激突!我が家の晩御飯(easy)
「ドロシー! 突然なのですが、勝負なのです!」
………………。
「なぜ?」
パンを作った後、突然のミラからの申し出に、目が点になった。
私の疑問に対し、ミラは怪しげに笑い、答えてくれる。
「私はこれまでメルルに料理を教わり、シーラさんにもメイドを教わり……そして今日、パンというものを知ったのです!」
うん、そうだね。
ずっと見てたし、食べてるから知ってるよ。
「これほどの料理を知った私は、もはや一人前なのです」
いやそれはどうだろう……。
「地上の食を網羅するのも、時間の問題ではないかと思うのですよ!」
ミラの中の地上、超狭いな!
「なので、1人のメイドとして、ドロシーに料理勝負を申し込むのですよ!」
貴女いつからメイドになったの……。
それに料理勝負て。
「マーメイドだからメイド……」
なんか離れたところで、セニアさんが変なこと呟いてるけど無視。
「姉様なら絶対勝てるよ! いつも料理美味しいもん!」
「そうなのです、シーラさん仕込みのテクニックで、ドロシーよりもみんなを満足させてやるのです!」
テンション高いねキミたち。
そんなに自信あるのかな。
へし折って大丈夫かな……。
せっかく作ってくれてるのに可愛そうだよね。
うーん、困ったなぁ。
「一応聞くけどミラ、なんで勝負なんかしたいの?」
理由を聞いてみた。
「島に来てから、ドロシーには家、料理、魔法……いろんな事を教わったのです」
うん、教えたね。
「いまこそ恩人であり師匠でもあるドロシーに勝利して、立派になったことを証明する時だと思ったのです!」
……それ理由じゃなくて心境だよね?
まぁ別に私より美味しい物作れるなら、それは嬉しい事だけど。
どうしようかな。
材料がある程度揃ってる今なら、私もそれなりの料理が出来る。
横を見ると、心配そうな顔のアザレア。
今まではお魚と塩がメインだったからね。
ちゃんと料理を見せ始めたのは最近だし、ここでカッコイイとこ見せちゃうのもいいかもしれない。
チラッと向こうを見ると、なんだか他人事だと思ってニヤニヤしてるメルルとセニアさん。
イラっとくるねー。
よし、ミラと遊んであげる事にしよう。
「わかったわ。作るのはそれぞれ1品全員分。調理時間は夕食の6時まで。コンロは2つあるから、片方ずつ使うよ」
「その勝負、受けて立つのです!」
いや受けてるの私なんだけど……。
まぁ、楽しそうだしいいか。
「審査するのは私とミラ以外でいいとして、勝った方は何かご褒美あった方がいい?」
「おお、それは本気にならざるを得ないのです」
「おっけー。じゃあ私が勝ったら……私の料理が美味しいと評価したメンバーと私で、ミラを思いっきりコチョコチョしたいかな」
その提案にミラが小さく悲鳴をあげ、顔から血の気が引いた。
「あ、悪魔の所業なのです……。これは負けられない戦いなのです」
震えてるけど大丈夫かな?
「それじゃあ、ミラが勝ったらどうする?」
「シーラさんと同じメイド服というものを所望するのです!」
「……え、メイド服欲しいの?」
「もちろんなのです。一流のメイドになる為なのです」
いやメイド服なら、次回の交易の時にお金出してあげられるけど……ムニエルの貯金、滅茶苦茶多いし。
「えーっと、それでいいの?」
「もちろんなのです。ビシッとドロシーに勝利して、メイドとして認めてもらうのです」
いやまぁ、ミラがいいなら良いけどさ……。
どこから来るんだろう、その自信。
ちゃんとへし折って初心に戻すのも、私の務め……なのかな?
