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【リアル生成AIスキル】を得たので、あらゆる物を学習&出力しまくる件/ リアル・ジェネレーター  作者: AoisoraKumori
第一章(2/3) 『暴走』

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第55話 暴走ー6

 悠人たちは、C級ダンジョン・「老巨の街道」の中へと入り、昨日たどり着いた地点へと向かっていた。


 ダンジョン内部は相変わらず薄暗く、壁面を覆う有機的な構造物が脈打つように微かに動いている。

 隊列は昨日と同じ順番だ。

 先頭を悠人が歩き、その後ろに茜、少し距離を置いて零華、最後尾にリリスが続く。

 だが、同じ配置であっても、空気は昨日とはまるで異なっていた。

 互いの距離感が、目に見えない壁によって引き離されているような感覚がある。


「吊り橋効果。

 マスター、吊り橋効果です」


 リリスが緊張に不釣り合いな調子で喋りかけてきていた。


「皆さん、脈拍や、呼吸回数から、緊張していることがわかります。

 この状態は、お互いの距離をグッと近づけるチャンスです。

 茜さんと手を繋ぎましょう。

 吊り橋効果ですよ、マスター」

「わかったってば」

「なんでしないんですか、マスター?」


 リリスは悠人の顔を覗き込む。

 少々わざとらしいが、以前よりもやはり仕草は人間に近づいていた。

 空気の読めなささは相変わらずのようだが。


「リリスちゃん、次の通路どうやって進むんだっけ」


 この重苦しい空気に耐えかねたように、一歩後方を歩く茜がリリスにルートを再び尋ねる。

 声は意識的に落ち着かせていたものの、内心では緊張が解けていないようであった。

 信頼したい気持ちと、疑念がせめぎ合っている。


「次の通路はまっすぐです」


 即答だった。

 間合いもなく、思考を挟んだ様子もない。

 すぐに首だけ茜の方を向いてリリスは即答する。

 迷いも躊躇もない返答は、正確であるがゆえに不自然さを感じさせるものだった。


「……分かったよ。

 ありがとうリリスちゃん」

「どういたしまして」


 リリスはにっこり笑う。

 その純粋な笑顔にあかねは思わず息を呑む。

 その表情がただ”出力”されたものであるとわかっていても、やはり人間に以前よりは近づいていると言わざるを得なかった。

 零華は先ほどから恨めしそうにリリスを見つめている。


「べー」

「あっ──

 このくそAI──」


 リリスは零華と目が合うと下瞼を引いて舌を出した。

 刀を抜こうとする零華を慌てて悠人は止める。


「いい加減やめるんだリリス!

 ……ただ、今のは一番人間ぽかったな」

「ちょっと天野!

 何感動してるのよっ」

「ご、ごめんてば!

