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【リアル生成AIスキル】を得たので、あらゆる物を学習&出力しまくる件/ リアル・ジェネレーター  作者: AoisoraKumori
第一章(1/3) 『起動』

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第7話 無力な出力者

 そこには、一人の少女がいた。


 踊るように、ただひたすらに校内に湧いた怪物たちを片っ端から切断していく。 

 瞬く間にモンスターの死体の数が、あたりに転がっている人間の死体の数を上回っていった。

 少女は獲物がいなくなると、次の場所へ駆け出す。


「……ん?

 これは───?」


 少女───

 A級探索者・神崎零華かんざきれいかは、ダンジョンが出現したとの報告を受け、只野学園高校へ応援に駆けつけたところだった。


 すでにその手に持つ刀は、怪物の血で染まり尽くし、本来ならば白く輝く光を放つ刀身が、今は鈍く赤黒い光を放っている。

 零華は刃をぬぐいながら学園内を駆けた。


(チッ──

 他に人間がうじゃうじゃいる場所ではやりづらいわね。

 ダンジョンで片っ端から殺すのとは訳が違う───)


 しばらく進むと、倒れているゴブリンリーダーの死体を見つけ彼女は足を止める。

 原因は、その死体ではなくその死体を作り上げたであろう、ある”道具”だった。


「──なんだこの奇妙な形をしたナイフは……

 これを使って倒したのか?こいつを。

 ───見るからに……

 一撃だ。」


 そばに落ちていた、非常に精巧な作りをしたナイフのようなものを神崎零華は手に取る。


「報告しないといけないわね……

 ”上”に。」


 神崎零華は虚げな表情を見せた後、そのナイフのようなものを懐にしまう。

 その後、再び顔をあげると、次の獲物を探しに駆けだすのだった。

 あたりから悲鳴が止むことはない。

 惨劇は続いていた。


 ◇


 天野悠人が意識を取り戻したのは、消毒液の匂いが鼻をつく、白い天井の病院の一室だった。


 頭には軽い包帯が巻かれ、左腕には点滴の針が繋がれている。

 栄養剤がゆっくりと体内に流れ込むの感じていた。


「……生きてる、のか──?」


 声はひどく掠れて、ほとんど出せない。

 全身が鉛のように重く、指一本動かすのにも途方もない労力が必要だった。

 通常の疲労ではない。


 それは魂そのものが削れたような今までに経験したことのない種類の疲労感であった。

 今回の気だるさは、ポーションを初めて生成した時の比ではない。

 それこそ、寿命そのものが縮んだ気分だった。


「目が覚めたんですね。

 ……天野悠人くんであっていますか?」

「……!

 ど、どうも。」


 やってきた看護師から何が起きたか、一通り悠人は話を聞かされる。

 あれから意識を失った後、学校にさらなる緊急の増援───

 A級の探索者が駆けつけたそうだ。


 モンスターは一通り鎮圧され、ダンジョンゲートは閉じ、ひとまず事態は一旦落ち着いたといった感じであった。


 その後、同じ学校の生徒の多くが、この病院に現在入院していることも伝えられる。

 その中で早乙女茜について聞くと、彼女は集中治療室で治療を受けているということを告げられた。


 一命は取り留め、回復に向かっているとは聞かされたものの、悠人は、彼女がもう少しで死んでいたかもしれないという現実に深く傷つく。


 脳裏には、あの悪夢のような惨たらしい学校の惨状が蘇り始めていた。

 のどかな学校が一変し、あたりには人間の肉がそこらじゅうに落ち、血液を広げていた、あの地獄が。


 茜を前にしてもしばらく震えて、声すら出せない無力な自分が。

 異臭が、

 サイレンが、

 絶叫が、

 次々と蘇ってくる。


 そして、誠司のあの苦痛に歪んだ顔が。


 伝えられてはいないが、誠司は犠牲になった人間の一人なのだろう。

 生きていたら、病室に顔を出すはずだ。

 あの下痢のような色をした髪と共に……


(───待て。

 落ちこむのは後だ。

 考えるのはよそう。

 ──よすべきなんだ……

 ……確認すべきことがあるだろう。)



 悠人は逃げるように意識を切り替える。

 あの瞬間すべてを賭けて発動させたスキル、リアル生成AIの状態を確認することにした。


 もしかすると、スキルそのものが消滅してしまったのかもしれない。

 冷や汗を流しながらも自分の”内側”に呼びかけると、反応は確かにあった。


 悠人はとりあえず自分が再びスキルなしの人間に戻ってしまったというわけではない事に安堵する。

 しかし、スキルにアクセスしようとしても、重い靄の中のようなものに沈んでいて、応答が極端に鈍かった。


「ステータス!」

 と心の中で何回か呟いていると、ようやくまともにスキルが動き出す。


 《ユーザーの”意志”を検出。現在リソース状況を表示します。》


(よ、よし。さっさと表示してくれ。)


