第25話 世界の真実
「世界に超能力はあった、がしかしなぜ以前は超能力者が現れなかったのか。いや、正確には特殊能力者と言った方がいいだろうか。」
突然の話におせちと長島は話についていくのがやっとだったが、足利は一切の動揺も見せなかった。
「1人の人間が欲望のままに超能力を発動しようとしても、周囲に存在する地球生命全てに超能力を無力化する力がある。それにより超能力は発動ができないのだ。全ての生命は超能力を使う力とそれを抑え無力化する力を同時に有している。本来なら超能力は長い年月を使いほんの少しずつ、抑えながら使用し生命の進化に役立てるのが基本的そして本能的に植え付けられた正しい扱い方だ。だが…。」
柿原の体は震える。
「その秩序を破壊したのが、姫の花だ…。」
柿原は力尽き姿勢を崩す、おせちがそれを抱えた。
「うわぁっ!大丈夫!?」
長島もそこへ近寄り話しかけた。
「す、全て…本当なのですか…?」
「あぁ…全て私の責任だ。私はそれを知っていながら姫の花の作動に超能力を利用したのだから…。」
長島は怒りが混じった表情をする、それを察した足利は肩を軽く叩いた。
「まずは話を聞きましょう。」
「しかし…!!」
目を合わせると、足利の目は何かを悟ったようだった。
「長島さんに真実を見失ってほしくないんです。」
「わ、わかった。」
長島は心の中で呟いた。
「流星くん、やっぱり何か様子がおかしい…。僕は話について行くのに精一杯で驚かされるばかりだが、流星くんはさっきからただ答え合わせをしているような感じがする。一体彼に何が…。」
「…話を続けよう…、姫の花が作動する以前から超能力は幾度となく発動を繰り返されていた、人間だけではなく生命の欲望は生存本能であれ雑念であれ皆強い。生命だけで消し切れない超能力のエネルギーは地球へ還元されていくんだ。その地球へのエネルギー変換の架け橋の役割を担う特異体質の生命が一定数いる。ベガもその1人だ。彼女のような特異体質の人間は地球のバランスが崩れたと同時に能力に目覚めた…。」
「普通の超能力者は姫の花が作動するだけではなくもう一つ段階を踏まないと特殊能力に目覚めない、しかしベガは特異体質ゆえにその段階を踏まずして能力に目覚めたという事ですね。」
「そうだ。」
足利は長島に顔を向ける。
「石裂が能力を二つ持っていたのもこれが原因です、特異体質だった上にもう一つ段階を踏んで新たな能力を得た。」
「あ、あぁ…なるほど…。」
「よく話についていけるな…一度疑問に思った事についてはずっと考えて続けてたんだろうな…。」
「前提の話はこれくらいでいいだろう。」
長島は冷や汗をかいた。
「い、今までのが前提ぃぃぃ!?」
おせちの表情を確認すると真剣に聞き入っている顔をしていた。
「そっかおせちちゃんは秀才なんだっけ。え、じゃあ正直ついていけないの僕だけ?」
「姫の花とは、私が生み出した次元移動装置だ。」
柿原は部屋のデスクの引き出しから写真と設計図を取り出し、広げた。
写真を見ると先が内側に折れ曲がった太い角錐が中心を向いて3本連なり、真ん中の光る球体を抑えていた。そしてその周りには複雑な装置が幾つも設置されていた。
足利の目の色が変わった事に長島は気がついた。
「また何かに勘づいた…一体どこまで先読んでるの君…」
「この3つの制御装置が次元間の穴を開け、その穴を制御する仕組みだ。」
「ここを通ると別の場所に移動ができるの?」
「そう…なるはずだった。知っての通り、大失敗だ。」
「これが…姫花の地下でずっと動いているんですか…。」
「その通りだ。」
「私は人々の生活を豊かにしたくてこれを考えた、私の目的は世界中の様々な場所に一瞬で移動できる装置を実現する事だった。いくら通信技術が発達しても直接足を運んだり他国の人間と顔を合わせないと限界がある場合も多い。移動ができるならそれに越した事ないと思った。人間というのは大昔から常に移動手段を追求し続ける生き物だからな、文明もそれによって成り立っている。」
足利は思った。
「用はすげえ手の込んだどこへでも行けるドアってわけか。」
柿原は長島を見た。
「少し話を聞いている、君の同僚も改造バイクを作っているそうだね。彼もまた新たな移動手段を常に追求するという人間の特性が強いという事だ。」
「な、なるほど…確かにあれは趣味で作るにしては技術が進みすぎていたというか…。」
「人間の文明発達を求める本能もあるが、国家直属研究機関がわざと社会の技術レベルを調整しているからそれが行き届いていなかったのもあるだろうな。現在社会的に公開されている技術力は本来の科学力の20%にすぎない。社会の崩壊や企業の技術独占を防ぐためにあえて低い科学水準で社会を回している。」
長島は驚いた。
