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姫の花  作者: トムとゼリーwith五目御飯


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26/30

第26話

挿絵(By みてみん)


⚠︎【注意】⚠︎


もしここまでで見逃した回がある場合は、読み残しを無くしてからこの回を読むことをお勧めいたします。

この回は作中最大のネタバレなので先に読んじゃうとこれまでの回が楽しさ半減になってしまうのでご注意ください。












第26話 真犯人


「俺がこの結論に至ったのはつい昨日です、長島さん、昨日俺が何をしていたか覚えていますよね?」

「あ、あぁもちろんだ。」

「何?何があったの?」

「お前には黙っていたんだが、実を言うと昨日俺は幕内我立苦(まくのうちがたっく)に会っていたんだ。」

おせちは唖然たしていた。

「え?えーっと、誰?」

「以前お前がアイドルのライブに行っただろう。」

「あーーー!!!あの時のアイドル!!!まくのうーーーち!!とか言ってた!!」

「そうだ。」

「でもなんでアイドルなんかと会ってたの?」

「あの時のライブの話を聞いて思ったんだ、ネットニュースにもなってたし。芸能界第一線で活躍するアイドルがどうして田舎の会場で突然ライブを始めたのか。そもそも彼はユニットで活動しているのにあの時はソロだった。そして案の定新曲をサプライズ発表。その新曲を誰かに向けたメッセージのような曲名だっただろ?ここまでくると姫花に何か特別な思いがあるのではないかと俺は考えてなんとか会えないか長島さんに交渉してもらう事にした。姫花の謎に繋がる事ならどんな些細な情報でも欲しかったから。すると彼は俺と会えるならOKだと返事をしてくれたそうなんだ、だが彼は忙しくて最短で会えるのが交渉から2ヶ月以上経った昨日となってしまったが…。まずはその時の話を聞いて欲しいんだ。」


足利と幕内我立苦は事務所の一室で2人きりで

「いやー、遅くなってしまってすみません!!」

「まさか、本当に交渉が通るとは思いませんでしたよ。」

「いやいやいや〜、足利さんならいつでも大歓迎ですって!少し時間はかかっちゃいましたけど…。」

「正直に言うと、君は俺の事を知っているみたいだけど…」

「えー?覚えてないっすか?」

足利は幕内の顔を凝視する。

「…申し訳ない、どうしても思い出せない。」

「まあ、あの時からかなりシェイプアップしましたしわからなくてもしょうがないかもですね。」

「そ、そうなの?」

「僕ですよ葛飾区立蓮池中学校の伊藤タケシです!」

「蓮池中学校、伊藤タケシくん…。」

足利はしばらく考えると思い出した。

「…あ、あーーーーー!!!思い出した!!!旅館立て篭もり事件の時の子だ!!!」

「そうです!!!」

「うわぁー、全然気が付かなかった。なんせ名前も変わっていたし。」


彼の口上を思い出していただこう。

「僕の名は、幕内我立苦!!…ちなみに本名。」


「いやいや冗談キツいっすよー、幕内我立苦が本名な訳ないじゃないっすかー。どう考えても本名じゃないのに本名って言い張るシャレですよ〜、説明させないでくださいよ〜。」

足利は思った。

「しまった…俺の周りは変わった名前の人が多いからすっかり本名だと信じ込んでしまっていた…。」

「足利さんにはホントに感謝してるんです、あの時足利さんが俺達を助けてくれたから、今もこうして活動ができてるんですから。ずっとちゃんとお礼を言いたかったんです。」

「いえいえ…。」

「そういえば足利さん、俺に話があるんでしたっけ。」

「そう、実はなぜ姫花でソロライブを開いたのか、どうしてそこで新曲を発表したのか聴きたくて。あの街に何か思い入れがあるのかと。いや、もしかしたら街ではなく特定の誰か…だったりして。」

「…流石足利さんですね。そうなんですよ、実を言うと中学の時の俺の大事な人が姫花にいるんです。高校進学の際に東京から離れて行って以来連絡が取れず僕も会う暇もなく…。いじめられてたから少しでも離れたかったんでしょうね。屋上から飛び降りようとしたこともありましたし…。だからせめて僕が今こうして自分のやりたい事ができているのは君のおかげなんだって伝えたくて。彼女が来てくれたのかはわからないけど。」

