第3話 音速の使者
これはほんの数ヶ月前の出来事である、薄暗い実験施設のような部屋にて資料が乱雑に置かれた机にカメラを構えその前に一人の髪の長い少女が立っていた、少女は再生ボタンを押すと話を始めた。
「こんにちは、このビデオがあなたに無事届いている事を願って超能力者による一連の事件についての真相について話そうと思います。時間がないからさっそく結論から言わせてもらうと超能力者が生まれてしまった一連の現象の原因は全て"姫の花"にあるの。姫の花とは政府直属に抜擢され秘密裏に結成されたある分野の優秀な研究者達の手によって作られた装置です。ただ私は姫の花の開発チームの参加者じゃないからその装置の詳細については詳しくわからない。だけどこれは確信して言えます、その装置のせいでこの世の中に超能力者と呼ばれる存在が現れたのは事実なの。漠然とした話な上に私の手元にそれ裏付ける証拠がないから信じてもらえないかもしれないけど、もし少しでも超能力者達による事件を完全な解決に導きたくて方法が分からずに行き詰まっているのなら、山梨県にある姫花という街をあなたに調査してほしい。姫の花はその街にある。私もこれから向かうところです。ただもしも私の身に何かがあった時は私の代わりによろしくお願いします、足利流星さん。あなたの正体は知っています、だからこそこれをあなたに……ごめんなさい。もう時間が来たみたい。突然こんなビデオを送って申し訳ないけど、あなたを信じています。それでは………」
少女はカメラを切るとそれを持って何かから逃げるようにその場を走り去っていった。
時は四月に戻る。足利が池上透という男に送り込まれたと思われる刺客との死闘を終えた次の日の朝である。制服に着替え足利が作った朝食を食べ終わったおせちが高校へ向かうところだった。
「本当に…行くのか?」
足利はおせちに訊く。
「うんっ、そんなに心配しなくても大丈夫だって。私にはあのバリアの能力があるもん。昨日だって危機を察知して問題なく自動で発動したんだよ?」
おせちはそう言ってウインクしながら力強くガッツポーズをして見せる。
「それは…確かにそうだが……」
昨日めちゃくちゃ震えながら地面に座り込んでいたとおせちを保護した警官に伝えられた事を足利は思い出す。
「長島さんだって家で一人でいるよりは一目に着くとこにいた方が安全だって言ってたんでしょ?」
「まあ…わかった、車に気をつけて行くんだぞ。そして何かあったらすぐ俺に連絡するんだ。」
足利はおせちの学校に行きたいという気持ちを尊重する事にした。
「はぁーいっ」
おせちは玄関から元気よく外へ出ていった。
「どうせ殺しにくるのならどこにいても一緒だ、それにあの能力ならきっと大丈夫だ……」
足利は少し切ない表情をした。
おせちは品野扇と箱根翔子という二人のクラスメイトととても仲が良いらしく会うのがどうやら毎日楽しみらしい。
足利は朝ご飯を作るために着けていたエプロンを外すと窓の外を眺めた。事務所周辺は普通の住宅街のため2階の窓からでは雑多に並ぶ住宅と奥の山しか見えない。足利はその景色を見て少し考え事をする。
「以前"彼女が記憶を失う直前に俺の元に送ってきたビデオ"で言っていた"姫の花"と呼ばれる装置…この姫花を中心として超能力犯罪の事例がここ最近増えていた事や長島さんの調査資料に"姫の花"という謎の単語があった事から俺はそれを信じてこの街に来た…彼女の言葉を疑っていたわけではないが、この2年社会との接触を避けていた池上が直接刺客を送り込んできたという事は本当に姫の花と呼ばれるものがあるという事なんだろう。俺にはそれがどういう代物なのか検討も付かないが……」
そう、足利がこの姫花という街に来た理由はまさに"姫の花"と呼ばれる"超能力者を生み出す源"と思われる装置を探すためである。探偵である足利は直接姫花を調査、そして足利が時折連絡を取っている警視庁に所属している刑事、長島は政府の内部データを調査と超能力犯罪を止める手がかりを探るべく二手に分かれてこの姫花を調査しているのである。
超能力者の存在が世間的に初めて確認されたのは今から約2年前、それを皮切りに次々と日本で超能力を高い犯罪をする人間が急激に増えたのである。足利達は超能力者が唐突に姿を表したのには何か原因があると睨んでいる。
