第5話 付与魔術の天才
私は店員でもあるが、マスターの助手でもあり、また一番弟子でもあるので、こうして作業場にて付与魔術を行うこともある。
今はマスターの付与魔術がかかった作品を見て、その発動効果やら魔力回路の神業的な記述方法を解析しているところだ。
その回路を1つでも見ればわかる、やはりマスターは天才だ。
「くっそー、全然わかんない。これがどうなれば、あんな効果が出るのか。
ここもだ、こんな2つの魔力回路がパズルみたいに組み合わさっているのに、ラインは奇跡的に交わってない。なんでこんな回路が描けるの?」
付与魔術の基礎的なことは教えてもらっているし、私の成果物を見てもらって、その良いところ悪いところの判断やアドバイスをもらうことはある。
だけどマスターの方針として何から何まで教えてくれるということはなく、こうして自らの目で学ばなければならないことはたくさんある。
まぁそれでも世界一、いや歴史上最高の付与魔術師と言われるマスターから直に教えを受けることができ、その作品を自由に見られるというのは、とても幸せだということは分かっているのだが。
「うひょひょひょひょー!
こいつはやべぇ。想像するだけでヨダレが出ちまうぜ」
とはいえ隣でこんなことを言いながら、魔力回路を描いているマスターを見ていると、とても尊敬できない。
恐らく今魔力回路を描いている際どいビキニを、美女が着ているのを想像しているのだろう。そんなマスターに対しては、どうしてもジト目になってしまう。
しかしマスターはそんな私の視線にまったく気付くことはなかった。そしてマスターの頭の中の戦闘シーンは次の場面に移ったのだろう。またとんでもないことを言い出した。
「よし、ここでキャストオフだ!魔物たちよ、上手くここを攻撃してくれよ!?」
はぁ、これか。
実は最強とも言えるビキニアーマーだが、女性にとって致命的な弱点が1つある。
ビキニアーマーの上半分、バスト部分の水着には一部防御機能が働いていない箇所があるらしく、そこをピンポイントで攻撃されると
――ハラリ
と脱げ落ちてしまうらしい。
マスターはそれはどうしても構造的に不可避な部分だと言っているが、絶対にわざとだと思う。なぜなら、バストトップ部分の水着が破れたり脱げてしまったりしても、ビキニアーマー全体の防御力はまったく損なわれないからだ。
何だよそれ!そんなわけないだろ、いい加減にしろ!って言ったら、
「何言ってるんだ。キャストオフ(着脱)機能がないとか、興ざめ過ぎるだろ」
とわけのわからんことを、そのまま押し切られててしまった。
トップ部分を着用中の方が魔力回路の維持効率がいいらしいので、トップレスでも問題はないが普段は身に着けていた方がお得だよということらしい。
「通常時は隠されていて、ここだ!という時に見えてしまう方が興奮するからね」ってそんな裸族や露出狂の存在の心配せんでも、普段から身に着けるに決まってるだろうが!!!
そして破れて半ば脱げた状態でも、手で上から押さえていれば魔力回路の効率は上がっているらしい。
「手で落ちそうな水着を懸命に押さえている絵面っていいだろ?」
だって。もう頭痛い……。
どちらにしろ、これら最高性能なビキニアーマーはマスターにしか作れないのだから、この装備が必要な人はその不要なキャストオフ機能があっても、あまんじて着る他ないのだが。
ちなみに下半身部分にはそのキャストオフ機能とやらはないらしい。
「あん?フラウはバカか?下半身の水着が落ちたら色々とヤバ過ぎるだろ」
なんだよ、やっぱりできるんじゃないか。
不可避な構造的欠陥とかウソだと思ったよ!
「あのなぁ。俺にだって、その辺の最低限の自制心くらいはあるぞ」
……既にその最低限のラインを明らかに下回っていると思うのだが。
もうヤダ、この師匠。




