第19話 革命の終わり ― 王妃、最後の裁きを下す
戴冠式から三日。
王城は静けさを取り戻していました。
けれど、それは平穏ではありません。
――嵐の後の沈黙。
革命派の主要人物はすべて拘束。
貴族社会は揺れに揺れていました。
王城・大審議室。
歴代でも最大規模の裁定会議。
王、王弟、前王太子、貴族議会、騎士団長。
そして。
王妃候補として、レティシアも席に着いていた。
ざわめきが走る。
「王妃が裁定に?」
「前例がない……」
当然です。
けれど新王は静かに言った。
「彼女はこの国を救った一人です」
反論は出なかった。
拘束された侯爵が笑う。
「勝者の裁きか」
「いいえ」
答えたのはレティシアだった。
「これは未来の選択です」
彼は目を細める。
「我々は間違っていない。王政は遅れている」
「理解しています」
即答。
場が凍った。
王弟すら視線を向ける。
「あなた方の思想そのものは罪ではありません」
ざわめき。
「では何が罪だと言う!」
侯爵が叫ぶ。
レティシアは静かに告げた。
「恐怖で未来を選ばせようとしたことです」
「王を無力化すれば争いは減る」
「責任を分散すれば平等になる」
「理想としては正しい」
彼女は続ける。
「ですが」
一拍。
「誰も責任を取らない国になります」
静寂。
「決断とは孤独です」
王座を見る。
「それでも引き受ける者がいるから、人は安心して生きられる」
カイルの瞳がわずかに揺れた。
王が問う。
「レティシア、あなたならどう裁く」
全員の視線。
歴史が決まる瞬間。
彼女は立ち上がった。
「革命派首謀者に死刑は不要です」
騒然。
「甘すぎる!」
「反乱だぞ!」
だが彼女は続けた。
「代わりに――」
まっすぐ侯爵を見る。
「あなた方に国を支えていただきます」
沈黙。
「……何?」
「政治顧問として、改革案を提出し続けなさい」
誰も理解できない顔。
「理想を語るだけではなく、責任を持って実行してください」
一歩近づく。
「逃げ場は与えません」
「理想を現実にする苦しさを知ること」
「それがあなた方の罰です」
侯爵の表情が崩れた。
初めて。
怒りではない顔。
「……失敗すれば?」
「責任を取っていただきます」
穏やかな声。
「王と同じように」
沈黙の後。
王弟が笑った。
「なるほど」
小さく拍手。
「処刑より残酷だ」
そして頷く。
「異議なし」
前王太子も続く。
「合理的だ」
貴族たちも次第に沈黙した。
反対できない。
あまりにも“王政らしい裁き”だった。
王が宣言する。
「革命派は解体」
「関係者は監督下で国家改革委員へ編入する」
槌が鳴る。
歴史が変わった。
革命は敗北したのではない。
――吸収された。
会議後。
夕焼けの回廊。
「……驚きました」
カイルが言う。
「怒られるかと思いましたわ」
「逆です」
彼は笑った。
「あなたはもう王妃ですね」
少し照れて視線を逸らす。
「まだ正式では」
「時間の問題です」
優しい声。
少し沈黙。
「怖くありませんでしたか」
「怖かったですわ」
正直に答える。
「ですが」
彼を見る。
「あなたが責任を背負うなら」
小さく微笑む。
「わたくしも半分持ちます」
彼は静かに手を取った。
「助かります」
夕日が二人を照らす。
王と。
王妃になる人。