「もしかしてそれが国家直属研究機関の目的…!?」
「そうだ。公には秘密にされているが国家直属研究機関は全ての先進国が持っている。互いに存在を隠してはいるが暗黙の了解だな。後進国でも設立の計画が進んでいるとも言われている、科学は組織によって調節しなければいけない段階にまで来ているんだ。私はその禁忌を犯してしまったが…」
「姫の花自体は交易をスムーズに進めるために作っていたという事ですね。」
「あぁ、池上は日本の最終兵器として装備するつもりだったようだがな、研究資金がどうしても必要でそれに乗るフリをして支援を促していた。私自身は戦争に使う気は一切なかった。」
「続きを聞かせてください、一体その次元移動装置がなぜ超能力を発生させたのか。」
「1番の原因は私がそれの開発に超能力を利用したからだ。私は昔から姫の花をどうしても作りたかった、長年科学を研究するうちに理論を完成させる事はできたがそれを可能とする技術力や材料がなかった。何か新たな技術がないか私は世界について調べているうちに超能力を扱う古から続く宗教団体、ギルリア教団の存在を知り興味をそそられその聖地へ足を運んだ。」
「ギルリア教団って…!」
「あぁそうだ、おせち、お前はそこに一緒について来てベガと仲良くなっていたな…。その時私は新しい研究施設の構造の参考にするために来たと嘘をついたが、本来の目的は別にあった。ギルリア教団の聖地はギルリア火山という山の麓にある、そのギルリア火山の周辺にはそこでしか存在が確認できない原子が存在した。その原子は地球に還元された超能力エネルギーが姿を変え物質となったものだ。ギルリア教団の神殿は緑色に輝いている、なぜなら神殿にもその原子が使われていたからだ。名前もそのままギルリア原子と呼ぶ。姫の花に使われている装置は全てギルリア原子を合成して作った素材が使われているんだ。ギルリア原子を使えば本来なら不可能な電動が可能とできる、細かい構造の説明は省くが汎用性はこの世に存在する原子の中で1番と言えるだろう。だがそのギルリア原子を使ってしまった事が全ての失敗の始まりだった…。」
「我々は多額の研究資金と姫花の地下にある広大な設備を利用してなんとか姫の花を完成させた。そして試運転に入った。次元間に穴を開ける事に成功し研究所から別の場所へ繋げる予定だった、場所と場所を繋げるには一度その場所と場所の間の座標からさらにこの宇宙の真反対の場所につなげる必要があった。簡単に言えば紙を折った際にできる折り目となる場所に一度繋げて目的地という角を合わせるといった感じだ。その折り目となる場所はとても遠い、姫の花の放つ特殊な信号も宇宙のはるか広範囲に晒されてしまったんだ。ギルリア原子を利用した事によりその信号は超能力と同質の信号を放っており、あるものにそれがキャッチされてしまったんだ…。」
「しばらくして姫の花からは予想外のエラーが検知された、そこで私は急いで電源を落とす事を試みたが停止する事はできず、次元の穴はここから遥か遠い別宇宙、意志のある宇宙と繋がってしまったんだ。その意志のある宇宙が地球に干渉した事により地球のバランスが崩れてしまったんだ。」
「ここで特異体質の人間は能力に目覚めたんですね。」
「おそらくそうだろうな、そしてその宇宙の意志が私の脳内に飛び込み語りかけた。」
「これほど下等な生命体が力を利用していたとは、しかしちょうどいい。お前の体を使ってお前達の種の集団意識に介入するとしよう。」
「私の意識はどんどん蝕まれていったが、私は必死に抵抗した。」
「そうか、低い知能ながら俺に対抗するだけの自我はあるのか。仕方がない、他へ行こう。」
「私は死ぬかと思ったがそいつが離れたのを確認して一安心した、しかしそんな生温い話では済まされなかった。数日後には池上茂夫が超能力を宿し暴れ回ったのだからな。ニュースを見た時にすぐに察した、これは姫の花のせい、そして姫の花の向こうから来た意思のせいだと。」
足利は全ての答えがわかったかのような顔をして答えた。
「つまり…その意志がどこかの誰かに取り憑き人間に超能力を与えて回っていたという事ですね。」
「ええ!?」
長島とおせちは驚いた。
「…その通りだ。生命は超能力とそれを無効化する力を均等に持っているが地球のバランスを崩した事を利用し超能力の比率を引き上げ特殊能力の使用を可能にさせたんだ。もっとも、この社会には大勢の人間がいる、今となってはどこの誰に取り憑いたのかまではわからないがな…。」
「・・・・・」
「…流星くん?」
柿原は話を続けた。
「足利流星、長島何時希、君達が超能力を持たないのはその意志に介入されない強い心があるからなんだろうな…。あれからあいつは私の元には来ていないが、今でも猛威を振るっているのだろう。」
