第二十一話 チョコレートハイ
「ところで部長たちは何してたんだ。ボーっとしてたわけじゃないんだろ?」
マルスに振り回され疲れ果てたせいか、少しばかり棘のある言い方をしてしまった。
「もちろん観光だよ。後は情報だね。こう見えてもちゃんと霊明君の力になれるように頑張ってるんだよ。」
情報はありがたい。
何も知らない素人が試合に情報も無しに出てもカモにされるだけだ。
ここは素直に部長たちに感謝しよう。
「で、情報って?」
「まず前回の優勝者の情報っす。」
「っ!」
「どうしたっすか?」
この顔・・・間違いなくあの時に絡んできたグリンとかいうやつだ。
何だかやけに偉そうにドルトムに突っかかってくると思ったら前回の優勝者だったのか。
「能力とかは何かよく分からないけどドロドロした物らしいわ。」
「まあ僕の能力も割とドロドロしてたりするけど同じような能力かな。」
「情報としてはそれだけかな。」
「・・・・・・・そうか。」
・・・・・まあ無いよりもマシだと思おう。
「そして露骨にがっかりしている霊明君は分かっていたのでこの人を紹介しよう。
キーラさんです!」
部長たちの後ろからグァーグリュを連れた一人の女性が出てきた。
「君がレイメイか。初めましてキーラだ。」
「あ、どうも。」
とても綺麗な人だ。
この町特有の鳥人だがそれでも分かる。
そしてこの人の連れているグァーグリュだ。
とても綺麗な装飾を付けている。
羽根自体も色合いが鮮やかだ。
「君は初心者らしいが本当にそのグァーグリュを乗るつもりか?
こういうのもなんだが私のグァーグリュを貸してあげようか?」
じゃあ是非!
と思わず言いそうになったが喉でとどまる。
「いや僕はこのグァーグリュで勝つ。いや、このマルスを飛ばしてみせる。」
1度決めたことだ。
これぐらいで引くつもりは無い。
「勝つだけじゃなく飛ばしてみせる・・・ね。なかなか言うねレイメイ。」
そう言うとキーラはグァーグリュに乗り指を僕に向けた。
「だが君はまだ素人だ、それでは勝負にはならないな。私に着いてこい。乗り方を教えてやる。はぁっ!」
まだ着いていくかの返事をしていないはずだがキーラは先に走り出してしまった。
「あははっ元気な人だね。これは本格的に私たちの出番は無さそうだね。行ってきなよ霊明くん。」
「部長…。やるからには勝ってみせるよ。」
しかし着いて行きたいのは山々だがマルスがピクリとも動かない。
「お腹がすいているんじゃないかしら。あなたのチョコレートの出番ね。」
このチョコレートはとても苦い。
それに取りにチョコって良いものなのか悪いものなのか分からない。
・・・・・物は試しであげてみることにした。
グァーグリュが食べられるサイズのチョコレートを作り目の前に浮かせる。
マルスは最初少し戸惑っている様子だったが匂いを嗅ぎ口に含んだ。
「一応食べても問題は無いのか?」
そういう発言の後はすべからく何か問題が起きるものだ。
「うあっ!」
チョコを食べたマルスが突然興奮し始めた。
両足をバタつかせ羽は縦横無尽に動く。
若干飛んでいる様な気がしないでもないがただ跳ねているだけだ。
そんな感想を抱いている間にもこのグァーグリュは走りだそうとする。
「じゃ、じゃあ部長行ってくる。」
「あ、うん行ってらっしゃい・・・っていう前に行っちゃったね。」
部長の返事を待たずにとにかく走るマルス。
確かに手綱を握るのは大変だが期待は出来る分の元気はあるようだ。
「あ、おいマルスストップだ。お~い。」
キーラの方へ走ったところまでは良かったもののそのまま通り過ぎていく。
「中々早いなあの二人。行こうトーリス。」
後ろから猛スピードで追いかけてくるキーラとグァーグリュを確認しながら僕は必死にチョコで狂ったグァーグリュを必死で止めようとした。
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