「なるほど、伊藤くんとは同級生?」

「はい。」


「…おせちと同い年だな。」


「そういえば足利さんも今は姫花にいるんでしたっけ?」

「調査のためにね、まあもうすぐ東京へ戻るかもしれないけど。」

「いや〜、いい街ですよねー。高校があんな綺麗なとこだったらモチベ上がるだろうなぁ〜。」

「答えたくなければ大丈夫だけど、その友達は山梨県立姫花高校に通っているの?」

「え、足利さん知ってるんですか!?」

「知り合いが何人かいてね。」

「へぇ〜すげー!じゃあもしかして…。」


伊藤は真犯人の名前を出した。


「とも知り合いだったりして…!!」


「という内容でした、俺は彼女についても以前から調べていたので東京から姫花へ進学したという話を聞いた時からなんとなく察していましたが。」

「流星くんが意志のある宇宙が誰かに取り憑いて回っていたと言い当てることができたのはその子の事をずっと疑っていたからなんだね。」

「もちろんこれだけではないです、俺はさっき研究所の入り口について察しがついていたと言いましたよね、彼女はそこに住んでるんです。街の開発当初姫花役場であり、柿原豪徹さんの実家であるあの一軒家に。」

「なんだって!?」

「おせちは前に遊びに行ったって言ってたよな?俺は姫花を調べていくうちにかつて姫花役場という施設があり、現在ではそれはなくなった上存在が抹消されていた事を知ったんです。2年前に空き家として売りに出ていたようですし彼女が住んでいるのはほんの偶然かと思いましたが。そうではなかったようですね。」

そう、姫の花がある兵器開発の地下研究所の入り口は姫花役場の地下にあったのだ。柿原豪徹の祖父母は姫花の役員であり兵器開発の秘密を託されていたのだ。柿原豪徹がそれを知ったのは研究機関に入った後になる。この偶然を柿原豪徹は運命と感じていた。

「おせちと彼女のいる2年2組には風音を含め超能力者が3人います、彼女は大久保くんと1年生の時から同じクラスで、風音も1年生の時2人の担任でした。これが一体どう繋がるのか、それがこれです。」

足利はスマホでラジオニュースに繋げた。

すると今日も超能力犯罪に関するニュースがやっている。

「超能力は暴力的な人間を中心に発生していますが、大久保くんは違いました。彼女はわざと暴力的な人間を選んで超能力を与えているんです。ただ暴力的ではない人間に超能力を与えればどうなるのか、よく知っている大久保くんを使って実験したのでしょう。風音の本性については自分で察したか彼女自身の超能力を使ったに違いありません。そして俺の予想ですが彼女は超能力を与えた人間にわずかながら意識介入する事ができます。だからわざとおせちが2年2組に行くように仕向け、おせちに近づき、研究所の入口と共に自分の監視下に置いたんです。」

おせちは足利の体をゆすって否定する。

「ま、まさかぁ、考えすぎだよ〜。」

「次に、少し話は戻るが彼女と伊藤くんの母校である葛飾区立蓮池中学校、この中学校は俺の通っていた高校と池上茂夫の通っていた高校の間あたりに位置しているんです。彼女には接触の機会が十分にあった。総理の息子がその高校に通っているというのは以前から有名だったしあいつの素行の悪さも折り紙付きだったからちょうどいいと目をつけたんだろうな。そして池上事件が終わり3月、蓮池中学校では卒業旅行があったんだ。しかしその旅先の旅館は超能力者により占拠されてしまう。俺の高校の卒業式は2月だったからちょうど探偵としての活動を始めたての頃だったかな。伊藤くんとの出会いはその時だ、その犯人を撃退した時に彼女もその場に居合わせてたんだろう。犯人に立ち向かっていた伊藤くんは印象に残っていたが流石に彼女がその場にいたことまで俺の記憶にはなかった。だが、いたみたいだ。伊藤くんにもその事は確認してある。」

「う〜ん、確かに気にはなるけど犯人と断定するまでには行かないよ…。」

「話が繋がってくるのはここからです。手塚会都を覚えていますか?」

「呼吸をしているという弱点を除けば不死身の能力を持つ男、だったね。」

「彼は俺の使う技、双頭竜蹴撃の弱点を知っていたんですよ。」

「以前聞いたことがあるよ、君が得意とする回転蹴りだよね。」

「はい、その技は俺が中学生の時に習っていた、残った弟子が俺1人だった中国拳法の道場の師匠が最後に直々に教えてくれた技なんです。その技の特徴は威力ももちろんありますが、一度見ただけでは絶対に弱点が見破れないんです。人間の深層心理の穴をついた技なので絶対に誰でも最低2回は見ないと弱点に気づけないんです。しかし手塚はなぜか知っていた。俺はその技を旅館立て篭もり事件の一回、そして石裂と戦った一回、合計2回しか人前で使っていないんです。その2つの機会にいた人間にしか弱点に気がつく事は不可能なんですよ。」

