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婚約破棄?それより地盤沈下ですわ 〜「あと3日で沈む」と予言した一級建築士令嬢、重力魔法で王都を丸ごとジャッキアップして救世主になる〜  作者: 星野 藍


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第13話:最終防衛ライン:王立墓地地下

 大聖堂地下、メインコントロール・セクター。

 無機質な金属の壁に囲まれた空間で、私たちは「世界の心臓」の咆哮を浴びていた。


 ドクン、ドクン……という低い鼓動。

 それが上がるたびに、天井から砂礫が落ち、王都の傾斜がさらに一段階、深刻化していく。


『――不適合個体、および未登録データの接近を感知。……排除プロトコル、フェーズ1を開始します』


 無慈悲な警告の直後。

 壁の一部がスライドし、そこから数体の「護衛個体センチネル」が現れた。

 石造りのゴーレムではない。歯車と油圧、そして魔力の輝きが剥き出しになった、機械人形。


「ヒッハァ……! こいつは、工務店の道具じゃ手に負えねぇ代物だな!」

 バレットが、愛用のハンマーを握り直す。

 

「ケイン、バレット様! ここは私がやります!」

「アリーナ様、危険です! 貴方は今、魔力を温存しなければ……ッ!」


「……いいえ。……相手は『システム』よ。……なら、システムとしての弱点を突くのが、設計士の正攻法セオリーよ!」


 私は、手に持っていた測量機を、逆手に持ち直した。

 重力陣、展開。


 センチネルが、高速で私に肉薄する。その刃のような腕が振り下ろされた瞬間、私は――。

 避けるのではなく、その刃の「支点ヒンジ」に、一点集中で高圧の重力を叩き込んだ。


 ――ッガキィィィィィン!


 不快な金属破砕音。

 センチネルの腕が、まるでおもちゃのように根元からへし折れた。


「……関節部、油圧シールが劣化しているわね。……メンテナンス不足よ。……設計から三千年、一度もグリスアップしていないでしょう?」


 私は、後続のセンチネルたちに対しても、一切の無駄なく「構造的欠陥」に重力撃を叩き込んでいく。

 首の回転軸、脚の膝継手ひざつぎて、そして動力核の支持具。


「アリーナ様……すごい……」

 ケインが呆気にとられる。

 

 だが、本番はここからだ。

 私は壊れたセンチネルたちを足蹴にし、中央のコンソールへ向かった。


『――エラー。排除効率の低下。……登録データの照合ログインを実行してください……。……さもなくば、全システムの緊急自爆を実行します』


「自爆!? ふざけるな!」

 バレットが叫ぶ。


 コンソールの上に、青白い光が投影される。

 そこには、三次元の幾何学パズル(テトリスのような図形)が、複雑に絡み合った状態で表示されていた。


『――設計思想の合致を確認します。……この不完全な構造体を、。一分以内に最適化してください』


「……これ、ログインテストじゃない。……『入社試験』だわ」


 私は、前世の最終面接を思い出した。

 提示された不完全な図面を、予算と強度の制限内で、どれだけ美しく修正できるか。

 建築家としての魂を試す、最も残酷で、最も愛おしい、論理の迷宮。


「ケイン、バレット様! 周辺の護衛をお願い! ……一分(六十秒)で、この世界の設計者に、私の『リノベーション』を見せつけてやるから!」


 私の指が、光り輝くコンソールの上で舞う。

 複雑極まる幾何学模様を、重力魔法で引き寄せ、回し、結合させる。

 三百年、いや三千年分の、積み重なった設計の「歪み」。


「ここをこうして……。この応力をこっちへ逃がす。……支持層の負荷は、周囲の魔力排出口へ分散させて……。……よし、この構造ならいける!」


 残り、五秒。

 私は最後のピースを、中央の「欠けた部分」へと、力強く叩き込んだ。


 ――カチっ。


 世界そのものが、完璧なハーモニーを奏でた気がした。


『――ログイン承認クリア。……管理権限、一時的にアリーナ・フォン・グラナードへ譲渡。……ようこそ、新米設計士ジュニア・エンジニア


 システムの声に、初めて人間味が混じったのは、私の聞き間違いだっただろうか。


 中央の巨大なシリンダーが、沈黙した。

 それと同時に、王都の傾斜が、ぴたりと止まった。


「……ふう。……一次試験合格、かしらね」

 私は鼻の汗を拭い、目の前に現れた、より巨大な「操作パネル」を見上げた。


 だが。

 王都を元に戻すための「最終再起動リブート」には、まだ一つの、致命的な部品が足りなかった。

第13話、お読みいただきありがとうございました!

本作『建築魔法・救世令嬢〜断罪の場で「この王都、あと3日で沈みます」と予言した結果〜』、世界の「入社試験ログインテスト」回でした。


建築知識でシステムの壁を突破する。アリーナの「構造設計士」としてのアイデンティティが、ついに世界そのものに認められましたわね。新米設計士ジュニア・エンジニアから、目指すは世界のリノベーション責任者ですわ!


次回、第14話「重力崩壊とリノベーション」。

空前絶後の「都市丸ごとジャッキアップ」が始まりますわ。アリーナ史上最大の、全力再建の瞬間をぜひ見届けてくださいませ!王都の運命、一ミリの狂いも許されませんのよ。


もし「アリーナの試験合格を祝いたい!」と思っていただけたら、最後に建築確認ブックマークや評価(建設予算の増額)をお願いいたしますわ。

皆様の声援という名の「高精度ジャッキ」が、王都を再び正しい位置へと押し上げますのよ!

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