 《| コスト項目 | 残量 | 状態 | 備考 || :--- | :--- | :--- | :--- |

 | 精神コスト (MP) | 1% | 臨界状態 | スキル起動に必要な最小値を辛うじて保持。回復極めて遅延。 |

 | 知識コスト | 98% | 維持 | 短剣生成に使用したデータは固定化。新規ラーニングは不可。 |

 | 物理コスト (体力) | 5% | 重度疲労 | 生体維持に全力を消費中。外部からの回復手段に依存。 |》



 何を言っているのかいまだによくわからないことが多い。

 が、悠人に自信が無力な存在であることを突きつけるのには十分なものだった。

 あの短剣生成は、やはり自身の持つ本来は使用してはいけないリソースを使用した上に成り立っていたのだ。


「くそ……たった、一撃でこれか……」


 心は、冷たい虚無感に包まれる。

 たかが数日かもしれないが、それでも多くのことをラーニングしたつもりだ。


 しかし、どれだけ分厚い本をラーニングしたところで、それが自分の求める答えにつながるものになるかは分からない。


 少なくとも今回の一件では、ラーニングしてきた知識がほとんど役に立たなかった。

 このスキルは、極めて臨機応変さに欠けていることを実感する。


 ”リアル生成AI”と言うスキルを見て、初めはなんでも生成できるチートスキルかと思っていたが、実際はその真逆をいくような性能であった。


 悠人は、分析という名の現実の直視を終える。

 すると脳裏にはあのゴブリンリーダーの姿が──

 傷つく茜の姿が、再び浮かび上がってきていた。



(もし、ゴブリンリーダー以外に、何か一体でも別の強力なモンスターが───

 いや、あの場にいた弱そうなゴブリンでも、あの後自分たちを襲うという行動をとっていたら……?)

(……死んでいた。

 ……間違いなく死んでいた。)


「───はは……」


 他に誰もいない病室で、悠人は一人思わず声を漏らす。

 自分が死ぬのならまだいい。

 茜たちの方を追いかければ、茜たちが殺されていただろう。

 絶望的な”もしもの世界”を妄想し、勝手に震える。


 こうして生きているということは、あの後たまたま運がよく、悠人はモンスターに襲われず、誰かに救出されたということを意味していた。


 その結果に途方もない無力感を覚える。

 敗北したのだ。


 ただ、スキルのラーニング能力のせいだろうか。

 そう実感している間にも、頭の中では、冷静に現状を分析している自分が存在している。



 《・物理的制約:どんなに優れた設計図があっても、それを具現化するためには膨大なエネルギーが必要。自分の貧弱な体力とMPプールでは、高レベルの生成を連続して行うことは不可能だ。》

 《知識依存の危険性: 今回はゴブリンという事前の『データ』の多い、言わずと知れた敵だったが、もし未知の強敵に遭遇すれば、解析が間に合わ

 ず、文字通り何も生成できない。》


 《どうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうする》



 悠人は、窓の外の騒音から逃れるように目を閉じた。

 しかし、騒音は、窓の外からではなく、自分の心の内───

 スキルによるものだと気づく。

 ”騒音”は止まらない。


(スキル、停止しろ。

 一旦分析をやめるんだ。)


 悠人は、心の中の騒音を吹き飛ばすように、大きくため息をついた。

 その後、ベッドに体を倒す。

 窓を見ると、そこからは無限の青空が見えた。


 どこまでも広がるその空は、底知れない残酷な世界そのものを表しているかのようだった。

 底の知れない恐ろしい世界が自分の帰りを待っている。

 窓から目を背け、再び目を瞑った。


(通用するのだろうか。

 俺という存在は、この世界に。)


 本当に守りたかった茜は、まだ重症のまま集中治療室にいる。

 彼女は治癒魔法の才能を持っているが、まだ未熟だ。


 茜を助け、茜を、そして他の大切なものを守るには、このスキルの限界を突破しなければならない。

 強くなる必要があった。


「このままじゃ、ダメだ……」


 自身のスキルの本質を深く理解し、その制約から脱却するためのさらなる”ラーニング”が必要であることを悠人は悟り始める。

 疲弊し切った意識の中で、絶望の淵から、新たな決意の萌芽が芽生えつつあった。






「……それはそれとして、なんかムラムラしてきたぜ!」


 悠人は目を開け、体を唐突に起こす。

 先ほどまでの疲れが和らいできた気がした。

 その後、自分の股間をじっと見つめる。

 自分の股間は、体のように起き上がることはなかった。


(……そういえば、エロ本とか生成できるのだろうか。)


 《ユーザーの意志を検出。

 現在リソース状況を表示します。

 ユーザーの女性経験は著しく低く、生成は困難です。》


「……」


 悠人は黙って股間から目を離す。

 その後、深呼吸をしたのち、しばらく眠ることに決めた。


 疲弊が和らいだのは気のせいだったようだ。

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