この日本の社会に影響を及ぼしている"超能力者"が一体どういう存在なのか、ここにて少し掘り下げてみるとしよう。
ここでの超能力者とはもちろん従来で定義されている通り特殊能力を持っている存在であるがそれに加えある共通した特徴があるのだ。
まず一つ目は超能力は一人一つしか使えないという事。
二つ目はその能力は本人の願いや欲望が大きく反映されているという事。
三つ目は超能力には必ず発動条件、および能力を使う際のデメリットがあるという事。
一つ例を出して説明すると以前足利と戦った板下という脱獄犯、彼の超能は半径数十メートル以内にある液体を自由自在に操るという能力である。この能力は彼の衝動的な殺人欲求によって発現した能力なのだ。液体はとても身近にあるため殺人の凶器するにはうってつけである。しかし彼の能力にもデメリットはある、ご存知の通り彼の能力は周辺の液体なら雨水でもガソリンでもなんでも操る事が出来るが人や生き物の体内の水分などを操る事が不可能なのである。人を殺すための能力であるが肝心の人の体内の血液などの液体は操れないという致命的なデメリットなのだ。
このように超能力は厄介な力だがそれと共にデメリットがあるため足利はそのデメリットを見極めるという方法で超能力を攻略するという戦法を取っているのだ。
足利は超能力事件を2年ほど追っているため戦闘慣れはある程度しているのである。
そして最後に足利の超回復能力は超能力者達の能力とは異質の力であるため能力発動の際のデメリットは存在しない。
超能力の詳細の説明はここまで、これから彼らにどんな運命が待ち受けているのか、彼らの過去に一体何があったのか、隠された真実とは一体何か。ここから先は是非、君の目で確かめていただきたい。
足利が窓の外を眺めていると足利の携帯電話から流れる着信音が事務所内に響き始めた。
足利は電話に出る。
「もしもし、流星くん?」
「足利です。」
「僕の方でも出来る範囲で姫花という街について調べていたんだけどね、すごく気になる事がわかったんだ。」
「何かわかったんですか?」
「…その事なんだけどね、僕が直接君のところへ行ってじっくり話したいんだ。」
「え?いやそれは危険です!」
「池上は君とおせちちゃんの命を直接狙っているんだろう、だったら君達だけを危険に晒すことは出来ないよ。」
「ですが…」
「それに、電話じゃとても話せないだろ、"アレ"については。」
「でもあなたが俺と協力している事をヤツに知られればあなたも狙われる!」
「安心して、ちゃんと手は考えてあるから。ヤツの残党も警視庁内部に残っているだろうしコソコソしてても時間の問題だよ。」
「それでも危険すぎます!!」
「それは君も一緒だよ。だからこそ僕は君と危険を背負いたい。それに僕が君と会っただけで僕が狙われたら君が監視されてるかどうかがわかるしね。」
「………あなたがそこまで言うのなら、わかりました。気を使わせてしまい申し訳ありません。」
「謝らないでよ、むしろ謝らなきゃいけないのは僕の方だ。君にばかり戦わせて申し訳ない。」
「いえ…俺のこの力はきっとヤツらに対抗するために与えられた力です。俺は大丈夫です。」
二人共数秒間沈黙したままだった、超能力事件を解決すべく協力を続けている二人もやはり不安があるのだ。
しばらくすると長島の方から沈黙を切った。
「…それじゃあ明後日の土曜日、朝から9時にそっちに行こうと思うんだけどどうかな?」
「大丈夫です。」
「じゃあ土曜日に行くね。」
「よろしくお願いします。」
「…何かあったらすぐ僕に連絡するんだよ。」
「わかりました。」
「それじゃあまた土曜日に。」
「はい。」
二人は通話を終えた。
足利は数秒だけ建物の立ち並ぶ景色の上方を見上げた。
この時、足利の脳裏に浮かんだのは彼にとって遠いようで近い記憶、2年前のある大雨の日に観た光景。
日の光を全く感じることのできないほどに黒い雨雲が空を覆い、それに加えあまりの降水量で街は灰色に染まっていた昼下がりとも思えぬ全く明るさを感じない東京の街中で、足利は雷なのかモヤなのか正体の掴めない光が地面から飛び上がって行くのを観た。その光の柱の先は花のような形をしていた。その日の出来事とあまりに異様な光景が重なり足利はこの日の事を今でも鮮明に覚えている。
