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五十年前のJKに転生?しちゃった・・・  作者: 変形P
昭和四十二年度(高校二年生)
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八十八話 中間試験のごほうび(その四)

やがて夕飯の時間となり、俺と喜子はダイニング・キッチンに移った。


今日のメニューも和食のごちそうだった。アジのたたき、イカの煮物、さやいんげんのゴマ和え、かぶの漬け物などが並んでいた。もちろん誕生日でもクリスマスでもないので、ケーキはない。


「今夜も料亭みたいなメニューだわ」とほめると、


「ゴマ和えはできているから、もうゴマをすらなくていいわよ」と喜子の母親が照れて言った。


夕飯をおいしくいただいた後でお風呂に入るよう言われた。喜子の家はアパートだが、ガスでお湯を沸かす内風呂があった。


浴室前の脱衣籠に服を入れるよう喜子に言われる。そこで服を脱ぎ始めると、喜子も一緒に脱ぎ始めたので驚いた。


「い、一緒に入るの?」


「ええ、お風呂の使い方を教えてあげる」と頬を染めて当然のように言う喜子。


追い焚きなどしないから、教えてもらう必要はありません、とも言えず、喜子の前で裸になって浴室に入った。


普段銭湯に行ってるから、女の子どうしで裸を見せあっても恥ずかしくはないが、狭い浴室に二人で入るのはちょっと抵抗があった。自重しようと言ったから暴走はしないと思うが、喜子のことだからどうなるかわからない。


「さあ入って」と言って喜子が裸になった俺の背中を押した。


思わず「ひっ」と言ってしまう。


中に入ると木の椅子に座るよう言われ、喜子に背を向けて座ると、洗面器に汲んだお湯を背中からかけてくれた。


「あ、ありがと」照れながら礼を言って体を洗い始める。その後で喜子は自分の体にお湯をかけていた。


ひととおり体を洗うと、湯船につかるために立ち上がった。喜子に背を向けたままなのも気まずいので、思い切って喜子の方を向くと、喜子の目の動きから、俺の体を上から下まで眺め回すのが感じられた。


俺もお返しとばかり喜子の体を見るが、胸は女の子らしくふっくらとしていた。


「胸がなくて恥ずかしいから、あんまり見ないでよ」


「美知子さんはとってもかわいらしいわよ」と喜子が言い返したので、あわてて


「じゃあ、お先に入るわね」と言って湯船に片足を入れた。


お湯はちょうどいい温度だった。急いで肩までつかる。


「美知子さんの姿を脳裏に焼きつけておくわ」と喜子が言って木の椅子に座った。早く記憶から消してくれ。


「でも、やっぱり家にお風呂があるといいわね」と、体を洗っている喜子に言う。


「銭湯も広くていいんでしょうけど、ここは三階だから、一階に下りてまた上がるのがけっこう面倒なの。夏だったら、お風呂上がりにまた汗をかいちゃうわ」


喜子が体を洗い終わったので、入れ替わりに湯船から出た。喜子がシャンプーを使うよう言ってくれ、髪を洗うことにする。


体を洗う前に髪を洗う人も少なくないだろうが、湯船のお湯を汚さないために先に体を洗うけれど、喜子を待たせるわけにはいかないので、シャンプーは後にしたのである。・・・誰に言い訳してるんだ、俺は?


