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crown taker  作者: 九JACK
慌てない慌てない、一休み一休み
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124/125

第124話「応援してるよ」

 ぽん、と夢(かなえ)先生と手を合わせる。改めて思うが……

「これ、ハイタッチじゃないと駄目なんですか?」

「ダメじゃないケド、わたしが一番繋ぎやすいんだヨネ」

 超能力者視点で制御しやすいと言われると、反論できない。やりやすさというのは能力を暴走させないためには重要なのだ。

 と、まあ、そんな感じで俺は[空の街]に入った。いや、ノリが軽い。

 どうやら、夢(かなえ)先生は俺のことはある程度信用しているらしい。そうでもなきゃ、こんな簡単に[空の街]への出入りを許してはくれないだろう。知実さんのことと、俺のことは切り離して考えているらしい。

 るんるんで[空の街]を歩いていく。俺の隣ではあ、と大きな溜め息がした。

「す、すみません、ayさん。なんか、巻き込んでしまって」

「きみのせいではないでしょう。はあ。カナエはいつもこうですよ」

「そうなんですか?」

「ええ。いつも唐突で、思い立ったが吉日みたいな行動力で……強大な能力を持つと、性格もぶっ飛ぶものなのかしらねえ」

「ayさんの[超律者(フェイト)]というのも、名前だけなら、結構壮大な感じですけど」

「ははは、そんな大したことじゃないよ」

 歩いていくと、夢(かなえ)先生がファミレスっぽい建物に入っていく。ファミレスだった。

 ただ、人の入りは少ない。[空の街]に何人住んでいるのかは知らないけど、許可制なら、人数は思うより少ないようだ。

「何名様でしょうか?」

「三名です」

「では、お席にご案内致します」

 本当にファミレスみたいだな。メニュー表もあるし、呼び出しのボタンもある。

「これも全部夢(かなえ)先生のの」

「しぃーっ」

 夢先生の能力に感嘆していたら、夢先生に口を塞がれた。

「わたしが長ってことは一部を除いて秘密なの。もし、どこかからバレたら、咲原クンと同じで、殺し屋に狙われちゃう」

 なるほど。[空の街]にいるのは訳アリの人間ばかりだ。中には殺し屋に狙われている者もいるだろう。ターゲットが最強の隠れ場所の中にいるなら、その場所の管理者をどうにかするしかない。この場合、管理者は夢(かなえ)先生だ。

 夢(かなえ)先生が死んだら、[空の街]がどうなるのかわからない。だから安易に情報を公開しないのだろう。その点、俺は知ってしまったイレギュラーなのだ。

 信頼されている分、それに応えなければならないとは思う。

「で? で? 咲原クンの意中の相手はド・ナ・タ?」

 いきなり本題かよ。というか簡単に答えると思っているんだろうか。

「黙秘で」

「なんてネ! リオウの娘デショ」

「んな!?」

 お冷を飲んでいたayさんが軽く口元を押さえる。しまった。図星なので滅茶苦茶わかりやすい反応をしてしまった。

「それでそれで~? コクった?」

「カナエ。野暮なことはお聞きでないよ。告白は告白としてちゃんとやりたいんだろう。カナエがどうして私を誘ったのかも見えてきた。大方、この子とリオウの娘とやらをくっつけたいんだろう?」

「え!?」

 思わず大きな声が出る。まさか、応援されるとは思っていなかったから。

 でも、そこにどうしてayさんが絡んでくるんだ?

「私の[超律者(フェイト)]の能力は、どんなものもまるで運命的、奇跡的であるかのように、演出すること、なんだ。HITOKATAeyesの楽曲が不思議な魅力を持っていると言われるのも、私が編集してるから」

「能力を使って、曲を作ってるんですか?」

「そう。卑怯なやり口かな?」

 問われて、俺は首を横に振る。持っている能力を何かに活かせるのは一種の才能だ。同じ能力を持っていたって、ayさんと同じく音楽に活かすかはわからない。そこはみんな違っていいと思う。

 俺の能力だって、社会に溶け込ませることができれば……と一瞬考えたけど、それは土台無理な話だ。命令強制能力なんて、碌なことに使えないだろう。

「羨ましいです。そういう、人を喜ばせるために力を使えるなんて。俺は全然で」

「まあ、能力なんて、持ちたくて持つものではないしな。それで引け目を感じるのは違うが」

「別に、五十嵐に引け目なんて感じてないですよ。ただ……」

 告白みたいなことをしてしまった、という話を口に出した。なんだか誘導された気がしないでもないが、まあいい。夢(かなえ)先生タイプの行動力と、ayさんタイプの誠実さには敵わない。タチが悪いのは、夢(かなえ)先生がそれをわかって、キューピッドごっこをしていることだ。まあ、相談できる相手もいなかったし、ちょうどいいと利用させてもらっている。

 夢(かなえ)先生がひゅうひゅう言っているのが喧しいが。

「なんで、告白ということにしなかったんだ?」

 うぐ。ayさんも結構ぐさぐさくるなあ。

「勢い任せで言った言葉……というか、告白のつもりじゃない言葉を、告白にしたくなかったんですよ」

「なるほど」

「あれれ? 咲原クンってば、ロマンチストだな?」

 そうですよ! これがいばら姫派の男子です!

「それなら、尚更、アイたんを頼りなよ」

「嫌です」

「即答」

 ayさんの能力の詳細を聞いて、より頼るわけにはいかなくなった。

「ayさんの能力で演出してもらうのって、俺が[傀儡王(パペットマスター)]で『好きになれ』っていうのと同じじゃないですか。そんなの嫌ですよ」

 俺が宣言すると、夢(かなえ)先生はぽかーんとしてから笑った。

「あっははは! やっぱりロマンチストじゃん!」

「ちょっと! 静かに」

 くふくふと笑う|夢先生に、俺は周りの目が気になった。幸い、店内に人は少ない。よかった。

 でも、ayさんまで微笑ましそうにしているので、恥ずかしいことに変わりはないです。はい。

「応援してるよ」

「叶うといいね」

 謎のエールをもらって、俺は二人に頷いた。

 改めて、決断する。五十嵐のことを幸せにしよう、と。

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