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14話 ~驚愕~

 


 三鷹にある自宅の一軒家へと戻ってきた餓狼は、入念に周囲を見回した。


 警察の張り込みや、安倍家の不審な人物がいないことを確認すると、植木鉢の下に隠してある合鍵を掴み、素早く玄関を開けた。


 中に入ると、不気味なほど静まり返った空気が餓狼を迎えた。


「向日葵!」


 声を張り上げて妹の名を呼ぶ。安倍家の男たちの目は本気だった。もし自分への報復として、妹にまで危険が及んだら。


 しばらくはどこか安全な場所にかくまわなければ。


 焦燥感に駆られながら廊下を歩き、妹の姿を探すが、物音ひとつしない。今日は土曜日で学校は休みのはずだ。それなのに、一体どうして――。


 ふと、一階のリビングに足を踏み入れた餓狼は、その場で目を疑った。ローテーブルの上に、場違いな「札束の山」がドンと置かれていたのだ。


「どういうことだ……?」


 恐る恐る近寄ってみると、その札束の下に一枚の書き置きが挟まれていた。


『餓狼へ。少し厄介なことになりそうなので向日葵は安全な所に避難させます。安心してください。あと、このお金は好きに使ってください。 大日』


 それは、父・大日だいにちの筆跡だった。


「どういうことだよ、一体……」


 向日葵が無事であるという安堵と同時に、底知れない疑問が湧き上がる。


 この手紙を読む限り、父はすべてを知っている。安倍鮫肌が殺されたことも、警察が餓狼を疑っていることも、安倍家が怒り心頭で復讐に動いていることも。


 その父が、金とメモ書きだけを残して姿を消した。それは「妹のことはこっちで守るから、お前は自分でどうにかしろ」と言っているように思えた。


「俺を何だと思ってるんだ!」


 あまりにも無茶苦茶で、放任が過ぎる。たしかに頼りにならない父親だと思っているし、普段からそういう態度を出してしまっているかもしれない。それにしたってこの状況をひとりで脱出しろというのは無理がある。


「くそっ!」


 餓狼は舌打ちをしながら札束を一つ手に取り、パラパラとめくってみた。新札が二束、旧札が二束。合計で、四百万円。


「今の状況はそれぐらいヤバいってことか?」


 ここも、いつ敵が踏み込んでくるか分からない。考えるのは後回しだ。今は一秒でも早く、ここを立ち去るべきだ。


 餓狼が手早く四百万円の札束を愛用のボディバッグに詰め込み始めた、その時だった。


(――ん?)


 妙な違和感が、餓狼の動きを止めた。家の外から、地響きのような不穏な重低音が聞こえてくる。


「車のエンジン音か………?」


 背筋が寒くなった。


 直後、餓狼が目撃したのは――凄まじい轟音と共に、一直線に突っ込んできた大型トラックの巨体だった。







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