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【リアル生成AIスキル】を得たので、あらゆる物を学習&出力しまくる件/ リアル・ジェネレーター  作者: AoisoraKumori
第一章(2/3) 『暴走』

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第49話 老巨の街道ー6

 頭の中ではどうしても「止める」という思考と「このまま見守る」という思考が交錯し、判断の遅れがさらなる不安を呼ぶ。


 結局、悠人は何もできずに突っ立っていることしかできなかった。


「やはり、無理矢理にでも止める──」


 見かねた零華がそう言いながら刀に手をかける。

 リリスを止めるため、彼女はズカズカと歩き出した。


「──天野……?」


 悠人は思わず、自分の前を通り過ぎようとした零華の腕を押さえる。

 零華は目を見開き、驚いた表情で悠人の方を見ていた。


「どういうつもり」


 彼女は悠人の返答を待っている。


「──このままやってみよう。

 ”心”は重要だ。

 それが──

 手に入るかも知れない。

 ……手に入るかもしれないんだ──」


 視界の端で茜が小さく震え、息を吐くたびにわずかに体が揺れる。

 零華は目を細め、剣の柄を握る手から力を抜いた。


「──どうなってもしらないわよ。」


 零華はその後、視線をリリスの方へ向けると、装置の光の微細な変化を読み取ることに集中する。

 悠人はその高鳴る胸の鼓動を感じながら、光の中心で変化していくリリスの観察を続けた。


 膨大なデータが一度に流れ込む光景は、理論的には計算可能でも、感覚的には理解を超えるものだ。

 悠人はさらにもう一歩後退し、後ずさる。

 視線はそれでもリリスから外せない。

 光が交差し、スクリーンに表示される膨大な情報がちらつく中で、彼は室内の温度や湿度の微細な変化を肌で感じとっていた。


 意識の端で、理性が

「これは危険だ」

 と警告を発している。

 同時に”心”では、何か重要な瞬間を目撃しているという興奮が渦巻いていた。


 室内に漂う電流音が鼓動と同期するかのように高まっている。

 緊張感は最大に達していた。

 光は依然として強く装置に絡みついている。

 リリスの無機質な表情は、光によってとうとう見えなくなってしまった。


 悠人は、視界の端で息をするのを忘れて呆然と見守る茜と、硬直した零華の姿を捉えながら、ただその姿を見つめる。

 研究施設に満ちる光の中で、リリスは静かに、だが確実に変わり始めていた。




 ◇




「──大丈夫か、リリス。」


 データの収集は終わったようだ。

 光が落ち着き、あたりには静寂が戻りつつある。

 リリスの元へ悠人は近づく。

 彼女はまだ、妙な光を体のあちこちから発信しながら、直立不動のまま静止していた。

 恐る恐る悠人は近づく。

 彼は何が変化したのか、確認を試みた。


「うわっ……!」


 彼女に触れようとしたその瞬間、リリスはその手を払いのけるような仕草を見せる。

 あまりのことに悠人は固まった。


「……リリス──?」

「まずは一旦、ここから出ましょう、マスター。」


 一拍置いて、リリスが悠人の方を向く。

 その顔は微笑んでいて、表情が今までとは比べものにならないくらい柔らかいものになっていた。


「また襲撃者がいつ襲ってくるかわかりません。

 とにかく、ダンジョンの外へ出ることを提案します。

 ……マスター、どうかしましたか?」

「──え?

