EP 8
聖獣合体!【聖獣機神ガオガオン】顕現!
ズガァァァァンッ!!
荒野のど真ん中で、激しい金属音と爆炎が巻き上がった。
先陣を切って突っ込んだ体長2メートルのガオンが、魔将機の分厚い装甲を右前脚で引き裂き、左前脚から放った魔力弾で後続を吹き飛ばす。
「キャルル、闘気入力タイミング完璧だ! ルナ、魔力チャージをあと0.2秒遅らせろ、オーバーキルで無駄撃ちになってる!」
「了解! もっと顎を正確に狙うわ!」
「ごめんなさいエンジニア様! ついお庭(村)を綺麗にしようと力が入ってしまって……!」
マルチシートに座るヒロインたちの力と、俺のAI的演算サポートを受けたガオンの機動力は凄まじかった。瞬く間に5機の魔将機をスクラップに変える。
だが——。
『警告(WARNING)! 敵部隊、包囲陣形へ移行。後続95機、一斉射撃の魔力チャージを確認!』
視界のARグラスが、絶望的な赤いアラートで埋め尽くされる。
全高5メートルの古代兵器たちが、無感情な赤黒い瞳を一斉にこちらへ向け、腕の魔力砲にドス黒い瘴気を収束させ始めたのだ。さらにその後方には、ひときわ巨大な全高20メートルクラスの『重装魔将機』が、地響きを立てて迫ってきている。
「チィッ……! さすがに2メートルのハードウェアじゃ、処理領域の限界だ。手数と質量で押し潰される!」
『マスター! 雑魚の群れとはいえ、あの飽和攻撃をまともに受ければ、我が装甲とて保たんぞ!』
ガオンの焦るような声。
だが、俺の口角は自然と吊り上がっていた。
「なら、ハードウェア(機体)の規格そのものをスケールアップさせるまでだ。……ガオン、お前の本来の姿を取り戻すぞ。全システムのルート権限を俺に渡せ!!」
『フハハハッ! 待っていたぞマスター! 貴様のその狂った演算能力なら、我の神聖なる封印を解き放てると信じていた!』
俺はメインコンソールの安全装置を物理的に叩き割り、極秘裏にコーディングしておいた『最終展開プログラム』を起動した。
「四神システム、ブートシークエンス開始!! 空間座標リンク、魔力回路全開!!」
俺の叫びと共に、ガオンの胸部から黄金の光柱が天高く打ち上がった。
その光は天空の雲を吹き飛ばし、空間そのものを歪ませていく。
「な、なによこれ!? シートがせり上がっていくわ!」
「わぁっ、外の景色がどんどん下になっていきますわ♪」
ガオンのボディが幾何学的なパーツへと分解・再構築され、俺たちを乗せたコックピットが遥か上空へとリフトアップしていく。
「集え、世界の理を司る四神のパーツ(サブモジュール)よ! 聖獣合体!!」
俺がエンターキーを強く叩き込んだ瞬間、四方の空から巨大な流星が飛来した。
『右腕武装・白虎、接続!』
天空から飛来した白き鋼の虎が、巨大な右腕と化してガオンの右肩にガシャンッ! と合体する。
『左腕武装・青龍、接続!』
海を割って現れた青き鋼の龍が、長大な砲身を備えた左腕となり、左肩へ合体する。
『脚部・玄武(ゲンブ・レッグ&シールド)、接続!』
大地を割ってせり出した黒き鋼の亀甲が、圧倒的な質量を持つ下半身と絶対防壁を形成し、ガオンのコアをガッチリと支える。
『背部・朱雀、接続!』
最後に、真紅の炎を纏った巨大な鋼の翼が背中にドッキングし、機体全体に莫大なエネルギーを送り込んだ。
バキィィィィンッ!!
四神の全パーツが完全に同期し、強烈な魔力の波動が周囲の魔将機たちを数メートル後方へ吹き飛ばす。
砂煙が晴れた後にそびえ立っていたのは——ガオンをメインコアとし、四神の意匠を全身に纏った、全高25メートルの巨大メカニカル神だった。
「システム・オールグリーン! 顕現せよ、【聖獣機神ガオガオン】!!」
俺がタイトルコールのように叫ぶと、ガオガオンの胸部に位置する黄金の獅子の顔が、天を震わせる咆哮を上げた。
ガァァァァァァァッ!!!
先ほどまで見上げていた5メートルの魔将機たちが、今はまるで子供のオモチャのように足元に転がっている。対等な目線にいるのは、敵のボスである20メートル級の重装魔将機のみだ。
「す、すごい……! これならいけるわ、玲王!」キャルルが白虎シートで拳を握りしめる。
「とっても見晴らしが良いですわね♪」ルナが青龍シートで優雅に微笑む。
だが、巨大化の代償はすぐにシステムに異常をきたした。
『警告(WARNING)。魔力消費率、想定の3000%。各シートの同期率が低下しています。このままでは機体が自壊します』
「くそっ、やっぱり25メートルの神体を稼働させるには、ネットワークの同期に負荷がかかりすぎるか……!」
俺が必死にキーボードを叩いて負荷を分散させようとした時、後方の支援シートから、ドンッ! と勢いよく立ち上がる影があった。
「エンジニア様!! 今こそ私の出番ですぅ!!」
人魚姫、リーザ。
いつものパンの耳をかじる情けない姿はそこにはない。鼻の五円玉も外している。
彼女の身体から、神々しいまでのオーラが溢れ出し、コックピット内を海の底のように神秘的な光で満たしていった。
「システム負荷の分散も、魔力の同期も、ぜーんぶ私の『歌』で繋げてみせます!……みんな、私のステージ(配信)を最後まで見届けてね!!」
リーザが特設マイクを両手でギュッと握りしめる。
圧倒的な物量を誇る100機の軍団を前に、絶対無敵の地下アイドルの、真のライブが今、幕を開けようとしていた。




