第22話 決戦
足利と長島、そして警視庁の警官達はついに池上のアジトであるビルの前へやってきた。足利は服の中に防弾チョッキを着ているのみだが、長島達警察官は皆対超能力者用の武装を施しており、対超能力者用スタンガンは足利が戦闘で何度も破壊されたためどうすれば破壊されにくいかを足利の慣習を交えて制作された新型を備えている。長島はホルスターのスタンガンを握りしめ、ビルを眺める。
「いよいよだ…。流星くん、どんな罠が仕掛けてあるかわからない、大変だろうけど先陣を切れるのは君しかいない。頼んだよ。」
「はい、長島さんも。」
足利は後ろで待機する警官達の方にも振り向く。
「そして皆さんも。」
警官達も頷く。
そしてついに、突入作戦開始の合図が出た。
まずは足利が単独でアジト内へ突入する。
アジトの中は一見普通のビルであるが中には何人もの超能力を持った手下がいた。足利は無線で報告する。
「現在ロビー!黙認できる限り13人の手下がいます、いずれも能力者の可能性は高い!!本当に大丈夫ですか!?」
警官みなに足利の通信は聴こえているが長島が代表して応答する。
「我々も覚悟の上だ、作戦通り地下へ直行しろ。」
「はい!!」
足利は襲い掛かってくる能力者の攻撃を振り切りエレベーターのボタンを押す、しかし何も反応はない。
「やっぱり階段で行くしかないか!」
能力者の1人が足利の腕に掴みかかった。
「邪魔だ!!」
足利は能力者の顔面をパンチし顔面を顔の骨を粉砕させた。
「エレベーターはすでに停止されてます、今から階段で向かいます!!」
「了解。」
「このクソ!」
足利はまた別の能力者の脛を金属を仕込んだ爪先で蹴り飛ばし階段を下った。
「おい待て!!ぐあ!!」
はたまた別の能力者が後を追おうとすると脇腹に蹴りを入れられた。蹴りを入れたのは長島の後輩、後岩だ。
「お前の相手は俺たちだ!!」
この作戦は先陣を行く足利の情報を頼りに警官達が続いて突入、警官は手下を足止めし足利はまっさきに地下にいるとされる池上を捕まえに行くというものだった。
部屋に警報が鳴り響く、地上階の様子を池上はモニターで見ていた。
「ついに来たか…。」
ベガは池上の腕を掴む。
「池上様、逃げましょう。」
「・・・・・」
「池上様?」
「お前だけ逃げろ。」
「え?」
「既に日本政府の中核は私の手中にある、逃げたところで決着が伸びるだけにすぎない。ここで私が直接足利を倒す。」
「でも…」
「これまで迷惑をかけたな、色々協力してくれてありがとう…。」
「え?」
「お前の目指すところは足利を倒す事じゃないはずだ、何か他に目的があってそのために仕方なく私についていたんだろう?」
ベガは口結んだ。
「止めるつもりはない。ベガ、お前だけで逃げるんだ。」
「…あんたは最低最悪だけど、私が出会った男の中では比較的マシだった。」
ベガは腕を離し、緊急用脱出ルートへ向かっていった。
池上も独りで別の場所へ歩き始める。
足利は次々と敵を薙ぎ倒し、地下100mの池上の潜む階についに到達、踊り場のドアに手をかける。
「ついに。」
深呼吸をして扉を開けると、目の前は真っ暗だった。足利はしばらく暗闇を見つめ目を慣らさせてから中へ入る。その部屋の中心へ到達すると無数のスポットライトが部屋を照らした。
その部屋は野球のスタジアムくらいの広さでコンクリートによって舗装されたものだった。
そして前方には池上透が立っていた。
「池上…!!」
池上と目が合うと、足利の周りを囲むように置かれていたマシンガンやガトリングガンなどの1000台にも及ぶ連射銃の数々が足利に銃口を向け浮かび上がる。
「これはこないだの!」
「私が得た能力だ、無数の銃火器を操る事ができる。そして私の能力によって操られている銃の弾数は無限となる。これが何を意味するかわかるか?」
足利に向けられた無数の銃口が火を吹き弾を反射した。
「うわあああああああああ!!!!」
全身に無数の痛みが走り出す。足利はその場で倒れ込んでしまった。しかしわずかながら体を動かし抵抗する。
「悲しいものだな、死ねないというのも。」
銃声が室内を響き渡る。
「お前は私の息子を始め数々の能力者を出し抜き、倒してきた。その中には私が雇った刺客も多く含まれている。お前の強さ、そして恐ろしさは私が1番よく理解してるつもりだ。」
足利は動けない体で無限の銃撃に必死で抵抗する。
「私ではお前に勝てない、だからお前が諦めるまで銃撃を続ける事にしたんだ。幸い私の能力には時間制限がない。お前が抵抗を止めるまでいつまでも続ける。私はお前に勝てないが、お前も私を倒す事はできない。私は何日、何年かかろうと攻撃をやめない。足利、お前が諦めるまで!!」
