味しいねって」
「良かったわね」
「それでね、その後二人で・・・・」
ソフィーのお相手は、とても良い人そうで安心しました。
なんだかホッとしたら眠気が・・・。
「でね、・・・?お祖母様?あら、寝っちゃったの?毛布をかけてあげましょう」
ありがとう、ソフィー。優しいわね。
「日差しが暖かいですから、眠くなられたのでしょう。気持ちよさそうに眠っていらっしゃいますね」
「そうね、睡眠の邪魔になったら悪いから、一旦部屋を出て、あとで様子を見に来ましょう」
「はい、かしこまりました」
あらあら、行ってしまったわ。
ごめんなさいね。お話の途中だったのに。
でも、ソフィーの幸せな顔を見ていたら、とても眠くなってしまったのよ。
日差しが髪に当たって暖かいわ。
懐かしいわね、この感じ・・・・・。
まるでジョルジオ様に頭を撫でてもらっているみたい。
次に目を開ける時はお会いできるのかしら。
愛しいあの方に───
≪了≫
最後までお読みいただき 本当にありがとうございました。
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