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異失物管理番号:⬛︎⬛︎-⬛︎⬛︎⬛︎  作者: 市宮早記
二章 死者からの電話
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15

 異失物となった滝山のスマートフォンは、後日、正式に本部で破壊処理されることが決まった。滝山の母に説明し、同意を得ると、異失物管理記録――久瀬の補佐として宙も記録を手伝った――とともに、篠原に提出した。

「そっか。今回も異失物の記憶を見たんだね」

 執務室で久瀬から報告を聞き終え、管理記録に目を通した篠原は呟くように言った。

「これで俺も感応者ってことになるんですか?」

「そうだね。本部へ報告するには、もう少し経過観察が必要だけど、僕は間違いないだろうと思ってる」

 宙に頷いてみせると、篠原は書類を机に置き、にこりと笑った。

「ひとまず、初仕事お疲れ様。破壊処理の同意も得られてよかったよ。本部判断で強制処理に回すこともできるけど、なるべく遺恨は残したくないし、手続きも増えて大変だからね」

 柔らかそうな革張りのチェアに背を預け、篠原は机の前に立った宙と久瀬を見上げた。

「今回はバディとして初めての仕事だったわけだけど、どうだった? 三井くんは続けていけそう?」

 探るような目が、こちらを見る。宙は少し考えるように視線を落とした。

「……異管って、異失物っていう『物』を調べる仕事なんだと思ってました。でも、コタロウの首輪と滝山さんのスマートフォンを調べてみて、物っていうより人の想いとか……人生の深いところに触れる仕事なんだなって、思いました」

 ぽつぽつと、言葉を選びながらゆっくりと話す。

「最初は正直お金が一番の理由でしたけど、今はもっと知りたいって思ってます。異管の仕事のこと」

 顔を上げ、まっすぐに篠原を見つめ返す。篠原は「そっか」と少し目尻を下げて微笑み、隣の久瀬に視線を移した。

「久瀬くんは? 三井くんとバディを組んで初の仕事、どうだった?」

「無鉄砲なところがあって、ときどき言うことを聞かないので、手が掛かります」

 真顔のまま躊躇いなく久瀬が答える。勝手に滝山のスマホに触ったときのことを思うと、宙は何も言えず視線をそらすしかなかった。

「あはは。それを言ったら、久瀬くんもルールを破るし、僕の言うことをあんまり聞かないでしょ」

「必要な判断をしただけです」

「ほら、そういうところ」

 篠原は楽しそうに笑い、机の上で両手を組んだ。

「案外、いいバディになるかもしれないね。お互いに、お互いの無茶を見張っていれば」

 宙はちらりと横目で久瀬を見た。久瀬はあまり納得のいっていない顔をしている。

「そうだ。異管の寮への一時入寮の件だけど、許可が下りたよ」

「本当ですか?」

 これでようやく、朝の満員電車から解放されるのだ。

 宙は顔を輝かせた。

「許可が下りたのは、ひとまず三井くんの夏休み期間だけだから、荷物は必要なぶんだけ持っていって」

「そういえば、家賃とか光熱費ってどうなります?」

 学生寮の家賃を払いながら、警察寮の費用まで払うとなると、せっかくのアルバイト代が消えてしまう。おそるおそる尋ねると、篠原は机の上のファイルを開き、書類を捲りながら答えた。

「夏休み中は、研修に伴う一時宿泊扱いになるから、三井くんから家賃は取らないよ。学生寮の家賃もあるだろうし、二重で払わせるのはさすがにね」

「よかった……!」

「ただし、食費と個人的な消耗品は自分で出してね。光熱費は今回は課の負担で処理する」

「ありがとうございます。異管って、福利厚生めっちゃいいですね」

「誰に対してもここまでするわけじゃないよ。きみには期待してるからね」

 さらりと篠原が答える。その言葉に若干の圧を感じ、宙は口を閉ざした。篠原は何事もなかったように笑みを浮かべる。

「もし三井くんが、夏休みが終わった後も異管を続けることになって、大学の寮から本格的に引っ越すことになったら、そのときは規定どおり寮費と光熱費を負担してもらうことになる。久瀬くんと折半になる部分もあるから、そこは二人で相談してね」

「……夏休み中だけの話では? その後について、俺は同意していませんが」

 久瀬が露骨に顔をしかめる。篠原は意に介した様子もなく笑顔のままだ。

「許可は下りたよ」

「俺の許可ではなく、上の許可ですよね」

「はは。まあ、その辺は追々ってことで」

 はぐらかすように言って、ファイルから取り出した書類を宙に差し出す。

「はい、これ契約書。二人とも、喧嘩しないで仲良くね」



 ――かくして、宙は期間限定で久瀬の部屋へ居候することになった。

 篠原から話があった次の休日。荷物をパンパンに詰め込んだ七泊用のキャリーケースを引いた宙は、独身寮までやって来ると、久瀬の部屋の呼び鈴を押した。

「こんにちはー! 三井でーす」

 インターホンが繋がった音がして、カメラに向かって笑顔で手を振る。と、次の瞬間、ブツッと音がして通話が切れた。

「えっ、切れた!? 故障!? 久瀬さーん!」

 ガチャガチャとドアノブを動かし、ドアを叩いて久瀬を呼ぶ。しばらくして、中から足音が聞こえ、鍵の開く音がした。

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