魔女のお料理教室
午後はミラに料理を教える時間。
アザレアとルティエも興味津々。
メルルとセニアさんはリビングで作業しながら、遠目からでも見たいらしい。
いいけどケガしないようにね?
「最初は簡単なビスケットから教えるよ。用意するのは小麦粉、砂糖、塩、水」
混ぜて形を作るだけなので、3人に作ってもらうことにした。
料理慣れしているミラが先に終わったので、オーブンの使い方を教えておく。
いい感じに温まった頃、アザレアとルティエもビスケット生地を作り終えた。
……ルティエのは、なかなか個性的だね。
「よし、焼いていくよー。ミラ、オーブンに入れてから20分ね」
「了解なのです!」
サイズや厚さで時間を調整するんだけど、これは要研究。
料理本にも載ってると思うけど、見つけてないし。
今は私の知ってるレシピを教えてるだけだからね。
「自分で作ったのは、自分で食べていいからね。あと、オーブンは熱くて危ないから、アザレアとルティエは勝手に触らないこと」
『はーい。』
「思ってたよりずっと簡単だったのです。お菓子作りって手軽なのですね」
「ビスケットが特別簡単なだけよ。材料があれば難しいレシピなんて沢山あるよ」
教える事を考えると、料理の本は早く目を通しておいた方がいい気がする。
魔法の練習見ながら読書が、一番理想かもしれない。
私、結構世間知らずだし……。
「それと、ビスケットはアレンジできるからね。ハーブを練りこんだり、形を変えて膨らませたり、ビスケットで何かを挟んで食べたり……」
「おぉー、それは楽しそうなのです」
話し込んでると、そろそろ焼き上がる頃合い。
「上手く焼けてるといいね」
「…………」
おおぅ、オーブンにかじりついてる。
「ほら、そんなに近づくと危ないよ。今回は私が取り出すね」
ビィー
「わっ! なんか音がした!」
3人とも突然の音にビックリしてのけぞった。
……アザレアの根にちょっと足踏まれた。
小指だからちょっと痛い。
「なんの音なのです!?」
雷と風の魔法を応用して、タイマーダイヤルが戻り切ったらブザーを鳴らすようにしたからね。
この仕組み作るのは苦労したわ。
それを簡単に説明して、タオルを使って中からビスケットを取り出した。
「わー、いい匂い」
「お腹すいてきたよ~」
こらこらさっき食べたでしょ、食べるけど。
3人のビスケットをそれぞれお皿に分けて、テーブルで試食タイム。
メルルとセニアさんも呼……ぶ前にやってきた。
「ふふっ、ルティエちゃんは初料理ですわね」
「みんな違う形なのねぇ」
ミラはオーソドックスな小さい円形を沢山作った。
アザレアは単純に大きい円形なのが4つ……手より大きいから歪だけど。
そしてルティエは細長い、蛇みたいなのが1つ。
見た感じちゃんと焼けてる。
「さ、食べてみましょ」
「あーっ!!」
突然のルティエの叫び。
その理由は……
「持ち上げたら折れちゃった……」
「あはは……」
細長いのを急に持ち上げたんだね。
長いビスケットは工夫が必要だからねー。
「ルティエ、今度は折れない形にするのです」
「うん……」
残念だけど、美味しいといいね。
「アザレアはどう? 美味しい?」
「ムグムグ……うん、甘くて美味しいよ」
「そう? 1つ食べていい?」
「うん、はいおねーちゃん、あーん」
おっとぉ、まさかのあーん攻撃。
「あー…むっ」
もぐもぐ
……滅茶苦茶甘い。
美味しいけどまさか……。
「アザレア、もしかして蜜を?」
「う、うん。いつの間にか出ちゃってた……。駄目だった?」
そういえば蔓使ってこねてたね。
美味しくしたくて漏れちゃったのかな?
「駄目じゃないよ、ビックリしただけ。アザレアが生地こねると甘くなるんだねー」
これは結果オーライね。
アザレアの頭を撫でて褒めておいた。
「う~、なんかボロボロになる~……」
ルティエは水分不足かな?