その時に観た花の様なものと姫の花という装置の名前に繋がりを感じたのも足利がこの街に調査に来た要因である。
足利は家事を簡単に済ませ安っぽいコートを着ると事務所を出て仕事へ向かった。
それから数分後、おせちは何事もなく姫花高校へ到着。教室にはおせちの友人である品野扇と箱根翔子の姿があった。
「あ、おせちちゃんおはよ〜」
裁縫をしながらおせちに目を向けた箱根は気だるげにそう言った。
「おはよう、柿原。」
品野は明るい笑顔でおせちを迎えた。
「おせちちゃん、昨日は大丈夫だった…?なんかめっちゃ大変になってたって聞いたんだけどぉ…」
「え?大丈夫大丈夫!何もないよ!!」
「ん?何かあったの?」
「えと…おせちちゃんがねっ、なんだっけ。ダンプに撥ねられたの。」
「はぁ…?」
品野は呆然とした。
「ダンプじゃなくてトラックだよ。」
おせちは訂正した。
「めっちゃオオゴトじゃん。」
「怪我してない…?」
箱根はとても心配そうな顔でおせちの目を見る。
「だから大丈夫だって、あはは。」
「トラックに撥ねられた割には元気だな。」
「だって私大丈夫だもん。」
「あんまり大丈夫って連呼されると逆に怪しいな…」
品野が困惑している間に箱根は裁縫を終わらせた。
「元気かどうか怪しいおせちちゃんのためにぃ、じゃんっ。」
箱根は小さなクッションのような感触の物をおせちに手渡した。
おせちが手のひらのものをよく見るとそれは黄色い観音のぬいぐるみだった、頭に紐がついていてストラップになっている。クオリティが高くそれゆえに観音特有の不気味さを際立てていた。
「こ、これは…?」
「あたしの手作りお守りだよっ。」
「えへへ…あ、ありがとう。」
おせちは少し動揺したが笑顔で礼を言った。
「おいなんだそれ。」
大久保の親友の男、伊豆博幸が覗き込んでいた。
「わっ」
おせちは軽く驚いた。
「なにそれ。」
伊豆はもう一度聞いた。
「………」
箱根はおせちと品野以外と話すのに慣れていないため目を泳がせながら黙っていた。
「お前こそなんだっての。」
品野が軽くつっこんだ。
「あ、あの…」
「柿原!!」
教室に入るなり大久保が大声でおせちに声をかけた。
「お前、学校に来て平気なのかよ!?」
「へ、平気平気、むしろ来た方がまだいいくらいだよ。」
「でも昨日あんなに怯えてたじゃんか!!」
「いーーーーーッッ!!!」
おせちは急に眉にシワを寄せる。
「あんまり言わないで!!恥ずかしい!!!」
「大久保てめえ何かしたのか?」
品野は問い詰める。
「昨日こいつ大変だったんだよ!!トラックに急に襲われて地面に座り込んでめっちゃ怯えて!!」
「もうその話はいいから!!私大丈夫だから!!」
「でもあんま無理すんなよ?体より精神の方が傷つきやすいもんだ。誰だってあんな目に遭えば…」
「その話はいいって!もうやめてえ!!」
おせちとしては怯え切っていた事を掘り下げられる事が恥ずかしくとても蒸し返されたくなかったのだ。
この状況において大久保の心配は実に空回りしていた。
「朝から賑やかだな。」
今度は大久保達の担任、風音が入ってきた。
「あれ、大久保今日は早いな。」
「だから柿原が昨日大変だったんですよ!!」
「大久保くん!!!」
「…ごめん。」
流石に察した。
「大丈夫だよっ、おせちちゃんにはあたしの手作りお守りがあるからねっ。」
箱根はおせちに持たせた観音ストラップを包み込ませらようにおせちの右手を両手で握り、笑顔でそう言った。
「あっ、つっ…………」
そんな彼らの会話をいつのまにか忘れられていた伊豆は数歩離れた先から眺めているのであった。
それから時が経ち、昼下がりの警視庁にて。
「またですよ長島さん、これで20件目です。」
「またも身元不明の遺体か…」
「おかしいですよね、免許証や自宅の表札にはちゃんと名前があるのに住民登録がされていない。それで最初の遺体発見からたった7時間で40件も似たような状況の遺体が現れるのんて…それに発見した地域もバラバラです、こんなに広範囲で…」
「…やはりこれはかなりまずいかもしれないね。」
長島は周りの人間が誰も2人の会話を聞いていない事を確認すると、部下の後岩にじっと目を合わせた。
「まさか…池上透の手先…ですか。」