「くっ、いくら倒してもキリがない…。」
「長島さん!!先に行ってください!!」
「後岩何を言ってるんだ!」
「足利さんが万が一ピンチになったら、助けられるのはあなただけです!!池上の逮捕は長島さんが行うべきだ!!」
「!!!」
「私がこの能力を手にしたのは9ヶ月前だ、この能力を確認してすぐさまこの作戦を思い立ちここにお前を倒すための空間を作った。だがあくまで保険だった、まさか姫の花の存在に気がつくとはな。お前が姫花へ訪れた時から決着の時が近づいている事は薄々感じていたが、それでもこんな事はしたくなかった、お前に諦めて欲しかった。いくら不死身といえど痛覚はあるんだろう?苦しんでいるその姿を見ればよくわかる。」
足利は必死にもがく、自分の言葉が足利に届いているのかどうか、そんな事は池上にとって関係なかった。
「お前は姫の花を停めれば超能力はこの世から無くなると考えているんだろう、だが現実はそう甘くはない。あれを止めるのは不可能だ。事実あれを作った柿原豪徹自身がそれを諦めたのだからな。姫の花がいかに危険なものであるか作る前から私は知っていた、それでも作らせるしかなかった。戦争に負け核兵器を失った日本にはいざという時のための反撃手段がない、だが姫の花はそれを可能にする。人間の心というのは実には完全、それはどんなに上の立場にいる人間であっても貧しい国の子供だろうと同じ。いつまで平和が続くかわからない。日本を守るためなら姫の花をあいつに作らせるしかなかったんだ。あれのおかげで様々な人間が超能力による被害に遭っているのは知っているが、戦争で滅ぶ事に比べれば微々たるものだ。」
池上は俯いた。
「長島の家族の事は、申し訳ないと思っている。元々私は茂夫に脅しをかけるだけにしろと言ったのだが、まさかあんな事になるなんて…。」
「なんて事をしたんだ!!私は長島に捜査を止めるよう脅しをかけろと言ったんだ、よりにもよって子供を手にかけるなんて…!!」
「は?うるせーよ、そんなこと知った事か。」
「今回だけじゃない!!いいか、当事者の家族には一切、特に女と子供には手を出すなと硬く言ってるはずだ!!!」
「なんですか、お父様は命を平等に扱わないのですか?あいつは殺せとかあいつは殺すなとか言うけど、俺は命を平等に扱っているだけだ。」
「息子に初めてあの能力が宿ったと知った時は心底絶望した、息子が化け物になってしまったと。だから私にとって邪魔な人間を排除させ、報酬を与えて優越感を与える事で被害を最小限を抑える事にした。そうしていなければ被害はもっと拡大していただろう。もっもとあの能力に弱点があるという考えに至らなかった私にも責任はあるがな。息子が逮捕されれば私の地位は下がってしまう、日本を守るためにも総理大臣の地位から下げられるわけにはいかない、意地でも罪を認めないようにする他なかった。全て仕方がなかったんだ。」
長島は階段を降りるたびに大きくなっていく銃声に不安を感じとにかく急いだ、そして遅れてついに池上と足利のいる部屋へ到達した。
「お、い、嘘だろ…。」
長島はその悲惨な状況を目にして涙した。
「や、やめろおおおおお!!」
長島の足は崩れた。
「やめるんだああああ!!!これ以上流星くんを傷つけるなぁぁぁぁぁ!!!!」
長島は涙を流しながらゆっくりと歩みを進める。
「ずっとずっとお前を追いかけて、ついに捕まえたかと思えば…こんな……流星くんが……流星くんが一体何をしたって言うんだよ………もうやめてくれ!!流星くんを傷つけるな!!!」
足利がわずかな力で抵抗し続ける無惨な姿を目にし、再び膝から崩れ落ちた。
「やめてくれ…流星くんの能力は…決して、不死身の力なんかじゃないんだ………。」
「!?」
長島は絶望していたが、巨大な銃声により叫びが全てかき消されていた事に気がつく、そして池上は常に足利を凝視し口を動かしていた。自分語りになるあまり銃声も相まって長島が部屋に入っている事にまだ気がついていなかったのだ。長島は正気を取り戻し冷静になると部屋の隅にあった箱に姿を隠し涙を拭く。
「こういう時ほど僕が冷静じゃなくてどうする…!!」
ひっそりと顔を出し足利を見つめる。
「ごめんね、本当にごめん。もう少しだけ耐えてくれ…!!必ず助け出すから!!!」
長島は深呼吸をした。
「超能力には必ず何か穴や弱点がある、それを見つけてこれまで戦ってきたんじゃないか。きっと池上のあの力にもなんらかの弱点があるはずだ…。」
そういうと観察を始めた。
