表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
十年前、俺以外の英雄は全員死んだ。〜無能な生存者が、嘘をついてまで「英雄」を継がなければならなかった理由〜  作者: 蒼野湊


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/17

第11話「英雄の、小さな本音」

 夜になった。


 三人は宿に戻った。夕食を食べて、それぞれ部屋に上がった。


 アルトは眠れなかった。


 書類を広げて読んだ。オーデンが集めていた情報は、アルトの行動記録と、英雄の戦闘スタイルに関する分析だった。「英雄アルトの剣は左手主体」「戦闘スタイルが英雄の記録と一致しない」「正体確認のための接触が必要」と書かれていた。


 正体確認のための接触。


 それはつまり、ヴァルクがアルトを「本物かどうか」を直接確かめようとしているということだ。


 厄介なことになった。


 書類を閉じて、廊下に出た。


 外の空気を吸いに行こうと思ったら、ロウェンが宿の出入り口近くの段に座っていた。夜空を見ていた。


「眠れないんですか」とアルトが言った。


「英雄様こそ」


「まあ」


 アルトは隣に座った。夜風があった。星が出ていた。


 しばらく二人で黙って空を見た。


「怖くないんですか」とロウェンが言った。


「何が」


「ヴァルクとやらが動きを探ってきたこと。あと……オーデンのこと全般」


「怖いですよ」とアルトは言った。


 ロウェンが少し驚いた顔をした。英雄が怖いと言うとは思っていなかったのだろう。


「怖くないふりをするのも疲れますよ。たまには」


「そうですか」


「あなたは怖くないんですか、こういう仕事が」


「怖いですよ。でも怖いから、ちゃんと考えて動けるんだと思って」


 ロウェンが星を見ながら言った。


「傭兵やってた頃は、怖くないやつほど早く死ぬと思っていました。怖さを感じるやつの方が、生き残る。英雄様も、怖さを感じているなら──まあ、大丈夫じゃないですかね」


 アルトは返事をしなかった。


 ロウェンの言い方は雑で、論理的でもなかったが、なんとなく楽になる言葉だった。


「なんとかなる気がするんですよ、いつも」とアルトが言った。「根拠はないんですけど」


「それが英雄ってことじゃないですか」


「どうですかね」


「俺はそう思いますよ」


 ロウェンはそれだけ言って、あとは黙った。二人でしばらく空を見た。


 虫の声がしていた。星が動かなかった。


「ロウェンさん」


「はい」


「本当に俺の護衛がしたいんですか」


「まあ……した方が面白そうで」


「それだけですか」


「それだけです」


 それが全部じゃないと、アルトは少し思った。しかしそれ以上聞かなかった。


「そうですか」と言って、空を見た。


 しばらくして、宿の二階の窓が少し動く音がした。


 気づいたかどうかはわからないが、アルトは少しだけ顔を上げた。


 セラの部屋の窓だった。


 明かりが見えた。

11話、お読みいただきありがとうございました。


宿の主やロウェンとの静かな時間。しかし、その背後では「英雄の正体」を巡る国家的な策謀が動き出しています。

次話、アルデア大陸を揺るがす大規模な魔族の動向、そして世界の理に生じる「歪み」の予兆が現れます。


物語はさらに加速を続け、世界の深奥へと踏み込んでいきます。

引き続きよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