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ヒロインがスパイ! ~~女神様にリサイクルスキル貰いました~~  作者: かのね
第一章 学園編という名のプロローグ
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第十一話 報告のエピローグ




 出来ればさっさと次の街に行ってから酒を飲みたい。

 大通りをするりと抜けて街の入り口が見えて来た時、後ろから肩をガッチリと捕まえられた。


「つ・か・ま・え・た」

「バーバラ!」


 後ろに振り向くと、私の帝国での唯一の友達がそこにいた。


「お久しぶりねカーラちゃん、取り合えず着替えましょうか」


 禿マッチョな彼に連れられて裏路地へと入る。

 それからバーバラに手渡されたのはフードとカツラだった。私はいそいそとそれを装着してフードを被る。


「いいの? 流石にまだ王国の目があると思うんだけど、バーバラは目立つから私を路地裏に連れ込んだなんて事がばれたら……」


 そこまで言いかけて一人の女性が角を曲がって此方に来た。

 姿を現した彼女はなんと懐かしの私の影武者さんであった。


「こういうことよん、彼女には貴女としてこの国を出て貰うわん。そしてカーラちゃんには今回の報告を私の上司にしてもらいたいの、報酬だってあるわよん」


 成る程、彼女一人此処から去るならば、情報収集と思わせることが出来るか。


「お久しぶりですカーラ様、私は直ぐに路地を抜けてこの街から去ります。既に商隊に紛れ込む手筈は出来ておりますのでご安心ください」

「お久しぶりです、よろしくお願いします」


 影武者さんは一つ頷き颯爽と大通りへと戻って行った。勿論先程まで目深に被っていたフードを脱いだまま。


「ささ、私達も行きましょう、お店の個室を取ってあるのよん」

「分かった、それにてもバーバラの上司って事はあの方だよね?」

「そうよん」

「私会った事無いけどいいの?」

「いいのよ、あっちが貴女に会いたいって言って来たんだもん、私これからマッサージに行こうと思ってたのに」

「……バーバラあの人の護衛じゃないの?」

「安心して、私の代わりも沢山いるわよん」


 本当にバーバラの上司がいるとしたら確かに護衛はそれなりに多いだろうさ。

 一つため息が出た。


「はいどーぞ、それにしても見事なメイクよね。本当に別人みたいよ?」


 手渡されたタオルを受け取って顔を拭く動作をしながら変装を解く。どうやら変わっていたのは私のメイクだと思ったらしい。この程度ならメイクでも通じるのでそう思われても不思議はない。


 貰ったタオルをポケットに突っ込み、バーバラの先導の元私は歩く。

 裏路地から出て辿り着いた店は、私が通って来た大通りにあるこの王都でも一二を争う名店だ。

 

 バーバラは正面から入るのではなく裏口から入るようにサインを送って来た。こういったお店にはいくつか裏口があるのは常識と言えば常識だろう。要人が出入りするのに表を使うと都合の悪い事もあるだろうから。


 他愛無い話をしながら最上階の一室に辿り着く。どこの屋敷の一室だと言いたいほどに豪華な部屋に居たのは四人。三人は物言わぬ護衛、そして一人座って優雅にご飯を食べているのがバーバラの上司である。


「待っていたよカーラ君、今回は素晴らしい手腕だったよ」

「恐縮です!」

「そう固くならないでくれ、君を此処に連れてきたのは私の我が儘のせいだからね」


 優しそうな顔をした男性が私に微笑む、しかし彼の立場を知っている私としては安易な行動を起こすわけにもいかない。


「取り合えず座ってくれ、それから君も何か食べるといい。今シェフにお勧めの物を持ってきてもらっているんだ。バーバラ君も座りなさい、君が座れば彼女だって座ってくれるだろう」

「仕方ないわね、じゃあ私もご同伴に預かろうかしら、こんなお高いお店なんて普通は来れないものねん」


 拒否など以ての外なので仕方なく男性と対面して座る。隣のバーバラはご飯が楽しみなのかいつもよりもうきうきしている。


「では改めて紹介しておくよ、私はプルウィット・オルヴァ・クウェンネル、帝国の第四皇子にあたるね」

「お初にお目にかかりますカーラ・ルクレンです」

「知っているよ、今回の功労者だからね」

「ありがとうございます」


 そう、彼は帝国の第四皇子。だけれども地位的に見たらもっと上に当たる。第一皇子は既に病気で亡くなっており、第二皇子が次期皇帝となる事はほぼ確定している。しかし第三皇子もそれを許さず食らいついているという。しかし現皇帝は第三皇子には目もくれていないという噂が多い、実際はどうなのか分からないが第二皇子に比べて明らかに仕事量が少ないらしい。


