12いつものリラ家
ここで一旦筆休めです…
さて、食事が始まってからも特に変わることなく静寂が戻ってくることはなかった。そして何とか食事も終わり、再びアーリィがいただきますの時と同じように食事を終えた後の言葉を伝える。
「ふむ、リン君のいた場所では命を大切に重んじているのだな」
「あ、はい、とはいっても昔の人たちの習わしなんですけどね」
「そうか。まぁ良い風習なのには変わりないからな、私達もリン君のご先祖様にあやかるとしよう」
と、父親が主導となりやはり皆で合掌して、ごちそうさま、と頭を下げる。
「ああ、美味しかったぁ」
「あらあら、そんなに美味しかったの?嬉しいわぁ!」
「うん、今日のは確かにいつもよりも美味しかったわ!ねぇ?リラ」
「う、うん、美味しかったよお母さん!」
「まぁまぁまぁありがとねぇ、リラ、アーリィ」
「うむ、確かに今日の食事は旨かった」
「あら、お父さんが言うとお世辞に聞こえるわね」
「おい」
「うふふふ、冗談よお父さん」
「なっ!まったく…」
と、食事が終わってからもリラ一家は文字通りとても騒がしかった。だが、俺にとってはそのいつまでも笑い声の絶えないこの場所は、とても心地よい居場所だった。ここまで盛り上がる会話をしたり、聞いたりしたのはいつぶりだろうか。
俺が何となく傍観していると、そうだ、とアーリィがカチャカチャと食器を片付けながら話しかけてきた。
「ねぇリン、食器を洗ったあと皆に紹介したいからついてきてくれる?」
「ああ、分かったよ」
「ついでに一緒に食器を洗ってほしいんだけど?」
「了解、じゃあ俺が食器を持っていくよ」
「あら、ありがと。じゃあお願いするわね!」
「はいよ。…よっ、と」
俺が食器を持ってアーリィと水場へ向かおうとすると母親が茶々を入れてくる。
「あらあら、まるで新婚さんみたいねぇ」
思わず動揺で積み上げて持っていた食器が激しく揺れる。
「な!?え、そんな」
「そそそそんなことないわよ!」
──突然何を言い出すんだこの人はぁ!?
「あら、そうやって否定するってことは……、そう言うことなのかしら?」
「何!アーリィ、お父さんは断じて認めないぞ、そんなこと!」
「ち、違うっていってるでしょ!もう…!」
「そ、そうですよ!何言ってるんですか、お父さんもお母さんも!」
「君にお父さんと呼ばれる筋合いは無いぞ!」
「あら、別に私はお母さんでも良いわよ?」
「アイーシャ!君は一体何を言い出すんだ!」
「よろしくお願いします、アイーシャお母さん」
「君は順応するのが早すぎるだろう!」
「あらあらウフフ、よろしくねリン君?」
「ええ、こちらこそよろしくお願いします」
と俺は頭を下げる。
「まったく…アイーシャもアーリィもどうしてそんな簡単に…、…はぁ、分かった。流石にお父さん何て呼ばれては堪らんからな。グリアスだ、今度からそう呼んでくれて構わない」
──すげぇ、昨夜セクハラ疑惑にかかってあれだけ顔面蒼白にしていたのにここまで格好つけることが出来るのか!
「リン君、いま君はとても失礼なことを考えていなかったかね?」
「いや、そんなことはないですよ?グリアスお父さん」
「君は私の話を聞いていなかったのかね!?」
その時突然リラが笑いだした。
「フフフッ!お父さんとリンさんまるで本当の家族みたいだね!」
「リラ!?な、何をバカな……!」
「あら、ほんとねぇ、ちょっと妬けちゃうわ」
「リラ、良いこと言ったわね!」
「えへへ~」
「くっ、ええいもう知らん!私は部屋に戻る!」
「あら、お父さん照れてる~♪」
「フフッ、照れてる~♪」
「そ、そんな訳無いだろう!リラもアーリィも、お父さんをからかうんじゃない!」
そう言って逃げるように階段を早足で上がっていった。それを見届けると不意に皆で笑いだす。
「ウフフ、お父さん顔真っ赤だったわね!」
「フフフッ!、真っ赤っかだったね!」
「ええ、こ~んな顔しちゃってねぇ」
「ハッハッハ、そうですねぇ!少しからかいすぎた気もしますけど」
「あら、そんなことないわよ?こんなことはしょっちゅうあるもの、ねぇ?」
「そうそう!」
「うん!」
「へぇ、そうなんですか」
──ん~、少し可哀想な気がするけど…まぁいっか!
「あ、っとそろそろ食器洗いにいかないと」
「あら、そうだったわねぇ」
「そうね、じゃあリン、早く行きましょ!連れていきたいところもあるし。」
「いってらっしゃい!」
「は~い、行ってきます」
「行ってきます」
「はい、いってらっしゃい、…あ、そうだわ、アーリィちょっとこっちに来てちょうだい」
「え、なぁに?」
「いいからいいから」
「え、何よ、もう…」
と持っていた俺が持ちきれなかった食器をトン、とテーブルに置くとアイーシャの元まで行く。するとアイーシャはチョイチョイと手招きし、顔をアーリィの耳元まで近づけると、そっと耳打ちした。
「頑張ってモノにするのよ?」
「!?だ、だからそんなんじゃないってばぁ!!!」
と顔を真っ赤にしながら家全体に響き渡る声で絶叫した。何を言われたかは想像に難くないが、この場で明記するのはやめておく。




