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十年前、俺以外の英雄は全員死んだ。〜無能な生存者が、嘘をついてまで「英雄」を継がなければならなかった理由〜  作者: 蒼野湊


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第6話「英雄の、最初のチーム戦」

 次の依頼は、小さな街の衛兵長から来た。


 街の周囲に現れる魔物の調査だという。討伐まで依頼されているが、まず状況を確認してほしいとのことだった。報酬も悪くない。アルトは引き受けた。


「調査ですか、楽しそうです」とロウェンが言った。


「楽しいかどうかはわかりません」とアルトが言った。


「どちらでもいいです」とセラが言った。


 三人の意見が三種類あったが、方向性は一致していたので問題なかった。


 街の外を歩いた。衛兵長から聞いた情報では、魔物が現れるのは南の草原と西の森の二箇所。目撃されているのはどちらも中型の魔物で、パターンが違う。南は単独で現れ、西は複数で動く。


「南と西で種類が違うんですかね」とロウェンが言った。


「それか、同じ種類でも行動パターンが違う」とアルトが言った。「先に南を見ましょう」


 南の草原に向かった。魔物の痕跡を探すのはアルトとロウェンで、セラは少し離れた位置で周囲を警戒した。この分担は話し合ったわけではなく、自然にそうなった。


「セラさん、剣がうまいですよね」


 草を掻き分けながら、ロウェンが言った。


「普通です」


「いや、傭兵の目から見ると相当ですよ。動き方が違う。どこで習ったんですか」


「昔に」


「じゃあ軍の出身?」


「違います」


「私塾か何か?」


「そういう話をする必要がありますか」


「必要はないですが、仲間の実力は把握しておきたくて」


「仲間とは決めていません」


「同行者でも同じです」


 セラは何も言わなかった。ロウェンは「まあそのうち」と呟いて、草の中を見た。


 アルトは少し離れた場所で、足跡を見つけていた。大型の魔物の足跡だが、奇妙なことに足跡が途中で消えている。土が乾いているわけでも、岩盤があるわけでもない。草地の上で、そのまま痕跡が消えた。


「ロウェン」


「はい」


「この足跡、どう思いますか」


 ロウェンが近づいてきて、足跡を見た。少しの間黙った。


「途中で消えてます」


「そうです」


「浮いたんですか?」


「違うと思います。地面の硬さが変わっていないので、飛び跳ねたわけでもない。でも消えている」


 二人が考えていると、セラが近づいてきた。足跡を一瞥して、「踏み消した」と言った。


「え?」とロウェンが言った。


「自分の足跡を、後ろ向きに歩いて消した。こういう消え方をする」


 アルトはセラを見た。「どうやってわかるんですか」


「足跡の深さが少し違います。後から踏んだ分、わずかに深い。それと、この草の倒れ方は二方向から踏まれている」


 ロウェンが感心したような声を出した。アルトも同意した。


「知能がある」


「ある程度は。でも本当に問題なのはそこじゃないと思います」


 セラが立ち上がって、少し南を見た。


「この足跡をつけた魔物が誰かに教えられた、という可能性はありますか」


 アルトは黙った。


 魔物が自発的に足跡を消す知恵を持つことは、稀にある。しかし誰かに教えられた可能性、というのは──魔族の関与を意味する。


「確かめましょう」


 アルトは西の森へ向かう方向を示した。「西の複数の魔物の動きも見てから、判断します」


 三人が歩き出した。


 自然に、アルトが前、ロウェンが横、セラが後ろという形になった。


 前で状況判断、横で護衛、後ろで警戒。


 言葉は交わさなかったが、それぞれが役割を持って動いていた。


 アルトは前を向きながら、背後の二人の気配を感じた。


 一人より、ずっといいと思った。


 それと同時に、少し怖いとも思った。


 守るものが増えると、嘘の重さが増す。


「英雄様」


 ロウェンの声がした。


「なんですか」


「いい仲間ですよ、俺たち」


 アルトは少し考えてから「そうですね」と言った。


 セラは何も言わなかったが、歩く速度が少しだけ揃った気がした。


6話、ありがとうございます。


3人の動きが少し揃ってきましたが、この調査で見えてきたもの──

「魔族の関与」という可能性が浮上してきました。


7話からは、もう少し大きな話が動き始めます。

続きを楽しみにしていただけると幸いです。


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