 そしてその第二皇子が最も信頼していると言う人物が目の前の第四皇子だ。第二皇子が即位した暁には彼が宰相になるのでは? と噂されたほどだ。しかし現実は彼の為の新たな立場を用意し、第二皇子を補佐する者になるらしい。皇帝にも宰相にも意見を進言出来る役職なのだとか。今のところ一代限りとはなるが、今後信頼できる人物がいた場合このような措置が取られる事になるらしい。


 故に次期皇帝にそこまでの信頼をされている彼は、皇子という肩書以上に重要な人物とされている。


「帝国に居たころの事は聞いているよ……そうだ君に残念なお知らせがあるんだ。君の上司だった彼なんだけれどもね、無断でダンジョンに入って帰って来なかったんだよ。どうも君が一人でレッドオーガを斃したと聞いて自分も出来ると思ってしまったようだね、そもそも一人で倒せるようなモノでもないのだけれど、君の実力をなまじ知っていたからこそ暴挙に出てしまったようだね」


 ……って事は本来あの試験って異常だったって事? 普通に出来るはずだとか言っておきながら?


「まぁねぇ、貴女の試験内容を知っていたら流石に殴り込んで止めさたけど、手遅れになってしまっていたしねん」

「元々この国に送る予定だった人物がいてね、その人物に絆された君の上司が君を亡き者にしてその人物を予定通り送るように差し向けたかったというのが事の顛末だよ」

「……その人物とやらは今どこにいるのですか?」

「安心していいよ、彼女は鉱山に送られた。カーラ君のような有用な人物を私欲のために殺そうとしたのだからそれなりの罰は必要になるさ」


 それならいいか。いきなり目の前に現れて難癖付けられて襲ってこられても面倒だと思ったけれども、その心配はなさそうね。


「おっと料理が来たようだね、軽く食べながらでいいから今回の事を教えてくれるかな?」


 目の前に置かれた料理たちを少しだけ食べながら言われた通り話始めた。

 私がここにきて光魔法を使った事。そしてライトが釣れたこと。ライトに気に入られて第三王子に行きつき彼がルーファ寄りだと知った事。


「その件に関しても君のお手柄だったね、彼を押さえられたことで我々の目的もある程度達成されたも同然だったから」


 それを聞いて、それじゃああんな無茶な命令状送って来なければいいのにと思ったが顔に出さずに続けた。


 剣術の授業でゲイルとヒースに会った事。ヒースの祝辞の時に自分だけ他の女性と違って目を付けられていたこと。そのまま自分にちょっかいを出し続けて婚約者に怒鳴りこまれたこと。それから懐柔を重ねているさなかゼラに呼び出されて今回の計画を思い浮かんだこと。

 ゼラは役目よりも色欲に溺れていたので気兼ねなくゼラを使い実行。結果あの場で王子は取り乱し王は止められなかった。命令通りの波乱を演出した。


「本当によくやってくれたね、かなり運に味方されていたこともあって私と今回の協力者共に目標に一歩近づいたよ」


 協力者? 一瞬の怪訝な表情を読み取られておかしそうに笑うプルウィット様。私が口を開こうとした瞬間、此方に近づく複数の気配を感じた。先ほどは料理を持って来た料理長だったが、今回の気配は先ほどとは違うような気がした。


 そしてノックが為された。


「入っていいよ……彼女が今回の共犯者だよ」


 振り返ったそこには、綺麗な女の子がいた。銀髪を揺らしながら少し不服そうにプルウィット様を見る巫女様。


「共犯者だなんて酷いですね、利害の一致で協力者と言って頂きたいです」

「悪かったね」

「カーラさん先ほどぶりです」


 ずっと驚いてもいられないので立ち上がり礼をする。


「あぁそんなに気にしないでいいのです、ただ私が貴女に御礼を言いたかっただけなのです」

「御礼ですか?」

「えぇ、教国も一枚岩ではありません、私のようにこの国を邪魔だと思う者たちがいます。そして今回カーラさんのお陰でこの国を潰す事が出来ました、本当に感謝しているのです」