「石裂の事件は悲惨だったからね、よく覚えてるよ。でも戦っている時に周囲にいたのは大久保くんだけだったって言ってなかった?」

「その場にいたのは確かに大久保くんだけでした、真犯人である彼女にはその場にいなくても戦いを監視する方法があったんです。」

足利はポケットから父、竜巻の形見であるライターを取り出してみせた。

「それがこれです。やっとここまで説明がたどり着いた。これは父の形見です。」

「そのライターがどうかしたの?」

「単刀直入に言うと俺の父さんも超能力者でした。」

長島とおせちは驚愕した。

「ええ!?」

「は、初めて聞いたぞそんな話!!」

「…黙ってましたから。この事は然るべき時が来るまで誰にも言うべきではないと思っていたので。」

「…聞かせてくれ。」

「このライター、別に年代物ってわけじゃないんですよ。池上事件当時に近所の屋外の市場でありつけで買った物なんです、事件解決後に調べて知りました。それにそもそも父さんはタバコなんか吸ってなかった。なのにあの事件の時期にだけこのライターをずっと大事に持ち歩いてたんです。これだけでも十分不自然でしょう?」

「そうだね。」

「そして父さんの命日、池上茂夫と対峙した際にその周囲には火事が起きていました。間違いなくその火事は父さんが発生させたものです。不思議な事にその時の火事は燃え跡なんかを調べてみると半径100m近くの広範囲だったにも関わらず火は林や何もない民家の庭からしか上がっていなかった、雨だったとはいえ強風だったのに住宅本体には一軒も火が移ってもいませんでした。人命や財産に関わる被害は一切なかったんです。まるで人が操ったかのような火事でした。まあ実際はそうだったと言う事です。」

「確かに事件当時僕もその話は警察内で聞いていた。」

「そして父さんは殺人事件の記録を記した手帳にはまるで現場を見たかのような書き方のメモが大量にあったんです。防犯カメラのない場所で行われた事件も直接見たかのような文章でした。殺人現場を見たかのようなショックを受けながら帰ってきた事もありました。きっと本当に見ていたのでしょう。つまり、父さんの能力は周辺の火に遠隔で意識を移しそこから観察したり火そのものを操る能力なんです。そうでもして事件をいくつも観察してなければ池上茂夫の能力の弱点に父さんは気がつかなかったと思うんです。ここまでで一旦どうでしょう?」

「とりあえず流星くんが今まで何を疑っていたかに関してはよくわかった。」

「よかったです、ここで双頭竜蹴撃の話に繋がるんです。俺が石裂に双頭竜蹴撃を放った際、すぐ後ろでヘリコプターが炎上していました。彼女はその時に双頭竜蹴撃の2回目を目撃したんです。」

「うん?確かに君のお父さんの能力があればそれは可能かもしれないが、あの子の能力ではないよね?」

「彼女は超能力を与える事ができる、ならば、奪う事も可能とは考えられませんか?」

「可能性としては考えられるね。」

「きっと彼女には超能力を与えた人間を殺し、その能力を奪う力があったんですよ。父さんを殺したのは池上茂夫じゃない、彼女なんです。考えてみてください、父さんは池上茂夫に恐怖を抱かなければ殺される事はないって知っていたのに池上茂夫の能力によって殺されるのはおかしいと思いませんか?あの時のはカモフラージュだったんですよ。殺され方も不思議だった、池上茂夫の能力ならすぐさま心臓を止められて殺されるというものなのに、あの時は光の稲妻が空へ向かって行ってたんです。池上茂夫の能力ではそんなものは発生しませんでした。ですが先日池上茂夫が死んだ際に俺は同じものを見ました。そしてその池上茂夫は向いていた方向や刑務所の方角から割り出した逃走ルートを見ると姫花高校に向かっていたんです。なあおせち、あの日のそれくらいの時間の頃、彼女は何をしていた?」

