27話 ~報道~
「だから、私は味方だって言ってるでしょ?」
三河屋は餓狼の方を振り返り、相変わらずふざけた調子で言った。
「今日はさ、君にお届け物を持って来たんだよ」
「お届け物……?」
「そうだよ。このリュックの中に入れて持ってきたんだ。開けても良いかい?」
「駄目だ」
「えぇ!?」
「武器か何かが入っているかもしれない」
「うわー! 用心深いねぇ、お父さんそっくり!」
「それはない」
餓狼は即座に、吐き捨てるように否定した。
自分の父親は、安倍家の長老たちにいつもペコペコと媚びへつらっているような、情けない男だ。少しでも自分と一緒にされたくはなかった。
『良いではないか、餓狼』
二人のやり取りを見下ろしながら、リイルが不敵に薄っすらと笑う。
『その者に少しでも不審な動きがあれば、何かを仕掛けてくる前に、我が瞬時に噛み殺してやろう』
「ひょえー! 怖い! 怖すぎるよ!」
三河屋はわざとらしく自分の身体を抱きしめ、大袈裟に身震いしてみせた。
(……漫画とかだと、こういう飄々としたやつは大抵『本物の強者』なんだよな。リイルも警戒してるし、用心するに越したことは無い)
餓狼はふっと目を細め、静かに要求した。
「分かった。それなら、その『届け物』とやらを見せてくれ」
「あいよ!」
三河屋は背負っていた黒いリュックのジッパーを勢いよく開けると、ガサゴソと中を探り始めた。
「あれー? 無いなー。おかしいな、あんな大事なものを失くすはずないんだけどなぁ……。――あ! ミンティアみっけ! 失くしたと思ってたのにラッキー! この『納豆キムチ味』が最高なんだよねぇ。……って、今はそれどころじゃないか。えーと……あ、あったあった! これですよ」
極限まで緊張している餓狼の目の前に、三河屋がバッと掲げたもの。それは――四つ折りに折りたたまれた、一紙の新聞だった。
「安倍家の悪ガキ、安倍鮫肌が殺された事件。その後のことが、この新聞にバッチリ書いてあるんだよ。どう? 気になるでしょ?」
餓狼は思わず、ゴクリと唾を呑み込んだ。
気になるに決まっている。警察の追跡を逃れるためにスマホの電源をずっと切っていたせいで、調べることが出来なかった。
事件から数週間が経った今、世間ではあの事件がどのように報道され、自分がどう扱われているのか、気になって仕方がなかった。
「――というわけで、一万円でいいよ」
「……は?」
「安いもんでしょ? この富士山の頂上までの運び賃を考えたらさ」
「味方じゃなかったのかよ」
「それとこれとは話が別! ビジネス、ビジネス。ほらほら、どうする?」
「くそっ……!」
餓狼は忌々しそうに舌打ちをしながら、愛用のボディバッグのジッパーを開けた。
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