 にっこりとほほ笑まれた笑みは、今迄の美しい笑みよりも少し幼く見えた。演技かも知れないが、素であるとしたらこれが彼女の本音なのだろう。


「帝国の国教とは違うけれども、彼らは人類にとって必要な存在だと私は考えているんだ。誰だって自分と違う者は怖い物さ、私達がいくら彼らも同じ人間だと言ったところで根本は変わらない。そんな臆病な彼らにとって教国とはまさに救いなんだ、そんな彼らを非難することは誰にだってできない事だと思っているよ」

「ですが今の教国は本来の在り方を忘れ、差別と権力に溺れた者たちの巣窟です。私はその膿を出し切りたいのです。そして本来の教義に基づき、教国に来るしか無かった者たちの安寧の場所として機能させなければならないのです。私の権限にも限りがあるのです。教皇を斬る事はまだできません……しかしその温床となっているこの国を潰すことで私達の目標にもまた一歩近づいてゆくのです」


 成る程、ずいぶんと巫女様が都合のいい事を言ってくれたのはこういう訳だったのね。

 それにしても、少しばかり考えさせられる内容だ。実際エルフや一部の獣人等は人とかかわる気は無いと獣人の国がある更に奥、かの国が保護している大森林の中で過ごしている。

 人間だって彼らと同じく、他種族とあわない人や恐怖してしまう事もある、確かにそうだ。そんな者たちの救いとなる場があれば、細々と他種族と会わずに生きていければ幸せなのかもしれない。この二人はそれを作ろうとしている。


 ……でもまぁ私にはスケールが大きすぎて納得はしてもぴんとは来ないけどね。


「でもカーラさん、あの薬は本当に危険な物です、出来るだけ使わないようにした方がいいです」

「お心遣いありがとうございます」

「では皇子様、また次の会合で会いましょう」

「そうだね、君も国への報告書で大変そうだから、また次の機会に会うとしようか」


 聖女様はぺこりと軽くお辞儀をして去っていった。


「この国は帝国にとっても教国にとっても邪魔だったのですね」

「そうだね、この国を必要としていたのは先ほど彼女が言ったような連中だ。金を奪い私服を肥やす。私は直ぐにこかの国を攻めるつもりだったのだけれども、彼女が出てきて教国のバランスが変わったんだ。だからこそ今は見に徹し周辺の邪魔者は出来るだけ排除している。今回カーラ君に頼んだこの国の事も、基はと言えば教国の為だよ」


 教国か。差別の元くらいにしか考えていなかったし、帝国でもそれくらいしか教わらなかったので考えていなかった。情報は大切だと知っていたけれどもそれを実行できていなかったという事ね、反省しなければ。


「この話は此処までにしておこう。カーラ君を呼んだのは褒美と今後に関しての事があるからでね」

「今後ですか?」

「本来ならお役御免になるはずだったのだけれども、君はとっても優秀だから離したくなくなってしまってね、良ければこれからも帝国に力を貸してほしい」


 嫌です! 面倒です! と言いたいところだけど、流石にこの場でそんな事は言えない。


「分かりました」

「有難いよ……一応二択を用意してあるんだ。このまま私の護衛、バーバラの部下になるかそれとも冒険者になるか」

「冒険者ですか?」

「実は去年から獣王の体調がすぐれないようでね、後継者争いが激しくなりつつあるんだ。個人的には第一王子に勝って欲しい所だけれども優勢は第二王子。カーラ君には冒険者として強くなって貰って両陣営が欲しいと思う人物になって欲しい」


 いきなり話が獣王に飛んだが、冒険者と権力争いに関係が?


「冒険者は護衛としても使えるし、彼らは最終的に決闘を行うと私は見ているんだ」

「決闘ですか?」

「各陣営が選出した数名が戦い勝った方が王となる。獣人は強い者に従う性質を持っている、そんな性質を持っている彼らならでは方法だね」

「……つまり有名になって第一王子のサポートをという事ですね、それならば何故有名に?」

「今回の君の手腕を考えれば第二王子に取り入って情報を流したり、選出された後にわざと負けたりするのでもいいんだ、それは好きに選んでいいよ。それに有名になっておけば両陣営の人間に邪険にされることもない、彼らは強さを尊ぶからね」


 成る程。冒険者になって強くなる事には私にも大きなメリットがる。

 強くなれば今後帝国を抜けた際にも追手の心配をしなくてもよくなる。更にギルドの上級職員になってしまえばいくら帝国と言えど取り返そうとはしないだろう。平ならまだしも上級役員に付けられれば交渉が難航することは目に見えている。


「……わかりました、冒険者になります」


 私の安全の為に。




一章はこれにて終了となります。二章からは学園を飛び出しますので、ファンタジー色が強くなります。

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