「うん、あくまで推測だけど、あの男が首相だった時に裏で何かをさせられていた人達という可能性が高い。証拠を流さないために権力を使って身元などの証拠、痕跡を隠滅している。」
「表社会から追放されてもまだあの男は裏で影響力を持っているということですか…」
「うん…」
「あ、それともう一つおかしな事があるんですよ。」
後岩は長島に資料を見せた。
「なんだこれは。」
「殺人現場の周辺で車の盗難に関する通報が相次いでいるんです、それも何十件も。」
「車の盗難…」
「この事件、本当におかしいですよ。7時間の間に別々の場所にいた40人を殺した上、車を何十台…いや、情報が来てないだけで100台以上は盗まれているのかも。こんな大それた犯行をしているのにそれらしい集団は目撃すらされていない。」
「はぁ…」
長島は少し俯いた。
「やっぱり今回も、犯人は超能力者のようだね…」
また場所は変わり、日本のどこかにあると思われる施設内、高級な椅子に座った池上透と思わしき人物とその前に若い派手な格好の男が立っていた。
その男はテカテカとした光沢感のあるジャケット、全身にはトゲのついたようなアクセサリーを身につけている。髪型は銀髪で首元まで髪を伸ばし前髪は完全に分けている。
「ご苦労。」
池上透はただそう言った。
「…もうこれで終わりか?」
「ん?」
「なんの抵抗もできない雑魚を殺すだけで仕事は終わりなのか?」
「その通りだ。なぁに安心しなさい、君が殺したという痕跡や目撃情報は全て私が揉み消す。」
「そういう話をしてるんじゃねぇ…つまんねーんだよ!!俺はもっと殺しがいのある、簡単に死なないような手応えのあるヤツをぶっ殺してぇ。それになぁ、俺の音速の世界には誰も追いつけねえ、あんたが証拠を揉み消す必要なんかさらさらないんだよ。」
「悪いが刺激を求めているのなら他を当たってくれ、報酬分はすでに払った、君の生活水準でもしばらくは好きに遊んでいられるはずだ。それで十分だろう。」
「足利。」
「…」
「足利流星、そいつの殺しは俺には頼まないのか。」
「君とは縁のない人物だ。」
「聞く話によっちゃ、そいつの超能力は不死身らしいじゃねぇか。」
「君の力は確かに強力。いや、君は最強の力を持っているといっても過言ではない。しかし君の能力では足利の反撃をねじ伏せる事ができても殺す事まではできないだろう。」
「ほーお、言うじゃねえか。」
「そんなに彼を殺したいのなら行けばいいだろう、わざわざ私が雇う必要はない。」
「それじゃつまんねーんだよ、殺す事が難しい賞金首を殺して誰よりも大金を得る、殺しも楽しむ、それが俺の快感なんだ。じゃねぇとこんな力を手に入れた意味もなくなっちまうだろう。」
「なんとも傲慢だね君は、自分が満足するためだけに他人を巻き込むのは悪い癖だ。」
「あんたの方こそなぜ俺にヤツの殺しを依頼する事をそこまで拒むんだ?」
「……、わかったいいだろう。」
「お?」
「後払いだ、足利流星の首を持ってきたら、先程の報酬分の倍をやろう。」
「っし!決まりだ!!」
派手な男はガッツポーズをした。
「今の話、忘れんじゃねーぞ。」
「嘘はつかないさ。」
「…」
「行ったか…」
すると池上の横に立っていた秘書は不安げな表情をする。
「本当によかったのですか?あんな約束…」
「そうだなぁ、もう彼は2度としてここに来る事はないだろうからなぁ。」
「は、はぁ…」
仕事を終えた足利はバイクで自宅へと向かって住宅街近くを走行ところだった。
時刻は夜の11時を回った頃、太陽は見る影もない真っ黒な空はオフィス街の光で照らされていた。
足利は昼下がりにまた長島から電話が来た事を思い出す。
「身元不明の遺体が40件も見つかっている、ただ身元不明というわけじゃない、顔も名前もわかっているのに身元がわからないんだ。この状況っておせちちゃんが保護されたあの時と似てると思わないかい?きっと…」
「国家直属研究機関のメンバーですね…」
足利はこの頃すぐにおせちに同じ話を電話でした、それでも彼女は私の能力なら大丈夫だという。
足利は夜風に吹かれながら考える。
「"最初の超能力者"が現れて2年、未だに超能力発生の原因は掴めず超能力犯罪はあとを絶たない。解決の目処も立っていない。唯一のヒントはおせちが記憶を失う以前のビデオメッセージと池上の不可解な行動くらいだ。この虚しい戦いはいつまで続くのだろう。」
