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【リアル生成AIスキル】を得たので、あらゆる物を学習&出力しまくる件/ リアル・ジェネレーター  作者: AoisoraKumori
第一章(2/3) 『暴走』

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第66話 銃撃ー2

 悠人たちは包囲され、リリスを庇うようにしながら、ゴーレムの残骸へとゆっくり後ずさる。


 踏みしめた地面の感触が、やけに現実味を帯びて伝わってくる。

 湿った土の冷たさが靴底越しに伝わり、足首に微かに絡みつく草の感触まで鮮明に感じられた。

 背後に転がるゴーレムの破片は、砕けた石と魔力の残滓をまとい、不規則な影を落としている。

 木々の間から点々と差し込む光が破片の角を鋭く浮かび上がらせ、まるで小さな影の刃がそこに潜んでいるかのように見えた。


「!!

 ……鉢川隊長、こいつ、例の生成スキルの持ち主、天野悠人ですよ」


 告げ口のような声が、無遠慮に空気を切り裂く。

 木々の隙間にこだまするその音は、静寂の中で鋭く響き、悠人の耳に針を突き刺すようだった。

 その瞬間、視線が一斉に集まる。

 黒いゴーグルの奥で光が反射し、複数の視線が絡みつくように悠人を捉えた。


 肌に突き刺さるような注目を受け、心臓が強く脈打つ。

 自分の名前が標的として呼ばれた事実が、遅れて実感となって押し寄せた。

 胸の奥の血流まで巻き込むように動揺が広がっていく。


「何?」


 短い問いかけには、興味と警戒が混じっている。

 価値を測るような冷徹で無機質な響き。

 悠人はわずかに息を詰め、周囲の音へ意識を集中させた。


「……やっぱりネクロスの刺客か、お前ら」


 言葉は自然と口から零れた。

 確認であり、同時に諦めに近い納得でもある。

 これまで断片的に繋がっていた不安が、ここで一本の線になった。

 あの研究施設、”心”のデータ、異常な追跡、その全てが同じ意図に基づいていたことを胸の奥で理解する。


「──また返り討ちにしてやるぜ」


 悠人は誰にも聞こえないほどの声でそう呟くと、早速生成を開始し、敵を倒そうと試みた。


「!?

 ぁあ”っ”……」


(撃たれた……?

 撃たれたっ──)


「マスター!」


 痛みで思考がまとまらない。

 遠くでリリスの叫び声が聞こえた気がしたが、よく分からなかった。


「っ──」


 右腕に大きな衝撃が走る。

 頭の中が明滅するように揺れた。

 痛い、痛い、痛い、痛い。

 状況を把握しようとする理性は、その全てが痛みに塗り潰されていく。

 燃えるような熱さもあった。

 体内から溢れてはいけない何かが流れ出ている。

 熱いものが。

 まるで男に腹を思い切り蹴られたような衝撃だった。


「動くなクソガキ!!

 そこのガキのモンスターもだっ!

