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婚約破棄?それより地盤沈下ですわ 〜「あと3日で沈む」と予言した一級建築士令嬢、重力魔法で王都を丸ごとジャッキアップして救世主になる〜  作者: 星野 藍


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第10話:地盤沈下パーティへようこそ

 王都中央区。追放されたはずの私が、再びそこへ現れたのは、数日前の「断罪の夜」よりもさらにきらびやかな夜会が行われている、サフィール伯爵家の私邸だった。


「主役が遅れてはいけませんわね、ケイン。……ええ、もちろん招待状は持っていないけれど」


 私は、汚れを落とし、新しく調達した「作業しやすい機能性重視のドレス」――要所にストレッチ素材と隠しポケットを仕込んだ特注品――を纏い、屋敷の正面玄関に立っていた。

 隣のケインは、正装をしているものの、腰の剣にはいつでも抜けるように手が添えられている。


「アリーナ様、本当に乗り込むのですか? ここは反グラナード派の巣窟ですよ」


「巣窟……。ええ、シロアリの巣ね。……それも、土台が腐り果てた」


 私が扉を押し開けると、広間を埋め尽くす貴族たちから、一斉に軽蔑と驚愕の視線が突き刺さった。

 中央で談笑していたのは、あの夜会で私を捨てたアウレリウス王子と、男爵令嬢……そして、王都の予算を握る守銭奴たちだ。


「……アリーナ!? 貴様、国外に逃げたのではなかったのか!」

 アウレリウスが、顔を真っ赤にして叫ぶ。


「逃げる? そんな非効率なことはいたしません。……それより、サフィール伯爵。この素晴らしい石造りの大広間。……最近、少し、天井のシャンデリアが低くなったとは思いませんか?」


 私は、会場の中央、ちょうど王子たちが立っている場所まで歩み寄った。

 私の診断眼は、すでにこの屋敷の限界を予見している。


「……何だと? 貴様、また不吉な予言を――」


「予言ではありません、計測ですよ。……伯爵。貴方のこの屋敷、数年前の改修工事で『免震魔法陣』を削りましたね? その費用で、奥様に高価なネックレスを贈ったとか」


 伯爵の顔から血の気が引く。


「な、……なぜそれを……!」


「計算すれば分かります。この屋敷の自重と、支持層の耐力。そして、この一帯を流れる魔力水理の急変。……全てのデータが、ここ(・・)が最初の崩壊点だと示しているんです」


 私は、扇子のように折りたたんだ「レーザー測量魔法具」を広げた。

 目に見えない赤いラインが、会場の壁を這う。


「皆様、ワインを置くことをお勧めします。……あと一分で、この屋敷の応力バランスは完全に崩壊します。……そして、その被害額は一、二三万ゴールド。……奇しくも、貴方がたが中抜きした予算の総額と同じですね」


「……ふざけるな! アリーナ、貴様の呪いだ! 警備兵、連れ出せ!」


「三。二。一」


 ――ガガガ、と。

 嫌な振動が、足裏から伝わった。

 かつて市場で起きたものとは比較にならない、巨大な「破砕音」。


 大広間の正面にある巨大な彫刻が、まるで生き物のように横に滑った。

 壁に走る、無数の亀裂。


「ひっ、……あ!? 揺れてる!? 本当に……!」

「アウレリウス様! あ、足元が!」


 貴族たちがパニックになり、出口へ殺到する。

 だが、私は動かなかった。入り口をケインに塞がせ、冷酷に告げる。


「残念ですが、正面玄関の柱はすでに折れました。……今出れば、屋根ごと潰されますよ」


「な……! では、どうすれば……!」


「私の指示に従ってください。……サフィール伯爵。貴方が隠し持っている『緊急防衛用魔力タンク』。あれを開放しなさい。……それを燃料に、私がこの屋敷全体の重力を一時的に『固定ロック』します」


 私は、逃げ惑う貴族たちの中心で、一人図面を広げた。


「資材も時間もありません。……ですから、貴方がたの『魔力』そのものを、建築資材として使わせていただきます。……命を惜しむなら、今すぐ私の魔法陣に魔力を注ぎ込みなさい!」


 私は、大広間の床に巨大な幾何学模様を描き始めた。

 それは、崩壊を止めるための「即席の支柱」を作る魔法陣。


 プライドも面目も投げ捨て、貴族たちが私の足元に跪き、必死に魔力を捧げ始める。

 

 ――地盤沈下パーティ。

 かつて私を笑った者たちが、今度は私の足元を支えるための「ただの動力源」へと成り下がっていた。


 私は鼻先で笑い、ペンを走らせる。

 リノベーションの第一歩。王都の腐敗を、物理的な圧力で押し潰す時が来たのだ。

第10話、お読みいただきありがとうございました!

本作『建築魔法・救世令嬢〜断罪の場で「この王都、あと3日で沈みます」と予言した結果〜』、パーティへの乱入と、物理的な実力行使回でした。


アリーナの「計算に基づく事実の掲示」が、最も権力者に効くことをお楽しみいただけましたでしょうか。彼らが私腹を肥やすために削った「安全」を、彼ら自身の魔力で支払ってもらう……これこそが構造設計士の「ざまぁ」ですわね。


次回, 第11話「予算管理局の再建(物理)」。

崩壊した屋敷を人質に、アリーナが工事の「全権委任」を迫る、本当のリノベーションが始まりますわ!お楽しみに!


もし「パーティでの断罪がスカッとした!」と思っていただけたら、最後に建築確認ブックマークや評価(建設予算の増額)をお願いいたしますわ。

皆様の応援が、王都再建プロジェクトを加速させる「最高のブースト」になりますのよ!

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