11朝の団欒(第一次改稿済)
「ん…」
次の日の朝、俺は窓から射し込む陽光に当てられ目を覚ます。
「ん、ん~…っと」
ベッドの上でそのまま大きく伸びをする。体を起こして辺りを見回すとなにか違和感を感じた。明らかに自分が知っている場所ではない。俺の部屋はまず常にカーテンをかけているので陽の光が侵入してくることはまずあり得ないのだ。
──ん?あ、そうだ俺いまリラの家にいるんだったな。
一人で勝手に悩んで納得した。そこで俺はようやくベッドから降りた。
──そういえばこの部屋ってこんなに明るかったんだなぁ。
と暖かみのあるクリーム色の木材でできた室内を見て思う。最初にこの部屋を見たのが夜だったので、辺りが薄暗くてまともに分からなかった。
一通り室内を、改めて何となく見回してみる。だが他に目ぼしいものは何もなく、ごくごくありふれた生活空間が広がっていた。
存分に眺めたところで俺は部屋から出る。のだがその時、俺の部屋を一緒のタイミングで開けた人物がいた。
「!?ひゃっ!」
「あれ、アーリィ?おはよう」
「あ、ええおはよう、リン」
俺の部屋の扉を開けたのはアーリィだった。
アーリィは既にスッキリとした顔をしており、眠気などは一切感じられなかった。そのことからアーリィは俺が目を覚ます前から起きていたというのが分かる。
「ああ、ビックリしたぁ……」
「ハハッ、ごめんよ。ところで、どうしてアーリィが俺の部屋に?」
「え?それは、リンを起こしに来たからよ」
「あ、そうなの?」
「ええ。ん~でもその必要はなかったみたいね?」
「そ、そうだね……。…いや、そんなことは無いんじゃないかな!」
「え、どうしてよ?」
──異性が起こしに来てくれるとかめちゃめちゃ憧れてたしな!くっそぅ、もう少し寝ていれば俺は起こしてもらえたかもしれないのに!!
なんて口が裂けても言えるわけがない。俺は未だ寝起きの頭を何とかフル稼働させて、別の#理由__こたえ__#を絞り出す。
「そ、それは……あ、そうそう!もし二度寝とかしてたら俺自分じゃ絶対起きないし、て言うか起きられないし!だからまた起こしに来てください、お願いします!」
「二度寝くらいならあんまり必要ないと思うけど……。!、う~ん分かったわ、また来てあげる」
「ほ、本当に!?」
その時、アーリィは薄く笑って俺にこう告げる。
「ええ。そのかわり起こし方とかに文句はつけないでね?♪」
──!?
ゾワッと俺の背筋に悪寒が走った。まるで首筋に氷でも当てられたかのように。
「え、アーリィさん?どんな起こし方をするんですかね……?」
「フフッ、さあてどんな起こし方なんでしょうね?」
──あれ、もしかして俺は取り返しのつかないことをしたんじゃ…
俺がどんな起こし方をされるのかをネガティブな方から予想しているとアーリィは、
「さぁてと、それじゃとりあえず下に降りましょうか」
「ブツブツ…これは……ありえる、いや、それともそっちか……?」
「おーい?」
「ブツブツ……いや、違う。となると…可能性があるのは…」
「おーいリン君?」
「ブツブツ……まさかこれか?…いやいや流石に…ないっしょ…うん、いや俺が認めない!」
「ちょん、(ピトッ)」
「にょやっ!?」
突然首筋に柔らかな肌触りのもちもちとした質感の少しヒヤリとした、何かが触れた。というか掴まれた感触がした。驚いて後ろを振り返るとそこにはニコッとしているが、癒される顔ではないアーリィがいた。
「ん?どうしたの?」
「いやさっき何かが俺の首に触れたような…」
「なぁに?気のせいよ、きっと」
「そう、かなぁ…?」
「きっとそうよ。それよりもそろそろご飯の時間だし、早く下に行かなきゃ!ほら、リンも早く」
「う、う~ん」
正直なにが触れたのかは分かっていたがあまり追求はしないことにする。そして、言われるがままにアーリィの後を追いかける。すると段々と芳醇で空腹に訴えかけるような香りが階段を下りる度に強くなってきた。
「そうそう、お母さんの料理はとっても美味しいのよ!」
「へ~、それは楽しみだね!」
といった会話をアーリィとしながら俺は、香りを楽しみつつ降りてきた。
階段を下りて向かった食卓にはすでに全員が揃っていた。各々がそれぞれのことをしているのを見て、俺はは思った。
──これが本当の家族の団欒なんだな。
とそこで呆けていた俺を見つけたのだろう、リラが父親との話を中断し、とてとてとこちらに歩いてきた。
「あ、リンさん、あの、おはようございます!」
「ああ、おはようリラちゃん」
「ああ、あのあの!昨日はどうも、ありがとうございました!」
「いや、いいんだよ、気にしないで?」
「え、でも……」
「いいんだよ。お礼だってもうもらってるしね」
「お、お礼、ですか?そんな!私はまだ…なにもお礼をしていません…」
「いいや、もらったよ。リラちゃんの笑顔ととっても暖かい映画のワンシーンをね?」
──我ながらなんという恥ずかしい台詞をおおおお!だが言いたかったんだ、俺に悔いなど存在しない!