 これより先、少しでも動いたらお前を蜂の巣にする」


 黒いゴーグルと、周囲の人間よりも頑丈そうな装備を纏った男が、銃を構えながら悠人たちを恫喝する。

 銃口は寸分の迷いもなく向けられており、引き金にかかった指には、いつでも次の一発を撃てる余裕が見て取れた。


 その存在は静寂を切り裂くだけでなく、視界の全てを支配している。

 だが、その声色には殺害よりも制圧を優先する響きが混じっていた。

 悠人はその微妙な差異を理解し、頭の奥で戦況を計算する。

 ネクロスの刺客は、先の一件からあくまで自分の”捕獲”が目的であることを知っていた。

 殺意は即時のものではない。

 しかし、とにかく痛い。

 殺す気はなくとも、痛めつける気は満々なのが見て取れた。


 それでもスキルを起動し、いつでも“概念の剣”を生成できるよう、うずくまりながらも体勢を整える。

 体の震えが止まらない。

 得体の知れない人間たちに囲まれ、逃げ場を断たれているという事実が、じわじわと精神を侵食していた。

 痛みに恐怖と焦燥が加わり、吐き気と寒気が押し寄せてくる。


「天野!!」


 突如、ある方向から聞き覚えのある声が響く。

 振り向く暇はなかったが、声の主は明白だった。

 神崎零華が異変を察知して戻ってきたらしい。

 その声には緊張と怒り、焦燥が混じっていた。

 胸の奥が締めつけられる。

 心臓の鼓動が耳まで響いていた。

 戻るな、来るな。

 そう叫びたかったが、状況はすでに動き始めて止まらなかった。


 悠人は刺客たちの注意が零華へ逸れた隙を見逃さず、体の奥から意識を剥き出しにする。

 汗と血液で指先が滑る感覚、地面の微妙な傾き、木の根の存在。

 全てが戦況の情報として流れ込んでくる。

 即座に“概念の剣”を生成し、零華を守る準備を開始した。

 リリスと悠人は捕獲対象であるため、殺害される可能性は低い。

 だが、零華は違う。

 明確な戦力と見なされ、排除対象になる危険が高かった。

 先の一件で死にかけた零華の姿が鮮明に蘇ってくる。

 攻撃が加わる前に、即座に無力化しなければならない。


 闇のように黒い装束と、冷たい金属が視界の端で光を反射していた。

 目に見えるものも、全てが危険だ。

 思考は極限まで研ぎ澄まされ、戦う準備が体全体へ浸透していった。


 悠人の手から光が発せられ、目には見えない“概念の剣”の生成が始まる。

 頭の中で数式とイメージを重ね、必死に形を結んだ。


 だが、生成は遅い。


 林の中は異様な緊張感に満たされ、空気は重く、湿り気を帯びた土の匂いが鼻を刺す。

 悠人は両足を広げ、がっしりと構えをとった。

 体勢が悪いからなのだろうか。

 生成を中断し、もう一度一から“概念の剣”の生成を試みる。

 足元の落ち葉は湿っており、踏みしめるたびに軋んで音を立てていた。

 枝や小石が靴に当たる感触が、理性の外へ押し出されそうな恐怖と共鳴し、体を震わせる。

 全てが異常なまでに鮮明で、感覚が過剰に反応していることがわかった。


 その瞬間、無数の発砲音が林に響き渡る。

 乾いた炸裂音が木々の幹を叩き、その振動が足裏から腰まで伝わってきた。

 弾丸が樹皮に突き刺さる衝撃は木々を震わせ、破片が空中に舞い散る。

 音の方向と響き方だけで、零華と刺客たちの位置関係がわずかに把握できるほどである。


 零華は動じず、一歩も引かずに剣を振るっていた。

 表情は冷静を装っているが、呼吸は微かに乱れ、その動きから緊張が伝わってくる。

 踏み込む。

 斬る。

 衝撃を受け流す。

 回避する。

 一連の動作は無駄なく正確で、同時に極限の集中を要することがひしひしと伝わってきていた。


「──くそっ、しかしあの施設、本当にネクロスのものだったかよ。

 ”心”のデータなんか集めて何をする気だったんだ」


 短く呟かれた言葉が空気を震わせる。

 零華の剣が振り下ろされ、斬撃が木々の幹に深い傷を刻んでいた。

 葉が舞い、樹皮が削れ、枝が折れ、戦場の風景が刻々と変化していく。

 空気は剣と弾丸の軌道によって揺らぎ、土埃が舞い上がる。

 冷たい汗が背筋を伝った。


 刺客たちは無言で動き、その連携に無駄はない。

 殺意を帯び、零華の動きを封じるためだけに動いている。

 圧倒的な戦力差と精度が存在し、悠人は体が硬直するのを感じた。

 生成が一向に終わらず、傍観せざるを得ない無力さが胸を鋭く締め付ける。


「くそっ、さっきゴーレムを無理に生成したのと、勝手に脳内へアクセス、それらが重なったのが原因かっ。

 うまくデータが構築できないっ──

 早く……

 早く生成してくれっ」


 歯を食いしばる。

 手のひらに汗がにじみ、指先が震えた。

 思考を振り絞り、計算式とイメージを脳内で重ね合わせる。

 だが生成は遅く、形は安定しない。

 焦燥が思考を乱し、さらに制御を難しくしていた。

 発砲音、剣の軌道、飛び散る木片、風に揺れる枝葉──

 全てが解析すべき情報として脳内へ流れ込み、混乱と恐怖が交錯する。


 時間がない。

 悠人が招いた結果だ。

 リリスに感情を与え、制御できると思い込んだことが、今まさに現実として突きつけられている。

 足元の落ち葉、湿った土、砕けた枝、飛散する埃。

 それらが目に見えぬ圧迫となって体を覆っていた。


「マスター」


 背後からリリスの声が聞こえる。

 無機質なはずの声に、かすかな震えが混じっていた。

 悠人の神経はさらに尖り、心臓が跳ねる。

 振り返ることすら躊躇われた。

 だが、振り返らねばならない。


「どうしたリリス」


「解析結果を報告します。

 このままでは、神崎零華が重大な損傷を受ける確率は高いです」


 言葉は冷徹だが、その情報の重みが胸にずしりと食い込んだ。

 零華は、大量の攻撃に晒されている。

 そんなことは分かっている。

 悠人の体は自然に前傾し、背筋の震えが強まった。


「だったら……

 助けてくれ!」


 叫ぶ声に理性はない。

 感情が先に溢れ出る。

 右腕から血液がぼたぼたと地面へ垂れる。

 指先の震えは止まらない。

 リリスは一瞬沈黙し、瞳の光を激しく明滅させた。

 演算と葛藤、計算と制御が交錯する様子が、視覚的にも伝わるほどだ。


「しかし、私が稼働を続ける限り、追跡と戦闘は終わりません」


 その言葉は、悠人の胸を冷たく締め付ける。

 理解が追いつかない。

 周囲の音、光、振動の全てが過剰に感じられ、脳内で混濁していく。

 視界が狭まり、時間の流れさえ意識の外へ押し出された。


「何?」


「私があの研究施設のコンピューターにアクセスした際、どうやら余分な要素まで自分の体にインストールしてしまったようです。

 そのせいで、敵はいつでも私の居場所を追跡可能となっています」


 その事実は静かに、決定的に突きつけられる。

 血流が止まったかのように感覚が痺れ、胸騒ぎが広がった。

 林の奥では変わらず零華と刺客たちが交錯する音が響いている。

 それは遠くではなく、耳元で反響しているかのようだった。


「っ──

 とにかく、今は神崎を助けるっ!

 リリスも何かできることをしてくれっ」


 思考を振り切るように叫ぶ。

 筋肉が強張り、全身に力が入っていた。

 脳は極限まで情報を処理し、体は反応の準備を整えている。

 だが、リリスの声がそれを遮った。


「最適解は──」


 リリスは静かに、自らの胸元へ手を当てた。

 演算と葛藤の末に選択した、人間的とも言える仕草。

 手の温もりはない。

 それでも、その動作は悠人の胸に何かを突き刺す。

 冷徹で無機質な存在が、今まさに自己を制御し、意思を示していた。


自己凍結フリーズです」

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