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ビキニアーマーしか作らない変態師匠が私にだけセクハラをしない  作者: 崖淵


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第6話 視線の行方

ある日、私は自分に対する視線を感じていた。

それに気付いて辺りを見回すが、誰も見ている様子がない。


気のせいかと思い、ディスプレイされているビキニアーマーをチェックしながら、掃除をしていると、まただ。

やっぱり誰かに見られている。

気付いていない振りをして、慎重にその視線元の方角を探る。


こっちか?


さっと首を振ってその方向を見てみると、そこには外から店内が見える窓ガラスがあり、そしてその窓ガラスの向こう側でさっと隠れた人影が一瞬見えた。


ん?

視線の主は店外か。


私はそーっと店の外に出て、その窓ガラスのあたりに近寄るとそこにいたのは……


「……何してるんですか?」


先日問題を起こしたシェスター侯爵家の令嬢その人だった。




「黙ってても何も分からないので、何か喋ってくださいよ」


私は逃げようとする侯爵令嬢を捕まえると、案外大人しくなったので店内の商談ルームに連れて行った。そして1対1で面談をしているのだが、さっきからずっとだんまりだ。


――コトリ


彼女の前にもハーブティーを置く。


「そういえば今日は取り巻きの方々、いないんですね?」


カップのハーブティーに口を付けながら、彼女の方をちらっと見る。

すると彼女はうつむいたまま、真っ赤な髪をびくっと震わせた。

そしてこちらをうかがうように視線をよこし、かすかに口を開く。


「うっ……そうなの」


やれやれ、やっと喋ってくれたか。


「まずはお名前うかがってもいいかしら?」


「……ヘンリエッタ」


「シェスター家のヘンリエッタ侯爵令嬢ね。今日はどのようなご用件でしょうか」


「……もう侯爵令嬢じゃないわ」


「えっ?」


「ううん、正確にはまだ侯爵令嬢だけど、それもあと1週間だけね」


目の前のヘンリエッタ嬢は自嘲気味にそう呟いた。

なるほど、今日は取り巻きがいないのはそういうことか。


「何があったのか聞いてもいいです?」


「先日、このお店で騒ぎを起こしたでしょう。その後、女王陛下よりお父様がいたくご叱責をいただいたようで、私は、私は……」


ヘンリエッタ嬢はそこで言葉が止まってしまったが、大体の想像はつく。

先日女王陛下が来店されたときに、念のため告げ口しておいたからなぁ。

「まぁ大丈夫でしょうけど、一応釘を刺しておいてあげるわ」

って言ってたから、多分思いっきりぶっとい釘がシェスター侯爵家に刺さったんだろうなぁ。

で、女王陛下に目を付けられた当主である父に、「お前なんかいらん出ていけ!」みたいな展開か。まぁ自業自得というかなんというか。


「で、逆恨みで当店においでになったと?」


「ち、違います!まずは謝罪をさせて下さい。

この度は、本当に申し訳ないことをいたしました。深く反省しております」


と深く頭を下げている。

さぞやプライドが高いであろう侯爵令嬢にしては、よく頑張っていると思う。


「反省だけならサルでもできる」


「くっ」


でも私はそれを軽く突っぱねた。

この前の去り際に私を睨みながら捨て台詞を吐いたからその恨み……ではない。

ここで甘い対応をするのはうちの店にとってもよくないからだ。


彼女たちは、あの女王陛下の鉄券に剣を向けたのだ。剣を向けたの自体は取り巻きかもしれないけど、あの場の責任者は今目の前にいるヘンリエッタ嬢だ。

あの行為を安易に許すことは、鉄券を下賜してくださった女王陛下を私たちが軽んじることになる。


「どうしたら許していただけるのでしょうか」


私の塩対応に屈辱に打ち震えながら、ヘンリエッタ嬢は気丈にもそう言った。


「ヘンリエッタ様は、まもなく侯爵令嬢ではなくなるのでしょう?それが罪に対する罰ならば、それをもって当店としても謝罪を受け入れられると思います」


ヘンリエッタ嬢はうちに許してもらって、侯爵家からの追放を逃れたい。

当店としてはヘンリエッタが侯爵令嬢でなくなることで、謝罪を受け入れられる。

うん、あなた詰んでるね。


「そんな、そこをなんとか!」


「当店があなたの謝罪を受け入れることが、侯爵家からの追放から逃れる条件というわけですか?」


「はい。それとお父様からは『シェスター家に迷惑をかける者など我が家には必要ない。残りたいならば、少なくとも役に立つことを証明してみせよ!』と」


「それでその証明に必要な期間として与えられたのが1週間?」


ヘンリエッタ嬢はこくんとうなずいた。

自分の娘に対する態度としては少し厳し過ぎる気がするけど、代々続く侯爵家の当主としてみれば理解できないわけでもない。


「ちなみに侯爵家から追放になったら?」


「今通っている学園も除籍になるから、そこからは働くしかないわ。読み書き計算ができることを生かして商家に雇ってもらうか、あとは冒険者にでもなるかくらいしか……」


「商家にとってみれば、侯爵家を追放された人間を雇うのはリスクですよね」


それにプライドの高い貴族令嬢が、頭を下げるのが基本の客商売で役に立つとも思えない。


「そうですよね。そうなると後は……」


冒険者かぁ。

こんな見目麗しい貴族令嬢が冒険者になったとする。

海千山千の他の冒険者、特に男どもの食い物になる未来しか見えないよなぁ。


しかし侯爵家からの追放を回避するには、当店が謝罪を受け入れることがまず第一。でもよっぽどのこと――たとえば侯爵家の当主が直接頭を下げに来るとか――ありえないレベルのことが起きないと、当店がこのままヘンリエッタ嬢の謝罪を受け入れることはないだろう。

それにたとえうちが謝罪を受け入れたにしても、一週間で役に立つことを証明するのって、割と無理ゲーじゃない?



ヘンリエッタ。やっぱりあなた詰んでるよ。

私は目の前のまだかろうじて侯爵令嬢である美少女を見て、そう思った。

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