第68話 スイッチ・ミー
ドラマ『スイッチ・ミー』
――私立星城学園と鎌倉、そして部長鷹宮圭介との人生シャッフル!
舞台は神奈川県鎌倉。
海と山に囲まれ、観光客で賑わう古都。その高台に建つ名門校、私立星城学園。
春。
二年生に進級した高梨ひより、十六歳。
成績はそこそこ。運動は平均以下。将来の夢はまだ模索中。
本人いわく「どこにでもいる普通の女子高生」。
その“普通”が、ある日、木っ端みじんに砕け散る。
◇
一方、都内IT企業開発部の部長――
鷹宮圭介、三十歳。
冷静沈着。論理重視。
無駄を嫌い、感情論を嫌い、甘いものも嫌い(だが実はプリンが好き)。
社内では「氷の部長」と呼ばれる存在。
その男が、出張で鎌倉を訪れていた。
◇
放課後の星城学園。
「ひよりー! 小町通りでクレープ!」
親友の小坂美咲が腕を引く。
「行く行く!」
坂道を駆け下りるひより。
同じ頃、資料を確認しながら歩く鷹宮圭介。
石畳の角。
ドンッ。
正面衝突。
「すみませ――」
「前を見ろ」
その瞬間、視界が白く弾けた。
遠くで海鳴り。
鳥居の赤が滲む。
そして世界が、入れ替わった。
◇
目を開けると、会議室。
ノートPC。
重いスーツ。
低い声。
「部長、次の説明を」
え?
ひよりは自分の胸元を見る。
社員証。
鷹宮圭介。
「……は?」
声が低い。
手が大きい。
ひより、絶叫寸前。
一方、石畳に座り込む女子高生。
長い髪。
スカート。
軽い体。
鷹宮圭介は固まった。
「……なんだこれは」
声が高い。
周囲の観光客がざわつく。
人生、完全シャッフル。
◇
こうして始まった、女子高生と部長の入れ替わり生活。
ひより(中身:鷹宮)は星城学園へ。
教室。
「ひより、顔こわいよ?」
「問題ない。」
低圧的。
姿勢が良すぎる。
授業中、数学を完璧に解く。
先生が二度見。
体育で撃沈。
バスケで転倒。
「なぜボールが思った通りに動かん」
女子高生の身体能力をなめていた。
◇
一方、鷹宮(中身:ひより)は会社で大惨事。
部長席。
山積みの資料。
部下が緊張した顔で立つ。
「部長、例の案件ですが」
「えっと……なんとかなる!」
部下、凍る。
だが意外にも空気が柔らぐ。
笑顔で「ありがとう」と言う部長。
社員が戸惑いながらも微笑む。
なぜかチームの雰囲気が良くなる。
◇
夜、鎌倉の海岸。
二人は合流。
「戻らないな」
「戻らないですね……」
砂浜で検索。
『入れ替わり 戻る方法』
映画と漫画しか出てこない。
「非合理的だ」
「今の状況が一番非合理的です!」
言い合いながらも、少しずつ相手を理解する。
◇
ひより(鷹宮)は女子高生の世界を知る。
既読スルー問題。
グループ内の空気。
曖昧な関係性。
「なぜ直接言わない」
「それが難しいんです!」
初めて“曖昧さ”の価値を学ぶ。
一方、鷹宮は部長の責任を知る。
部下の生活。
会社の数字。
重圧。
帰り道、ネクタイを緩めて呟く。
「部長って、重い……」
◇
ある日、星城学園で小さなトラブル。
陰口。
グループ分裂。
ひより(鷹宮)は立ち上がる。
「話し合え。逃げるな。」
教室が静まる。
普段ふわっとしたひよりの迫力に皆が驚く。
問題は意外とあっさり解決。
◇
会社では大規模プロジェクト炎上。
鷹宮は会議室で深呼吸。
「完璧じゃなくても、みんなでやれば何とかなる!」
沈黙。
そして部下が言う。
「……部長、今日なんか優しいですね」
チームが団結。
不思議と士気が上がる。
◇
一ヶ月。
二人は変わった。
ひよりは少し強くなり。
鷹宮は少し柔らかくなった。
そして再び、あの石畳。
夕暮れの鎌倉。
「再現実験だ」
「怖いですけど!」
コツン。
光。
波音。
世界が回る。
目を開ける。
小さな手。
軽い体。
ひよりは自分に戻っていた。
目の前にはスーツ姿の鷹宮圭介。
「戻ったな」
「戻りました!」
二人、同時にため息。
◇
その後。
星城学園では、ひよりが少し頼られる存在に。
《ブルーリンク》では、部長鷹宮圭介が少しだけ笑うようになる。
会議で「ありがとう」と言う部長に社員騒然。
女子高生ひよりは、以前よりまっすぐ人と向き合えるようになる。
古都鎌倉の海は今日も静か。
石畳の角を通るたび、二人は少しだけ足を止める。
人生は時々、強制シャッフル。
でも、誰かの立場を知ることは、きっと無駄じゃない。
女子高生と部長。
交わらないはずの世界。
けれど一度だけ重なった時間が、二人を変えた。
これが――
ドラマ『スイッチ・ミー』。
笑って、ぶつかって、成長する。
人生は、予告なしでスイッチする。




