とある施設にて
「正気なんですかぁ、ネクロスの野郎。
ダサいゴーグルに、ダサい名前に、やってられねえですよ。」
「し、静かに!
聞こえていたら俺たちの命はないぞ。
奴は今ピリピリしてやがるからな。
それに給料自体はちゃんと出る。」
ネクロスが生成したダンジョンゲート生成装置。
それを用いて出現したダンジョンに、二人の男たちが武器を持って歩いていた。
道端には多くのモンスターの死骸が転がっている。
ダンジョンの奥深くからは、男たちの雄叫びと、モンスターたちの絶叫が響いてきていた。
「……あれ、ですかね。」
「あぁ、目的地に着いた。
しかしすごいよなぁ。
確かにダンジョン内では外に情報が漏れづらいし、法律も適用されにくい。
だからって、ダンジョン内に施設をつくっちまおうだなんて、普通は思わないぜ。」
二人組の男たちは足を止める。
そこには大勢の男たちがダンジョン壁を削りながら工事を行なっている光景が広がっていた。
「あとこれ、ネクロス様からの指令だ。
準備できてるよな?
どうも先のイライラさせてる原因になった事件について、重要な鍵になるものらしい。」
「人間の精神、”心”のデータですよね。わかっていますよ。」
男は胸に抱えている、命よりも重要な機材が入ったケースをぽんぽんと叩いた。
ネクロスが生成したダンジョンゲート生成装置。
それによってこのダンジョンは開かれていた。
C級ダンジョン・「老巨の街道」。
ここには”第8”と呼ばれる部隊が配属されている。
「しかしネクロスさんも無茶言いますよね。
なんなんですか、”心”やら、”精神”のデータを集めろだなんて。」
ヘッドギアをつけた一人の男が愚痴をこぼす。
「何やら、精神に影響を及ぼすスキル持ちが現れたらしい。
前線の奴らはほんと大変だな。
俺たちはこれでも楽な方だぜ?」
もう一人の白いヘッドギアをつけた男は苦笑しながら続けた。
「俺たちはデータさえ集めていればいいんだからな。
しかし、ダンジョン内だと現実の奴らと連絡が取れない。
いちいち外に出るのはほんと面倒なとこだな。
ま、文句言っても仕方ないか。」
「おい、さっさと持つもん持って出口に集合しろ!」
「やべっ───」
警報音があたりに鳴り響く。
「全員撤収!全員撤収の時間だ!
置いてかれたやつはモンスターに食われても知らんからな!」
やがてその施設は施錠される。
関係者以外には気づかれようのない細工を施して。
数分後、誰の音も聞こえなくなった。




