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【リアル生成AIスキル】を得たので、あらゆる物を学習&出力しまくる件/ Real Generators  作者: AoisoraKumori


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第30話 刺客ー4

「……うぐっ……!」


 零華の喉から、押し殺したような声が漏れる。

 彼女の全身を支えていた強靭な意志が、一気に音を立てて崩れ落ちるのを感じた。


 普段は氷のように澄み切っている瞳から光は失われ、鮮やかな赤い液体が口元から溢れ出す。

 血は止まることなく零れ落ち、白を基調としていた戦闘服を、瞬く間に赤く染め上げていった。


 零華の身体は、もはや剣を支えることすらできず、重力に引かれるまま、ゆっくりとダンジョンの冷たい石床へと崩れ落ちる。

 乾いた音が響いた。


 それは、数え切れない死線を越えてきたA級の探索者が、戦場に伏した音だった。

 長年積み重ねてきた経験。

 研ぎ澄まされた技と判断力。

 そのすべてをもってしても悠人という足手纏いを庇いながら戦い続けるのは困難であった。


「……神崎!」


 かすれた悲鳴がダンジョン内に響く。

 崩れ落ちた彼女の体を受け止めると、温かい感触がその腕の中に広がった。

 血液だ。

 漏れてはいけないものが、彼女の体内からぼたぼたと溢れ出ている。


「くそっ──

 しっかりしろっ……」


 凍りついていた思考を無理やり解凍していく。

 瞬間、脳内では無数の処理が走り出した。


 《負傷。》

 《大量出血。》

 《致命傷の可能性。》


(回復ポーションの生成をしろッ)


 《止血剤の生成。》

 《治癒魔法の代替構造。》

 《エラー:生成に失敗しました。》


(チっ

 分析できても生成できなきゃ意味がねぇんだよォッ)


 生成の兆しを見せた瞬間、すべてが否定され、それは霧散していく。


 失敗。

 失敗。

 失敗。


 失敗。

 失敗。

 失敗。失敗。

 失敗。

 失敗. 失敗。

 失敗。

 失敗。失敗。

 失敗。

 失敗。失敗。

 失敗。

 失敗。失敗。

 失敗。

 失敗。


 失敗ッ


「……あぁあああああッ……!

 この役立たずがぁっ」

「ようやく自覚したか、バカガキ。」


 足掻く悠人の前に、ラーニング・ワンが静かに立った。


「ラーニング・ゼロは、戦闘不能。

 天野悠人を捕獲する。」

「抵抗は無意味だ。

 実験体、ラーニング・ワンワン。

 チッ──

 手こずらせやがってゴミが。」


 倒れ伏した零華から距離を取りつつ、ラーニング・ツーは、悠人の背後へと回り込む。

 逃走経路を完全に封じた。


 抜け目ないコンビだ。

 包囲。

 完全な詰み。


(──どうしてこうなった……

 どうしてっ……)


 床に倒れているのは、ただの人間ではない。


 追い続け、目標とし、進むべき道を照らしてくれた存在。

 生のデータの源泉であり、同学年にして、A級の探索者。

 その彼女が、自分の無力さのせいで、血を流している。

 そう、自分のせいで。


 自分の。

 自分のせいだ。


「……天野……悠人……」

「──神崎!?」


 零華の指先が、わずかに動く。

 彼女に、まだ意識が残っていたようだ。


 血の混じる、か細い声。

 それでも、確かに自分の名を呼んでいた。


「しっかりしろっ

 待てっ

 今止血を──」

「……あなたの……

 リアル生成AIの解析は……」


 言葉の合間に、苦しげな息が混じる。


「……まだ、完全じゃない……」


 ただ立ち尽くすことしかできなかった。

 彼女は何を言おうとしているのだ。

 零華は、震える唇で、最後の言葉を紡ぐ。


「……あなたのスキルは……」


 一瞬の沈黙。


「……彼とは、違う……」

「神崎っ」


 その言葉を最後に、彼女の瞳から光が消えた。

 完全に意識を失った身体から力が抜け、細い手から愛剣が滑り落ちる。


 金属が石床を叩く音が、やけに大きく響いた。


 信じていた。


 ここまで来られたのは、生成する力があったからだと。


 剣技を模倣し、弱点を解析し、効率だけを追い求められる特別な力があったからだと。

 自分の可能性を誰よりも信じていたつもりだった。

 だが、そのすべてが、崩れ落ちていく。

 完璧な生成は、完璧な無効化を呼び、データの山は、通用しない現実の前で沈黙した。


 先ほど奮った剣は、簡単に見切られた。

 理解する。

 自分が頼り続けてきたものが、この男たちの前では無力だということを。


 その無力さが、彼女を死に追いやったという現実を。

 リアル生成AIスキルを持つ者が他にもいて、自分はその下位互換で、スキルが使えない今、自分は”モブ”でしかないということを。


 あるのは、知識の集合体だけ。

 それは、最も恐れていた問いへの答えだった。

 力の本質は、知識だけではない。

 知識──

 ”データ”は、所詮データにすぎない。

 絶望が、精神を侵食し、視界が歪んでいく。


「ふん、観念したようだな。」


 それでも刺客たちは、細心の注意を払う。

 ゆっくりと囲みながら距離を詰め始めた。

 一歩、また一歩。

 その足取りには焦りも油断もない。


(はは……

 まぁ, スキルが発現しただけましか……

 いい夢だった。)


「待って……

 悠人!!」


 突如聞き覚えのある甲高い声が、回廊を切り裂いた。

 今まで歩いてきた通路の方から、必死に誰かが駆けてくる。

 何度も転びそうになりながら、それでも前へと進んできていた。


「……茜?」


 声にならない声が、喉から漏れる。

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