しばらくすると姫花の都心部、オフィス街の方がなにやら騒がしいことに気がつく。
「なんだ…!?」
騒ぎの方に顔を向けると、街の一部が炎上していた。
「これは…!?」
さっきまで白く淡い光に包まれていた空が、獄炎の橙色に染まり始めていた。
人の叫び声や車のクラクション、他にも様々な雑音が入り混じっていて何の音か認識できないほどに街は大パニックに陥っていた、それは遠くからでも分かる様子だった。
そしてその街のパニックをさらに後押しするように空に一台のヘリがバタバタとプロペラの音を立てている。
「クソォッッ」
足利がハンドルを握るとスマホに電話がかかってきた。
姫花警察署に勤める草木からの電話だった。
「足利さん!!!」
「何があったんですか!?!?」
「それが僕もよくわからないんです!!」
「ええ!?」
「なんか、真っ赤でだっさいジャケット着た男が暴れわってるとかなんとか!!」
「そ、そいつ1人が暴れてるんですか?」
「どうやらそうみたいです!!」
「そんなバカな…!!」
「超能力者ですよ!また!!」
「それはわかってます!!でも一瞬にして街を大炎上させるような、それも1人でこんなパニックを巻き起こす超能力者なんて……いや……」
足利の心の奥の嫌な記憶がフラッシュバックする。
「…池上茂夫………」
「え??なんて???」
「…いや、なんでもありません。とにかく向かいます!!!」
「お願いします!!!」
足利は電話を切った。
「クソッ…!!なんで…どうしていつもこんな…!!」
足利が全力で向かおうとすると、足利の耳になにかイヤな音がどんどん大きく聞こえてきた。
「ッッッッッッ!?!?!?」
顔を上げると先程飛んでいたヘリコプターが火を吹き足利の頭上目掛けてものすごいスピードで突っ込んできたのだ。
「くっ…間に合わない…!!!」
方向転換する間もなく、足利はバイクを乗り捨てて後方へ飛び込んだ。
すると地面と建物に激突したヘリコプターは大爆発、今まで聞いたこともないような爆音が足利の鼓膜を襲う。
「ッッ…!!な、なんだ!!??」
足利はあまりに突然の出来事に動揺する。
しばらくするとヘリコプターからなにやら男のようなシルエットが姿を表し足を地面につける、
それと同時に炎上したヘリの火が足利のバイクに燃え移り、足利のバイクも爆発してしまう。
男の影は消えた。
「っ……………!!」
「フフーーッハッハッハッハッ」
業火の向こうから男の高笑いが聞こえてきた、
足利は身構える。
するといつの間にかヘリの上に若い派手かつダサい格好の男が立っている事に足利は気がつく。
足利からは格好や髪型のセンスの悪さはシルエットからはわかるがあまりの炎上に顔をよく確認する事ができない。
「よお、お前が足利流星か?」
「だったらなんだ!?」
「ふーん、見てくれは思ったより貧相だな。」
「きっ…お前はなんだ!!何が目的なんだ!!」
「俺が何か?ふっ、お前くらいの人間なら俺の名を一度は耳にした事あるんじゃねぇかな…?」
「…………………」
派手な男がいかにも名乗ろうとしている中、足利は男から視線を離さずにかがみ込み投げつける石を手で探る。
「石裂 威吹、すなわち…」
「なに…ッ!?」
男はいつのまにか足利の背後に立っていた。
「ソニックブーム」
「うおおおおおおおおおおおお!!!!!」
足利は構わず両手で激しくパンチを連打。
「おっと」
男はまたも一瞬で90°別の方向へと避けた。
「………」
足利はソニックブームと名乗る男を男を漆黒の眼光で鋭く睨みつける。
「なかなかいいもん持ってんじゃん、素人にしては。これは少し期待できそうだな。」
「…………」
足利は何も言わずに睨み続ける。
石裂威吹、地下ボクシング界のチャンピオンであり、いわゆる裏社会で有名な人間。その素早い音速を超えるパンチを放つ事から"ソニックブーム"というあだ名で呼ばれている。
2年以上超能力事件を追い続け、その真相を突き止めるために裏社会の事情もある程度調べていた足利はその名を知っていた。
だがしかし、関係のない人々を襲い続ける者への怒りにより、足利にとってそんな話は関係がなかった。




