7.夜営
「この後、どこに行くの?」
「樹海教会だ」
オーロンはクランクを回して、跳開橋を下ろしていた。樹海の道は渓谷に分断されてしまい、橋を降ろさなければ通れない。
「硬いクランクだな。……おい、しっかり見張ってろよ」
「大丈夫。気配はしないわ」
荷台の横木に身をもたせながら、エルテは欠伸した。
両端の門柱から鎖が伸びて、深い渓谷にかかる木造の橋がゆっくり閉じ、一つに合わさる。
「よし、これで通れる。いいか、敵の気配がしたら、お前がすっ飛んでいって一人で片づけろ。この馬車から離れた場所でだぞ」
「いやよ」エルテは首を振った。「そう言ってまた置いていく気でしょ?」
「置いていきゃあしねえよ」
「どうだか。わたしを見くびらないほうがいいわよ」
「見くびりゃしねえよ」
オーロンはエルテに手綱を持たせ、ピストルに弾をつめることにした。銃口から火薬と弾丸を流し、さく状でつめる。火皿にも火薬を入れて、ピストルをベルトに挟む。弾の入っていない予備のピストルにも装填し、これでオーロンの武器は揃った。燧発式の旧式ピストル二挺とラッパ銃一挺、そして荷台の外にくくりつけられたスコップである。
この情けない得物に加え、暗殺者の黒子どもに切り裂かれた半外套、貫通銃創の焦げ跡が痛ましい山高帽がさらに容貌の情けなさを増幅させる。
「上着を縫って、帽子を買って、もっとマシな銃とこん棒を手に入れねえと……」
オーロンは運転を代わり、独り言をつぶやいた。
ついに陽が落ちて、樹海は闇に閉ざされた。
この樹木の天井に月明かりなどあって無きが如し。視界が開けず、谷に嵌ると危ないので、ここで野宿することにした。
二頭の馬を何とか太い樹につなぎ、野草を好きにはませておく。
「本当は教会に屋根を借りるつもりだったんだけどな」
焚き火のそばで毛布を広げ、寝転ぶとオーロンは体を休めた。寝転んだまま、馬車から降ろした自分の荷物をまさぐり、サラミとジャガイモ、そして小さなフライパンを取り出した。
刻んだサラミとジャガイモをフライパンに放り込む。そのまま焚き火にかけるとフォークでつつきながら、サラミの脂がはじけ、ジャガイモが焼ける音を楽しむ。
「やっと手に入れた安らぎのときだ」
一方、エルテは自分の小さな雑嚢から干し肉と小さな乾パンをかじり始めた。
「また貧相な晩メシだな」
オーロンはサラミを味見しながらエルテの食事に対する率直な感想を述べた。
「これでいいの。食事なんて次の日に体を動かせれば十分なんだから」
「ふうん、そうかい」オーロンはジャガイモをつまんだ。「あちちっ!」
エルテは石のように堅い乾パンを水で何とか飲み下した。
二人は見張りを交代して、夜を明かした。