 あ、あぁ。

 そ、それもそうだな。」


 悠人はあたりを見渡した。

 研究施設は流れ弾により大部分が破壊されており、そこかしこの配線から火花が散っている。

 されど、それ以上、何かさらに優れたものがあるわけでもなさそうであった。

 流れ弾によって破壊された壁の奥に、さらなる空間があるというわけでもない。

 リリスの反応からも、どうやら“宝箱”はこれで全部なのだろう。


 リリスの提案通り、悠人はひとまずここから出ることに決めた。

 この空間は光がなく、元きた通路から差し込んでくるものだけが頼りだ。

 悠人自身、さっさとこの場所を出たい気持ちに変わりはない。


「よし、みんな、ずらかろう。

 攻略は──

 また別の日にやればいい。」


 一同は、黙々と装備品や自分の怪我の状態を確認した後、その足を出口へと向けた。

 倒れた襲撃者たちを傍目に、さっさと研究施設から出ることにする。

 そこに異論を唱える者はいなかった。


「神崎、こいつらって──」

「あぁ、全員生きてる。」


 そこには、先ほどの襲撃者たちが意識を失った状態で一列に床へと並べられていた。

 この謎の施設を出る前に、この襲撃者たちをどうにかしなくてはいけない。


「天野、お前が概念の攻撃を喰らわせて、こいつらを無力化するんだ。」

「──わかったよ。」


 悠人は地面に並べられた襲撃者たちの姿を改めて眺める。

 全員が大人だ。

 自分よりも背丈が大きく、年齢も上のプロ探索者たちが、少なくとも悠人のことは殺そうと襲撃してきた。


 こうしてうまく鎮圧できたものの、彼の体は今になって震え始めている。

 同じ人間に殺意を向けられるというのは、悠人にとってやはり慣れないものだった。

 今も目まぐるしく、その脳裏に過去の人間との戦闘が蘇ってくる。

 ミーネスの”内藤”と呼ばれていた狂人探索者。

 ネクロスの刺客。


 恐ろしい殺意と、痛み。


 死の恐怖。


「──天野、大丈夫だ。

 落ち着け。」


 零華は震える悠人の肩に手をおく。


「お前の“概念”をこいつらに喰らわせれば、良い見せしめになる。

 ミーネスは隠蔽気質が高いところがあるから、損害の大きさも相まって、これ以上手出しはしてこないはずだ。

 ……安心しろ。

 もう終わったんだ。

 私たちの勝利だ。」


 彼女はどこか口下手なところもあるが、結局、根はとても仲間思いな人間だった。

 その“心”は本物だ。

 彼女の掌の暖かさが、人間・天野悠人の内側に染みる。


「……ありがとう、神崎。」

「悠人、生成できそう?

 治癒魔法かけるよ?」


 悠人が顔を上げると、そこには手のひらに柔らかい光を発している茜の姿が映った。

 パーティーとはこういうものなのか。

 仲間という存在の心強さを悠人は感じていた。


(そうだ。

 もう俺は一人じゃない。

 ──いけるさ。)


 悠人は顔をあげ、背筋を伸ばした。


「……ありがとう、茜。

 けど、大丈夫だ。

 それに、概念生成は、治癒魔法でどうこうできるものじゃないし。」

「そっか……」

「でも、おかげで生成に必要な“精神コスト”は、随分と回復したぜ。

 神崎も、ありがとう。」

「ふん、何も感謝されるようなことはしていないわ。

 居候させてもらってるし、当然のことをしたまでよ。」

「──それじゃ、いくぜ。

 危ないからみんな離れててくれ。」


 悠人は手のひらを広げ、生成を開始する。


 今度は概念の剣を生成した。

 地面に並べられた襲撃者たちに向けて、悠人は早々にその刃を振るう。

 その後、味方にぶつかることのないよう、即座に分解を行なった。

 成功だ。


「今度こそ、これで終わりだ。

 行こうか、みんな。」

「──うん。」


 悠人たちは、人工のものと思われる通路を後にする。

 地面が洞窟の岩に戻り、足音は変化していった。

 悠人は周りを見る。

 そこには少し様子が変わったリリスと、茜、零華の姿がある。

 みんな無事だ。


 最後に鈍い金属音が地下通路に反響した瞬間、張り詰めていた空気がようやく切り替わった気がした。




 ◇




「な、なんですかこれは──」


 “第8“隊長・鉢川は、発狂する”ラーニング・ワン、ツー“を眺めていた。

 彼らは分厚い窓ガラスの向こうで、頭を抱えてうずくまり、しきりに何かを叫んでいる。


 ここは探索者統制機構・極秘研究所の一室。


 “ラーニング・ワンワン”の攻撃を受けた結果らしい。


「どうにかできそうかね、鉢川くん。」


 ネクロスは異様な光景に呆気にとられている鉢川の肩に手を乗せる。

 視線を向けると、そこには目元を隠すゴーグルをつけた、ネクロスの顔が映り込んできた。


 どうしようもない圧を鉢川にぶつけてくる。

 必死に隠しようとしているようだが、かなり腹が立っているようだ。

 その口元は相変わらず笑っていなかった。


「──さぁ、わかりません。」

「わからない?

 お前にモルモットを何人も与えたよな?

 わざわざダンジョン内に研究施設まで用意してやった!

 研究内容が内容だからな。

 この極秘の研究施設でもできないような研究のためにっ」

「しょ、承知しております、マイ・マスター。

 しかし、これらの研究は流石にこの短期間での成果は難しいです。」

「……まぁ、いい。

 とにかく、研究を続けろ。」


 ネクロスは掴んでいた肩を離すと、大きく息を吐き出した。


「……それで、その研究施設だが、ちゃんと隠蔽処理は施しているんだろうな?」


 再びネクロスは鉢川の肩を先ほどよりも強く掴む。

 顔を近づけ、周囲には殺気が漂っていた。


「も、もちろんでございます、マイマスター。

 あの秘密の空間に気づける人間などいないでしょう。

 C級ダンジョン内なので、気づくことができるような探索者は、そもそも立ち入りませんし。」


「……御託はいい。

 結果こそが全てだ。

 バレた時はお前もモルモットの一人として利用するからな。」

「こ、心得ております。

 ──マイ、マスター。」


 ガラスの向こうの人間は今も発狂を続けていた。

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