16/23
*風に散る
(314字)
ギュスター邸の人たちは、私の前では絶対に”ハワード”の名前を出しません。”オーヴェル”は領名として使いますが、それすらも気を遣ってくれているようです。
”ハワード・オーヴェル”がどうなったのか、私から聞くことはしませんでしたが、ジョルジオ様の言葉から察することはできました。
庭園を一緒に散歩していた時です。ジョルジオ様は立ち止まると、不意に言いました。
「ソフィアが二度と同じ目に合うことはない。もう何も心配する必要はない」
「・・・・はい」
よく晴れた日でした。
ジョルジオ様は屋敷内ではなく、敢えて庭園で話したようです。
私は無意識に空を見上げました。
ハワード様───本当はずっと怯えながら生きていたのですね。
風が吹き抜けていきました。




