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【リアル生成AIスキル】を得たので、あらゆる物を学習&出力しまくる件/ Real Generators  作者: AoisoraKumori


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第31話 刺客ー5

「──何これっ」


 茜の目に映った光景は、あまりにも残酷なものだった。

 床に広がる血だまり。

 その中心に倒れ伏す人間──

 銀髪のポニーテール、見覚えのある女だった。

 A級探索者、神崎零華だ。

 その側には、生気を失い、膝をついたままの悠人がいる。

 加えてすべてを支配するかのように立つ、冷酷な、統率された容姿を持つ二人の男たち。


「……っ」


 一瞬、思考が真っ白になる。

 茜の足は止まり、呼吸が詰まった。


「ゆ、悠人が、神崎さんとダンジョンに潜るのを見て、

 わ、私も一緒にと、

 ……そう思ってこっそりついてきてみたんだけど──

 こ、これは一体……」


 よく分からない。

 混乱。

 二人の無機質な男たちは手に刃物を持っていた。

 持っているというか、生えている。

 それでも、走り出す。

 それしかない。


 早く助けなくては死んでしまう。


「神崎零華さん……!」

「何だ貴様は。

 下がれ!」

「──えぇいっ!」


 茜はがむしゃらに魔法を発動させ、出てきた光の塊をラーニング・ツーの方へ放つ。

 拳程度の大きさをした、貧弱な光の塊。

 治癒魔法以外をろくに使用することはできないし、練習すらしたことがない。

 攻撃を与えることのできる魔法は、これが精一杯であった。

 ラーニング・ツーは、片手でその光の塊を弾く。


「ふん、何だこれは。

 ──がっ!?」


 刺客たちが茜に気を取られている隙に、悠人は背中に背負っていたリュックを手に持ち、思いっきり振り回した。

 回転するように振り回したリュックは、二人の刺客の顔面を直撃する。


 リュックから、物理コストとして入れておいた様々なガラクタが、音を立ててそこら中に落ちていった。


「くぉのガキぃっ……!」


 刺客たちは顔面を抑えて痛みに悶え、苦悶の声を漏らす。

 その一瞬の隙に、神崎零華の体を両手で抱え、悠人は茜の元へと走り出した。

 前のめりになりながら、なりふり構わず地を蹴る。


 茜の前まで辿り着くと、悠人は、勢い余って豪快に転倒した。


「ゆ、悠人──」

「俺のことはいい!

 早く応急措置を!

 治癒魔法を頼むっ」


 茜は、零華の横に膝をつき、その身体を支えた。

 白い戦闘服は血まみれで、呼吸は浅く、不規則であった。


「そんな……

 こんなの……」


 胸元の傷を見た瞬間、茜の心臓が激しく締め付けられる。

 素人目に見ても、それが致命的だと分かってしまうほど凄惨な傷だった。


(まずい……

 このままじゃ……)


 指先が恐怖で小刻みに震える。

 視界が滲み、涙が今にもこぼれ落ちそうになった。

 ここまでの重症者を処置した経験など、一度もありはしない。

 ギルドの人形で重症者を治癒する訓練自体は積んでいた。

 しかし、これほど深い傷の治癒を成功させた試しなどなかったのだ。


「お願い……

 死なないで……」


 茜は治癒魔法という貴重な魔法を使用できる人間ではあった。

 だが、それを使いこなす才能はない。

 震える声で、必死に言葉を紡ぎながら、恐る恐る傷口に両手を向ける。


「もう……

 どうにでもなれぇっ……!」


 理屈は捨て、とにかく傷を塞ぐことだけを念じ、自身の中にある魔力を根こそぎ絞り出して放出した。

 すると彼女の身体から、柔らかく、それでいて圧倒的な輝きを放つ光が広がっていく。


 ──あれ、まずいかも。


 本能が警鐘を鳴らす。

 身体から、決して出してはいけない根源的なものまで絞り出されているような感覚に襲われた。

 すぐにでも供給を止め、光を引っ込めなくてはならない。


(──けど、それでもっ

 後悔のない方をっ……)


 溢れ出る膨大な魔力を必死に腕で制御しながら、零華の傷口へと注ぎ込み続ける。

 すると傷口が、みるみるうちに塞がり始めていった。


(これはっ──!?)


 今までは魔力を細い糸のように扱い、慎重に放出することで治療を行ってきた。

 しかし、こうして思い切って放出した方が、どうやら効率が良いらしい。

 このやり方が正しいのかは不明だが、とにかく目の前には明確な結果が出ている。


(掴んだかも──

 治癒魔法のコツ……!)


 光は零華の身体を包み込み、傷口を覆い、生命の流れを強引に引き戻そうとする。

 完全ではない。

 それでも、確かに命をつなぎ止める力だった。


「何だ……

 ラーニング・ワンワンのものではない、少女の方の力か」

「純粋な治癒魔法か。

 それはそれで厄介だ」


 頭から取れそうになったヘッドギアを戻した刺客たちも、その姿を目撃する。


「さっさと殺すぞ!」


 刺客たちは眉をひそめ、即座に走り出す。


「メスガキは抹殺、少年は捕獲だっ!」

「分かっている、俺に指図するなっ!」


 データでも何でもない。

 新たに現れた純粋な才能の力に、刺客たちは動揺していた。

 悠人の意識が、強く揺さぶられる。

 少年の目には、茜が感情の力で奇跡を起こしている様にしか見えなかった。


(茜……!

 くそっ──

 俺もナヨナヨしている場合じゃないっ)


 悠人は拳を地面の土ごと握りしめ、顔を上げた。


「上だ茜!

 さっきの攻撃系の魔法を、上にも放ってくれっ」


 声を張り上げる。

 茜は考えるよりも先に、残された力のほとんどをその両手に注ぎ込んでいった。

 先ほどよりも巨大で、見るからに強力な光の塊が、茜の両手の先に現れる。


「よ、よしっ。

 治癒魔法と同じ感じでやれば、出力が上がるんだっ

 ようやく分かったよ!!」


 魔力の塊が指示通り天井へと放たれる。

 ガラガラとダンジョンの天井は粉砕され、あたりに土煙が舞い始めた。


「うおぉっ!?

「このメスガキィ!!」

「──ナイスだ茜!」


 悠人は隙を逃さず立ち上がると、茜のそばへと寄った。


「神崎を頼む。

 彼女を背負って先に出口を目指してくれ。

 奴らは俺が狙いだ。

 ……俺が引きつける。」


 その言葉に、迷いの色は一切ない。

 ここで全員が逃げようとしたところで、俊敏な刺客たちに追いつかれるのは目に見えている。


 ならば、自分が囮になる以外の選択肢は存在しなかった。


 悠人はそのまま、わざと大きな足音を立てて走り出した。


「悠人……!」


 茜の悲痛な声が背後で揺れる。

 それでも彼は一度も振り返らず、視界を覆う煙の中へと突き進んでいった。


「こっちだクソ野郎ども!

 ほらどうした!

 俺はここだぁっ!!」

「チッ逃がすかぁッ」


 刺客の怒声が響く中、悠人は構わず全力で疾走を続ける。


(ごめん、茜……

 生きて戻れるか分からないけど、もう眺めるだけのモブは嫌なんだ……)


 幼馴染と、なんとか一命を取り留めた剣の女王は、土煙の中に消える。


 天野悠人は、彼女たちとは真逆の方向──

 ダンジョンの闇の奥へと一人、刺客たちを挑発しながら、深く孤独に駆けていった。

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