最初だから仕方ないね。
「練習したらちゃんと出来るようになるのです。今度一緒に練習するのですよ」
「うぅ……」
食べてみたけど味は普通だった。
慣れるしかないけど、そこはミラに任せておこう。
「ほら、ルーちゃん。これあげるから次がんばろ?」
「うん、ありがと……」
アザレアが作ったビスケットをあげて、慰めてあげてた。
はぁ、尊い……。
「ミラのビスケットはどんな感じ?」
「ザ・普通なのです」
自分で言うか。
「ドロシーが作ったビスケットとあまり変わらないですわ」
「うん、普通に美味しいですよぉ」
なるほど基本に忠実だね。
「一口サイズなのも食べやすいし、ミラはもう大丈夫だね」
「ありがたいお言葉なのです!」
「気が向いたら時々作ってね。蓋して保存すれば数日はもつから」
「お任せあれなのです!」
「姉様、わちしも手伝うー!」
これでおやつの心配は無くなった。
でも作り過ぎと食べすぎに気を付けよう……。
「さぁ、少し小麦粉の使い方をかじったところで、パンを作ってみるよ!」
「はいですっ!」
今回作業するのはミラだけ。
まぁ仕上げだけ、1個ずつアザレアとルティエにも作らせてあげよう。
「さっきと違ってネバネバするのです」
「ビスケットと違って水は多くしてるし、酵母も入れてるからね、そう感じるかも」
小麦粉その他と水は、大体3:2の比率。
パン屋で働いた経験とかは無いから、細かい事は知らないっ。
まぁ今度ミラと一緒にレシピ本漁りだね。
一緒にパンをこねていく。
粘り気を残しつつ丸く整えて、ボウルにそれぞれ入れて、濡れタオルを被せる。
「オーブンをちょっとだけ温めて、この生地を中に入れてしばらく放置するよ」
「放置するのです? 不思議な工程なのです」
「こうすると生地が膨らんで、柔らかくなるからね」
私は菌の専門家じゃないから、これ以上の事はよく分からない。
こうすれば美味しくなるって覚えておくだけで、なんとかなるからね。
まずはミラの生地をオーブンに放置。
しばらく雑談した後、パンを取り出した。
「わぁ、大きくなってるのです!」
入れ替わりで私の生地を入れて、ミラの生地はテーブルに持って行って成形していく。
「とりあえず練習だから、お昼のパンみたいな形でいい?」
「それでいいのです」
生地をちぎって、丸く成形。
うん、簡単。
手本を見せたら後はミラに任せ、2個分をちぎってアザレアとルティエに渡す。
「好きな形にしていいよ。でも、強くしたら失敗するからね?」
「わーい!」
「ありがとー!」
やっぱり作りたかったんだね。
しばらくしてミラの成形作業も終わり、私の生地もいい感じの発酵具合になった。
オーブンを温めて、パンを入れると……ミラがオーブンから離れなくなってしまった。
「見ていたいのです」
あー、うん、気持ちは分かるよ。
「色が茶色になったら出来上がり。焦げないように見てるといいよ」
焼いている間に、私のパンを進めよう。
まずは叩いて少しガス抜き。
小さくちぎって並べていく。
全部並べたら、濡れタオルを被せる。
これで上手くいくか確信持てないから、半分だけかけてみる。
かけてない方を成形していこう。
スティックパン、ロールパン、コッペパン。
簡単なパンの種類を作っていく。
「いろんな形のパンだね」
「おねーちゃんすごーい」
なんだか褒められた。
タオルをかけた方も成形しようとすると、
「焼けたのです!」
たしかにいい匂いがする。
ミラがオーブンを開けると、いい匂いが一気に広がった。
濡れタオルを使って、上手くパンを調理台へと移動させるミラ。
壁を尾ヒレで蹴って(?)方向転換とは、やるね。
ミラのパンを1つちぎって、みんなで試食。
『おいしー♪』
ミラって料理の才能すごいねぇ。
このまま何度か作ったら、すごく美味しいパンが作れるかもしれない。
貰ったレシピ本にパンの美味しい作り方がある筈だからと、ミラには読書を勧めておいた。
材料の事は私とメルルとセニアさんでフォロー出来るしね。
食べてる間に休ませていた生地を、同じパンに成形していく。
たしか二次発酵ってこの後だっけ?
容器も無いし、ちゃんと本で調べてから挑戦しよう。
「さて、私のも焼くよー。上手くいくといいねぇ」
「どんなパンなのか楽しみなのです」
「おねーちゃんのパン、おねーちゃんのパン♪」
いやそんなに期待されても、省略部分あるからどうなるか分からないよ?
しばらくして焼き上がり、取り出すと……
「うん、見た目はまぁまぁかな?」
試しにコッペパンを切って、みんなで試食タイム。
「おいしー」
「これも美味しいね!」
「さすがなのです」
好評だった。
しかし……
「あら、美味しいのは違いないですが、少し違う感じがしませんこと?」
「そういえばぁお昼の時もぉ、美味しい中にぃちょ~っと違和感あったんですけどぉ、きっとぉ二次発酵してないんですねぇ」
おやおや?
パン作りを見てない2人が違う反応してるね。
「2人とも分かるの?」
「いつも食べていたパンとは少し違う感じがしますの」
「ボクはパン屋さんでぇ、働いてたことがあるのですよぉ」
セニアさん……それお昼の時に知りたかったよ……。
私はがっくりと、肩を落とした。
「ど●ぶつの森」や「のん●んび●り」ばりの急展開をひねり出したいけど、ものすごく難しいデス