長島は柿原に向けて言い放つ。
「姫の花を止める方法はないんですか!?」
「…残念だが、制御装置で抑えるのが精一杯だ。無理に破壊をすると穴がさらに広がりこの地球は飲み込まれてしまうだろう。穴は太陽系を覆い尽くし太陽系はブラックホールとなり存在を消すだろうな…。」
「じゃあ、その取り憑かれた人間を探し出せば…!」
「奴に肉体はない、意志だけが浮遊しているのだから簡単に逃げられるだろう。」
「長島さん、安心してください。俺は確信しました、姫の花は止められます。全て終わらせられますよ。」
柿原を含め一同は驚愕した。
3人とも足利の発言に食いついた。
「な…!一体、どうやって!!」
「柿原さん、姫の花が開けた穴を絶対に壊れないエネルギーの壁でピッタリと覆い尽くしたらどうなりますか?」
「一瞬でも穴と地球の空間を断絶する事ができれば次元間の繋がりを断つことは可能ではあるが…。」
「…おせち、お父さんに見せてあげな。」
「えっ…?」
「流星くん…まさか…!!」
「や、やってみる…!!」
おせちは部屋の中で小さく円形のバリアを作り出した。
柿原は驚いた。
「こ…これは…!!!」
「俺はずっと疑問だった、柿原さん、あなたの作った装置を止めるためにおせちは奮闘していた。そんな彼女がなぜ超能力を得たのか。おせちには何が何でも、理性を捨てでも装置を止めたいという強い意志があった、それが能力として宿ったんですよ。おせちの能力の真髄はバリアを作る事ではなく、姫の花を止めるための能力だったんです。」
「おせち……!!!」
柿原はおせちに抱きついた。
「すまなかった…!!本当に申し訳ない!!!お前は私のためにずっと…!!!」
「お、お父さん!?」
「うわああああああああ!!!」
柿原は号泣した。
「流星くん、本当にすごいよ。」
「きっと、宇宙の意志とかいうのも予想外だったでしょうね。行きましょう、しばらく2人にしてあげないと。」
「そうだね。」
それから姫の花の場所を聞き、そこへ向かうため柿原に別れを告げ3人は車で姫花へ向かった。
ちなみに装置の名前が姫の花というのは柿原が元々姫花出身でありそれにちなんで名付けたという。地下に研究所が眠っていたのも存在を知った時は運命だと感じたとか。
「いやー、よかったよかった。」
長島は研究所に入るためのカードキーを片手で持つ。
高速道路で片手運転してしまうほど気持ちが浮ついていた。
「これでついに超能力に決着がつく、全て終わるんだ!」
「えへへ〜、お父さんにすっごい褒められちゃったぁ〜、記憶はないけど嬉しいなぁ。きっともうすぐ戻るし!」
「そうだね〜これでめでたしめでたしってわけだ!!」
「・・・・・」
長島は足利が黙って俯いている事に気がつく。
「流星くん?どうかしたの?」
「・・・・」
「どうしたの?黙っちゃって。」
「…実は姫の花に行く前に、一つ確かめたい事があるんです。」
「え?」
「まだ一つ大きな謎が残っています、その謎を残したままにしておくのは危険だと思うんです。後である場所に寄ってくれませんか?」
「いいけど…どうかしたの?」
「長島さん、超能力の原因となる装置を作ったのは柿原豪徹。そしてその装置を作る事を支援しその存在を隠そうと多くの犠牲を払って来たのが池上透、そして能力を得て犯罪を繰り返す超能力者達が現れ社会はまた新たに大きな闇を抱えてしまった、そうですよね?」
「あ、あぁ。」
「では、もしも全てがそうなるように仕組んでいた人物がいるとすれば、そいつは真犯人と呼んでも過言ではありませんよね?」
「お、おい…ま、まさか…!!!」
「はい、気づいてしまったんです。実を言うと昨日からその存在気がついていましたが、今日の話を聞いてそれはほぼ確信に変わりました。姫の花がある研究所の入口の場所も推測通りでしたし…。ただ俺がこれまでの状況から推測しただけなのでもしかしたら間違っているかもしれない、むしろ間違っていてくれた方が個人的には嬉しいかもしれません。」
おせちも不安になる。
「や、やめてよ急に…。」
「おせち、これはお前にも関係がある話だ。お前の記憶が消えたのもおそらくそいつが原因だと思う。」
「え…?」
「流星くん…!」
「わかりました。率直に言います、その人物は長島さんはピンとこないかもしれませんが、おせち、お前とは深い関わりのある人物だ。真犯人の名前は…」
足利は真犯人のフルネームを言った。
おせちは涙目になり、長島は青ざめた。
「嘘…でしょ?どうして…?」
「ほ、本当なのかそれは…!!」
「はい、これまでの状況証拠からしてそれしか考えられません。」
車内に暗雲な空気が立ち込める中、足利はなぜその結論に至ったのか説明を始めたのだった。