おせちは青ざめた顔でしばらく黙ると、こう答えた。

「確かにその時間、授業中にトイレに行ってた…戻ってきたのも15分から20分くらいで遅かったから覚えてるよ…」

「長島さん、池上茂夫の死亡現場周辺の防犯カメラは全て高温でショートしていたために映像記録が残ってなかったんですよね?」

「まさか能力で燃やして証拠隠滅していたというのか!?」

「はい、それに父さんの能力、および彼女が奪った能力は遠隔で使う事ができたと考えられます。本人は直接接触せずに能力を与える事ができるのならそれ以上に便利な能力はない。隠れて生活していた池上透に能力を与える事ができたりしたのも遠隔で与えられるなら説明がつきます。あと伊藤くんの証言によると池上茂夫の逮捕後に爆発的に全国で超能力者が増えた時期、彼女は長く学校を休んでいたそうです。しかもあの時は全国の都道府県で順番に発生していました。能力をばら撒く旅行をしてたんでしょうね。」

長島はもはや何も言い返せなかった。

「全て状況証拠や証言を集めただけに過ぎないが、はっきり言って偶然にしてはできすぎてるね…」

おせちも気持ちに整理がついてきたようだ。

「信じたくないけど、でも…。」

「話を最初からまとめると、人間に何らかの恨みを持っていた彼女は意志のある宇宙に取り憑かれ人に超能力を与える力を手に入れた。そして初めに近所にいて悪名高かった池上茂夫に能力を与える。池上茂夫が暴れている間にもおそらく人に能力を与えて回っていて同じ葛飾区に住んでいた俺の父さんにも能力を与えたんです。父さんの能力は彼女にとってとても都合のいいものだったから池上茂夫の能力でカモフラージュし父さんの命と共に奪い取った。その力を利用し彼女はますます社会を混乱に陥した。池上透が隠蔽で社会を掻き乱す事も彼女の計算によるものなんだろう。そして姫花に来て自分は普通の高校生として生活を送る裏で、本当に監視するべきものに関しては自らが直接そばで管理していた。火なんて僅かなものを含めれば至る所にあるしきっと俺の行動もずっと監視されていたのかもしれません。能力を与える際にデメリットを知る事もできるのならおせちの記憶を失わせたのも彼女なんでしょう。これまで起きた混乱は全て彼女に繋がっていたんです。」


足利の主張に納得した長島は研究所の入り口へ行く前に姫花高校へ来た、この日は平日で通常の授業があったがおせちは特別に休んでいたのだ。長島たちが着いた頃には5時間目の授業真っ只中だったが、足利は学校に入り彼女を学校の屋上へ呼び出し、足利の推理を全て話した。


「…品野扇、これが俺が考えた推理だ。間違っているなら間違っていると言って欲しい、もしも心当たりが…」

「全部正解、よく気づいたね。」

おせちと大久保のクラスメイトの品野は笑顔で拍手をした。

「おめでとう〜。」

足利はその清々しさに驚いた。

「異論はないのか…?」

「何も?」

足利もこの反応は予想外だった。

「なに?黙りこくっちゃって、しょうがないからちょっとだけ見せてあげようかな。」

品野は両手を突き出すとどこからか火が飛んできて手のひらの上を回転していた。自在に火を操れるアピールをしているのだ。足利はそれを見て後退りをしていた。疑っていた事だが事実を目の当たりにすると足利もどう反応すればいいのかわからなかったのだ。

「どう?あなたのお父さんの能力を私が使ってる感想は。そう、私が真犯人でーす。思ったより気づくの早かったね。」

「・・・・」

「あはははは!!そう!何も言葉が出てこないか、そっかぁ。じゃあさ、私の事殴ってみなよ!他の能力者にやってたみたいに!ほら!」

品野は両腕を大きく広げるが、足利は何もしない。

「だよね、手が出せないよね。私がやったって物理的証拠はどこにもないもん。あんたは法律で守られた範囲内でしか戦えないもんね、きゃははは!!」

足利は震える拳を必死に抑えた。

「あ!そんなに私と戦いたい?しょうがないなぁ。ま、ちょうどいっか。私もあんたを殺したいと思ってたし。じゃあ姫の花の向こうで待ってるね!言っておくけど取り憑いた意志を私から引き剥がさないと姫の花を閉じる事はできないからね。逃げちゃダメだよ!」

品野の体は光に包まれ何処かへ瞬間移動で消えて行った。

物陰で隠れていたおせちと銃を構えて待機したいた長島が出てきた。

「お、驚いた、まさか本当だったとは…」

「嘘でしょ?そんなぁ…扇ちゃん…友達だと思ってたのに…。」

おせちは崩れ落ちた。

「…落ち着いたら行きましょう、今回が本当の決戦になりそうです。」

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