「えええ!?はう……」
ボシュン、と頭から煙が出たんじゃないかという速度でリラの頭が真っ赤に染まる。
「あらあら、朝から私の可愛い妹を口説くなんて良い度胸しているじゃない?」
「え?いやちがっ──」
すると一部始終を見ていた父親がガタンッと激しく椅子から立ち上がり、厳つい顔を更に厳つくしながらこちらに歩いてくる。
「君はリン君、と言ったかな?」
「え?はい…」
父親はプルプルと両肩を震わせながら小さく口を開く。
「娘は…」
「え?」
「娘はやらん…」
「?」
次の瞬間父親はカッ、と鋭い眼光を光らせ、こう言い放つ。
「我が愛娘はやらんぞォォオオオォォォ!!」
「え、いや、だからそんなつもりじゃ…!」
──どうしてこうなる!?
「なにィ?つまりワタシの娘たちは可愛くないと!?」
「え、いや可愛いですけど!」
「なんだと!?ならばやはり生かしてはおけん!我が娘たちに手を出すならば、死あるのみぃ!」
「いやいやいや出しませんって!だからその拳を下ろしてください!」
「やかましい!娘をくれと言うのならワタシを倒してからにするがいい!」
うおおぉぉぉ!と雄叫びをあげながら今にも父親のゴツい拳が俺に向かって降り下ろされようとしていた。
──この親父、微塵も話を聞いてねぇじゃねぇかぁ!
回避は諦めて、グッと目を瞑ってこれから襲ってくるであろう痛みに備える。しかし──
「「いい加減にして!!」」
「!?」
瞑っていた瞼をあげるとお互い顔を真っ赤にしながら怒るリラとアーリィの姿があった。
「え、あ、いや…すまん…」
「ご、ごめん…」
二人の迫力に押され、俺は思わず反射的に頭を下げる。
「まったく!勝手なことばかり言っちゃって!」
「そうだよ!お父さん、勝手に決めないでよね!」
「はい…ごめんなさい…」
「リンもよ!軽々しく…か、可愛いなんて言ってくれちゃって!」
「そ、そうです!お姉ちゃんはともかくわたしなんか可愛くなんて無いですよ!」
「それは違う!」
「「!?」」
「二人は俺が出会ってきたなかで一番可愛いよ!それは絶対保障する!」
「え、やだもうリンったらなにいってるの……///」
「そ、そうです、わたしそんなことないですよぅ……///」
「いや、そんなことない!二人ともほんとに可愛いから!うん!絶対!」
「リン君?それはつまり……我が娘が欲しいと、そういうことかぁぁぁ!!」
「え?……ハッ!いやちがっ!俺はただ正直に!」
いまさら己の放った言葉を理解したところで時すでに遅し。再び今度は若干殺意の目立つ拳が降り下ろされる。だがそれは、意外な人物の言葉により再び止まる。
「あなたたち!今は食事の時間ですよ!それをまぁドタバタと!時と場所を選びなさい!それとお父さん、娘離れはもうしなさいって前から言っているでしょう!もう二人とも結婚してもおかしくない歳なんだから!」
──は?今なんて?#二人とも結婚してもおかしくない歳__・__#、って言ったのか!?
「大体二人とも止めに入ったんでしょう!?どうして二人も混ざってるの!」
「え、だってお母さん、私ハッキリとあんなこと言われたことないし…」
「わ、わたしも可愛い、なんて言われたの初めてで…」
「ふぅ、いい?二人とも。それはお父さんが常に見張っていたからなの。みんなお父さんが怖くてそう言うことは1度も言えなかったのよ。」
──いま明かされる新事実!あんなに可愛いのに相手がいなかったのは父親のせいだった!!
「えええええ!?そうなの!?」
「そうだったんだ……だからみんなわたしによそよそしかったのかな…」
「ぐ、むぅ…」
「ほら、分かったらみんな席につきなさい!ご飯が冷めてしまいますよ!ほらリン君もここに座って!」
「あ、は、はい!」
母親の鋭い一喝により俺はいそいそと指定された席に座る。
「はい、それじゃ食べましょうか!」
「あ、待ってお母さん、リンの住んでたところの風習なんだけど、皆でしない?」
「へぇぇ?それは一体どういうの?」
とアーリィが皆に説明する。そして──
「「「「いただきます」」」」
こうして朝の慌ただしいイベントが終わり、遂に朝の食事が始まった。