シャンプーとリンスが終わると、体を拭いて脱衣所に出た。そこで新しい下着とパジャマに着替える。


しばらくしてから喜子も風呂を出て、キッチンから冷えたコカコーラのビンとコップを持ってきた。


栓抜きで王冠をはずし、コップについでくれる喜子。それをごくりと飲むと、炭酸の刺激と冷感が俺ののどを心地よくうるおした。


「おいしい」コーラを飲むのは久しぶりだった。


「寝る前に飲むと眠れなくなるかもしれないけど」と喜子が言った。「美知子さんに添い寝できるから、眠れない方がいいわ」


「喜子さんったら」どこまで好きなんだよ、美知子のことを。


コーラを飲み終わると、二人で歯を磨いてから喜子の布団を敷いた。


「狭いけど、我慢してね」


「大丈夫よ」そう言って先に布団に入った。


天井の蛍光灯を消すが、豆電球をつけたままにして、喜子が続いて布団に入る。体が触れると、喜子が俺に聞いてきた。


「ねえ、手を握ってもいい?」


「いいわよ」


喜子の右手が俺の左手をそっと握る。


「今日は楽しかったわ」と喜子。


「私も・・・」


楽しかったけど、いろいろ考えることが多くて気疲れした。頼子と良子のことも気がかりだ。そう思いながら目をつむった。


とても静かだった。俺は喜子も眠りに落ちただろうと思って、うす目を開けて喜子の方を向くと、喜子が目を見開いて俺の方をガン見していた。


「よ、喜子さん」思わず声が出てしまった。


「あ、起こした?ごめんね、美知子さん。・・・なかなか寝つけないから、美知子さんの顔を眺めていたの」


「そうなの?・・・寝てると思ったら目を開けていたので、ちょっとびっくりした」


「気にしないで寝てね」


そう言われても、見つめられていると緊張する。しかしもう一度目をつむり、静かにしていたら、また睡魔が襲ってきた。


「美知子さん?」誰かの声が聞こえたが、もう目を開けられない。


「眠ったの?」また声が聞こえたが、返事をすることはできなかった。


闇の中に心地よく漂っているようだ。そのまま沈み込んでいく・・・。


その瞬間、唇に圧力を感じた。目を開けないまま今の状況を思い出す。


「美知子さん、起きちゃった?」喜子の声だ。


眠っている間にキスされたことに気づいたが、ここで目を開ければ喜子を怒らなくてはならなくなる。


寝ていて気づかなかったふりをしよう。そう思って息を殺していると、再び唇に圧迫感があった。


「・・・美知子さん?」囁き声が聞こえるが、もう一度気がつかないふりをする。


「一度寝たら、ちょっとのことじゃ起きないのかしら?・・・うふふふ」


そしてまた唇を奪われた。


さすがに眠っているふりもできなくなり、俺はゆっくり目を開くと、顔の前にいる喜子に囁いた。


「何回キスするの?」


「え?気づいてたの?・・・ごめんなさい、美知子さんの寝顔を見ていたら、我慢できなくなって」


「キスはしばらくやめようって約束したのに」怒ってはいないが、小言を言っておこう。


「ごめんなさい。・・・じゃあ、もうキスはしないから、抱きついていい?」


「うん」


そう答えると、寝たままの格好で喜子が俺の体に両腕を回した。喜子の頭は俺の左腕の上に乗る。


「うふふ、満足・・・」


しばらくすると、喜子が寝息をたてているのに気づいた。これで眠れると思った。


翌朝、左腕がしびれて目が覚めた。


喜子はいなくなっていた。既に起きて、キッチンの方に行ったのかもしれない。


俺は起き上がると、パジャマを脱いで着替えを始めた。着替えの最中に喜子が戻ってきた。


「あら、美知子さん、もう起きたの。・・・せっかく白雪姫を起こそうと思っていたのに」


白雪姫は王子のキスで長い眠りから覚める。・・・危ないところだった。でも今度は姫の方だったか。


しびれた左腕をぶらぶらさせながら、顔を洗いに行った。


喜子と一緒にダイニング・キッチンに行き、喜子の両親にあいさつをする。


既に食卓に朝食が並んでいた。白粥に焼いた鮭、海苔、漬け物、みそ汁などだ。


「朝から豪勢でおいしそうですね。ほんとうに旅館の朝ご飯みたい」


「どうぞ召し上がれ」喜子の母親に言われて喜んで食べる。


「藤野さんもクラスの委員長になられたんですね?」


「ええ、分不相応ですが、おかげで別のクラスになった喜子さんと生徒会の仕事でときどき会えるので、それだけは良かったです。こちらにもときどき遊びに来ますので、またよろしくお願いします」


朝食が終わって喜子の部屋に戻ると、俺は喜子にそろそろ帰ると告げた。


「ええっ、もう帰っちゃうの?」


「ええ、いつまでも長居するわけにはいかないし」


喜子は夕方までいたらと何度か懇願したが、昼食前には帰ると言い張ると、最後はぎゅっと抱きしめることを条件に折れてくれた。


喜子の部屋でしばらく抱き合ってから、帰り支度をした。喜子の両親に改めてお世話になったお礼を言って、喜子の家を出た。


喜子はアパートの入口まで出て、いつまでも手を振っていた。


昼食前に帰宅すると、母親に楽しかったことを報告した。その後、洗濯と昼食の準備を手伝い、昼食を終えてまったりと過ごしていると、訪問客があった。


「美知子、お友だちよ」母親に呼ばれて玄関に行ったら、斉藤さんが一番上の妹をつれて立っていた。


「あら、こんにちは、雛子さん。妹さんも」


「ちょっと遊びに来たけど、お邪魔だったら帰るわ」


「大丈夫よ、あがって」


「あら、かわいいお客さんね。お茶の間にどうぞ」と母親が言った。


「お邪魔します」「おじゃましまーす」


「妹さんの名前は?」


「雪子よ。今、幼稚園に通っているの。・・・委員長の家に遊びに来ようと思ったら、せめて雪子を連れて行けって母さんに言われて。ごめんね」


「いつも妹さんの世話で大変ね」


「ほんとうにうちの間取りとそっくりね」と斉藤さんが家の中を見回しながら言った。


そのとき、母親が雪子ちゃんのために麦こがしを作って持ってきた。煎った麦粉に砂糖を加え、お湯を入れて練ったものだ。香ばしくて甘いおやつだ。


「ありがとう」雪子ちゃんがおいしそうにほおばった。もちろん、俺と斉藤さんもお相伴をする。


「今日は一人なのね。・・・あ、雪子ちゃんを除いて」


「さすがに四人で突然押しかけるわけにもいかないでしょ」


「藤娘なんて名乗るから、いつも一緒にいるほど結束が強いのかと思っちゃった」


「あはは・・・、実際は出席番号順で近かったから仲良くなっただけよ。『藤娘』は後で考えてつけたの。でも、委員長に声をかけるきっかけにはなったわ」


母親は小さい雪子に夢中になっていた。


「美知子もこういう頃があったわね」と回想モードに入っていた。


しばらくおしゃべりをした後に、斉藤さんは妹をつれて帰ると言った。


「ごちそうさまでした、おばさん」母親にあいさつする斉藤さん。


「さようならー」とかわいい声で言う雪子ちゃん。


「また、妹さんをつれていらしてね」


始終ご機嫌な母親を見て、娘としては少し複雑な気分になった。


映画情報

 白雪姫(ディズニーの長編映画第一作、1950年9月26日日本公開)


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