どうか、もう料理はこりごりなのです。とか言い出しませんように……。
さて、ミラはちょっと前から何か作ってるけど、私の料理は決まってる。
まずはジャガイモとニンジンを一口サイズに切って、蓋をしてレンジに投入。
熱を通して柔らかくなったら、付け合わせとしてお皿の上に置いておく。
次にハーブをみじん切り、魚肉を6人分ミンチにして……。
ボウルの中でまぜまぜコネコネ。
6つに分けて、丸めて潰して形は出来た。
フライパンに油を少し引いて、蓋をして魚肉を焼いていく。
裏返して、また焼いていく。
うーん、油の跳ねる良い音がする。
さて、そろそろいいかな。
焼けたお魚をお皿に盛りつけてと。
仕上げはソース作り。
フライパンに残ったお魚の油に、醤油、お酒、お砂糖、おろした生姜を入れて、まぜまぜグツグツ。
軽くアルコールが飛ぶように煮たら、お魚にかけて出来上がりーっと。
「ミラー! こっちは出来たよー」
「むむっ、私ももうちょっとで完成なのですっ」
「じゃあ先にテーブルに持っていっておくね」
パンも一緒にテーブルに置いて、みんなを呼んだ。
少し間を置いて、ミラの料理も運ばれてきたので、夕食タイム。
「ドロシーの料理はまた見たことがないものですわね、ハンバーグに似ていますが」
「お肉は使ってないよねぇ」
サキュバスの2人は、ちゃんとハンバーグを知っているようで良かった。
私の知ってるレシピは、昔に各所で伝えてたこともあって、良い感じに広まってるっぽい。
最近また新しく思い出したのもあるから、作りながらレシピを残していこうかな。
「じゃあ好きなように食べて、後でどっちの方が美味しいか聞くからね」
「絶対私の方が美味しいのです!」
だからその自信はどこからくるの。
そんなミラを横目で見ながら、せっかくなので自分で作った料理を一口。
うん、美味しい。
やっぱり私の料理と、アザレアの育てたハーブの組み合わせは相性抜群ね♡
アザレアも一口食べて、目をキラキラさせている。
「やはり流石ドロシーというべきでしょうか。美味しいですわ。ソースまでオリジナルで作るなど、そうそう出来る事ではありませんわ」
「むっ、私のも美味しいのですよ!?」
メルルが褒めてくれると、ミラが対抗心を燃やす。
ミラってこんな一面があったんだね……。
人と接する事で、本当のミラが目覚めてしまったか……。
さて、そのミラの料理は……魚のグリルバーガーだね。
オーブン使ってたし、先日作ったグリルをミラが作ったって事か。
美味しく出来てるね。
見よう見まねでここまで作ったのと、パンで挟むことを自分で思いついたのは称賛したい。
でも勝負の世界は厳しいのよ?
「これこの前おねーちゃんが作ったやつ?」
「そうなのです。美味しく出来てるのです」
「えっと……」
困った顔で私とミラを交互にみつめるアザレアとルティエ。
「これも勝負なのです。最後にどっちが美味しいと思ったか、正直に選ぶのですよ」
私はそんなミラの横で、うんうんと頷いておいた。
「さて、私もドロシーの料理を食べてみるのです」
なんだか調子に乗ってるし、最近攻撃的だったから、少しいぢめてやろうかな。
「ねぇミラ、この勝負は途中で負けを認めて、中断してもいいの?」
「ん? もちろん駄目なのです。勝負から逃げる事は許されないのです」
「そう、りょーかい」
逃げ道を、ミラの手で破壊させておいた。
あ、セニアさんが吹き出しそうになってる。
ミラが私の料理を食べた。
「………………」
動きが止まった。
顔を見ると、うっすら涙を浮かべている。
みんなが見守る中、震える手で2口目を口へ運ぶ
そして手が止まった。
ゆっくりと、怯えた子犬のような目をしながらこちらを向いた。
「勝負から逃げるのはミラが許さないし、私もどっちが勝つか、分からないわねー」
とりあえず何か言う前に、目線を外しながらブロックしておく。
視界の端で見るミラは、絶望的な顔で震えていた。
結果発表は、ただの死刑宣告のようだった。
「ま、私が教えた料理で、私に勝つなんて絶対無理よね」
「なかなか面白いものが見れましたぁ♪」
「姉様……」
「ごめんなさい……ミラの言う通りにちゃんと選んだせいで……」
「アザレアちゃん、その謝り方は逆に傷つくと思いますわ」
感想と慰めの言葉が飛び交う。
私の重力魔法で浮かんでるミラは、自分でここから動く事は出来ないので、部屋の真ん中で縮こまっている。
「ひぐっ…えぐっ……」
泣いてるけど、これも調子に乗ったミラが選んだ結果だ。
最近の恨み、乳脂肪分への報いと共に、修行不足という事をしっかりと体に教え込んであげよう。
「アザレア、ルティエ。私をくすぐった時のように伸ばしてちょうだい」
『はーい!』
指令を出すと、アザレアは両腕から上半身に蔓で巻き付き、ルティエは下半身に触手で絡みつく。
「これだけで素晴らしい絵面ですわ……じゅるり」
「~~~~~~~!!」
声にならない悲鳴を上げるミラ。
「こらこら、せめてそのイヤらしい目つきは……いや、まぁいいか。この子達の悪影響になる事だけはやめてよね」
サキュバス2人にクギを挿しておく。
さて、私達5人からの罰ゲーム開始だ!
「調子に乗って!ごめ゛んなざいなのですぅ~!!」
その夜、無人島にはミラの笑い声が長い間響き渡った。
魚のなめろうハンバーグ、いいですよねー
ムニエルのせいで調味料とか一気に増えてるので献立に迷います←