 ただ、つい──

 とりあえずすぐに刀抜こうとするのやめてくれっ」

「わはは、神崎、言われてるぞ」

「り、リリスちゃん!?」


「───あ?」

「うわあああっやめろ、やめろってば。

 神崎も刀を納めて。

 ……よし、行くぞ。

 リリスは不用意に後ろを向くな。

 相手の気持ちを考えろ」


「はい、了解しました、マスター」

「───ごめん神崎。

 未熟な子供だと思って見逃してやってくれ」

「チッ──」

「マスター、さぁ、行きましょう」


 リリスは満面の笑顔で悠人に応える。

 零華の殺気を背後に感じながらも、悠人たちはそのまま前進を続けた。

 次第に進むにつれ、通路は緩やかに湾曲していき、空間がわずかに広がっていく。

 壁の質感は変化し、表面を覆っていた岩の起伏が弱まっていった。


 昨日見た覚えのある構造とは微妙に異なっている。

 通路を抜けた先で、悠人たちは足を止めた。

 見覚えのない部屋だ。


 天井は高く、視線を上げると闇に溶け込むように消えている。

 壁面には黒ずんだ粘液のようなものが垂れ、重力に従ってゆっくりと滴り落ちていた。

 床はぬかるみ、足を動かすたびに嫌な音を立てる。


「……なんだ、ここ。

 すまん、俺の記憶だとこんな場所、昨日来た覚えはないんだが──」


 湿度は明らかに高く、肌にまとわりつく空気が不快感を増幅させた。

 その部屋にある発光物は弱々しく、部屋の隅々まで光が届いていない。

 不気味な雰囲気が、はっきりと空間を支配していた。

 間違いなく、記憶にない場所だ。


 ルートを誤ったのか、それとも──。

 悠人は後ろを振り向き、零華と茜に確認しようとする。

 その前に鋭い声が響いた。


「悠人、上!!」


 茜の叫び声だ。

 その声には、恐怖と切迫が混じっている。


「え?」


 反射的に視線を上へ向けた瞬間、全身が凍りついた。

 天井に張り付くようにして、巨大な蜘蛛のようなモンスターが静かに潜んでいる。

 複数の脚で壁と天井を掴み、無数についた目玉が一斉にこちらを捉えていた。

 それがすでに悠人を捕食対象として認識し、今にも飛びかかってきそうな状態であることを理解する。

 気づいた時には、すでに遅かった。


 モンスターは脚を離し、悠人へと真っ逆さまに飛び降りてくる。

 空気を切り裂く音とともに、鋭利な牙を剥き出しにした。

 時間が引き延ばされたように感じられる。

 そのくせ、身体が硬直して動かなかった。


「ふせろ天野っ」


 零華の怒号が響く。


 次の瞬間、剣が鞘から解き放たれ、銀色の軌跡を描いた。

 迷いのない動き。

 空中で交差する刃は、モンスターの胴体を正確に捉え、抵抗を許さず両断する。

 切断された上半身は、それでもなお空中で蠢いていた。

 生命力の異常さに、悠人は戦慄する。

 鋭利な牙を向けたまま、落下の勢いを利用して噛み付こうと迫っていた。


 しかし、零華の一閃に続いて魔力の奔流が炸裂する。

 茜の魔法が発動し、圧縮された風が上半身を横殴りに吹き飛ばした。

 衝撃音が響き、肉塊は壁へと叩きつけられ、粘液とともに崩れ落ちていく。

 悠人はその場にへたり込んだ。

 激しく息を乱す。

 心臓が痛いほどに鼓動していた。

 指先が震え、力が入らない。

 零華と茜の攻撃が少しでも遅れていれば命はなかっただろう。


「リリス!」


 唖然とする悠人の前で、一番先に声を発したのは零華だった。

 怒気を含んだ声が、部屋に反響する。


「どういうことなの!?

 私も昨日は疲れていたから、記憶違いかと思ったけど、やはり昨日のルートとは違う場所よっ」


 剣を握る手は、まだ緩んでいない。

 指先に込められた力が、怒りを如実に物語っていた。

 視線は鋭く、逃げ場を許さない。


「か、神崎さん、落ち着いて。

 リリスちゃんも間違えることだってあるよ」


 茜は庇うが、声は震えている。

 リリスが悠人を危険に晒した直後であることを、身体は正直に訴えていた。


「わざとです」


 淡々とした一言が、空気を切り裂く。


「……え?」


 茜は思わず耳を疑った。

 言葉の意味を理解するまで、空白が生まれる。


「吊り橋効果を狙って、昨日とはあえて異なるルートを選択しました」


 何の悪びれもなく、合理性だけで語られる説明。

 その内容が、全員の肝を冷やしていった。


「……で、でも、悠人はさっき昨日と同じルートでって言ってたよね……?」


「えぇ。

 もちろん嘘です。

 正しいことを言ってしまえば、吊り橋効果作戦はうまくいきません」


 事実を述べているだけの口調だった。

 それがなおさら、恐ろしい。

 感情の揺らぎを一切考慮しない言葉が、鋭利な刃のように突き刺さる。


「本来ならば、茜さんが襲われて、マスターが助けるという構図が良かったのですが──」


 言葉の途中で、空気が張り詰める。

 この場の誰もが、これ以上聞いてはいけないと”心”で理解していた。


「リリス、もういい」


 静寂に包まれた中、絶句する茜と零華を傍目に、悠人は立ち上がる。


「とにかくみんな、一旦安全な場所まで戻ろう」


 真剣な表情で悠人はそう口にした。

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