「弾数が明らかにマガジンの容量を超えている、奴は銃を操るだけでなく残弾数を無限にすることが出来るみたいだ…。くーー、今は何か独り言に夢中になってるみたいだけど僕があの能力を浴びれば一瞬で死んでしまう。むしろ流星くんですら耐えられていないかもしれない…。こういう強力な能力なら絶対それ相応の弱点があるはずだけど、どうすればいいんだ…考えろ…考えろ…、流星くんは僕以上にこういう状況を切り抜けてきたんだ、流星くんだったら一体どうするか。」
頭に手を当て、目を瞑り、集中する。
「そういえば、以前流星くんは言っていた。超能力とかその人が抱える欲望が具現化したもの、そしてその弱点はその人の心の弱い部分に起因している事が多いって、池上の弱い部分、欠点なんていくらでも思い浮かぶじゃないか!今も昔もいつまでもコソコソしやがってる。そういえば…。」
もう一度池上に目をやると、数秒おきにほんの少しだけ後退りしている様子が見えた。浮かんでいる銃もそれに合わせてずれていく。目を逸らしたくなる気持ちを抑えて足利に目をやると、足利が倒れながらもほんの少しずつ池上との距離を詰めようとしている様子が見えた。
「まさか、こんな状況になっても流星くんに近づかれるのが怖いのか…?流星くんもただ抵抗しているようには見えない、必死に池上を追いかけているようだ。もしかして流星くんは既に弱点に気がついている!?」
思考を巡らす。
「よく考えろ、池上が一体どんな人間か…あいつは常に真実を隠そうとするような節が見られた…。真実に触れれたくないとばかりに…。」
そしてひらめく。
「触れられる…!?まさか。」
池上に目をやる。
「あいつの行動はずっとそうだった、真実をひた隠しにし事実を捻じ曲げる、流星くんはそこに気づいてるんだ!!」
長島は全力で駆け出した。
「仕方がなかったとはいえ足利流星、お前の父親に長島の家族も手にかけてしまった事は本当に悪いと思っている…だからこそもうお前とは戦いたくない…。」
「うおおおおおおおおおおお!!!!」
長島は銃声が鳴り響く中突撃する、池上の言葉も長島の叫びも互いに聴こえていなかった。
そして足を踏ん張り、腰を捻り、右手を全力で振りかぶる。
真横に来てやっと池上は長島に気がついた。
「お前!?」
「流星くんに手を出すなあああああああああ!!!!」
「ぐぼぉ!!!」
長島はこれまで生きてきた中で最大の力を込めて池上を殴り飛ばした。池上の体は勢いよく地面に激突しバウンドした。
そして宙に浮かんでいた銃はそれと同時に全て地面へ落ちていった。
すかさず長島は仰向けになった池上の体をうつ伏せにし押さえつけ、手錠を掛けた。
「7時45分!池上透!銃刀法違反および傷害罪で現行犯逮捕する!!!」
そして池上およびその手下達は厳重に拘束され護送車によって警察署へ送られた。幸い死者は誰も出なかった。
「ついに…終わったね…。」
「でも姫の花についてとかまだ色々…。」
長島は足利の両肩に手をついた。
「長島さん…?」
「でも…これでもう君が戦わずに済む…。」
「え?」
「ごめんね流星くん、本当に今まで苦労をかけたね。」
長島は泣いていた。
「ど、どうしたんですか。」
「もう体は痛くないの?」
「治れば痛みはなくなります。」
「そうか…。」
足利は不思議そうな顔をした。
「僕は君の戦う姿を長く見てきた、全てではないけど1番そばで見ていたのは僕だと思う。本当にごめんね、君には頭を下げても下げきれない。」
「もしかして。」
「気づいていたよ、君の力の秘密について。」
「…」
「君は本当によく頑張った。いつかちゃんとお礼をさせてほしい。」
「…ありがとうございます。でもこれで超能力がなくなったわけじゃない、最後まで油断できませんよ。」
「そうだね。」
後岩が装備を外してやってきた。
「やりましたね長島さん!あと、足利さんも!!」
「どうも。」
そしてトライエクスサイクロンを作った、趣味がバイクいじりの開発ヤメルも近づいてきた。
「あんたが足利かい!男らしい顔してんな!!」
「あ、ありがとうございます。」
さらに突入作戦の成功を聞いて大型車で山吹郵子、そして池上事件当時に懸賞金を出し池上の不正を暴くよう結託していた他の政治家達もやってきた。
「長島様、足利様、そして警察官の皆様も、よくやってくださいました。今回の件で池上と手を組んでいた人間達は皆明るみになるでしょう。政府の立て直しは我々がおこないます。おそらくこれからも様々な問題と直面するでしょうが、頑張って征きましょう。」
そして足利は事務所まで長島に車で送ってもらう事になった。
「長島さん、本当にこれで終わりだと思いますか?」
「まあ取り調べとか色々大変なことも残ってるけど、どうかしたの?」
「結局おせちの記憶は取り戻せてないなと思って、記憶を取り戻せないままお母さんと再会させるのも…」
「確かにそれは残念だけど、おせちちゃんの記憶喪失が超能力の弱点なら姫の花をなんとかして超能力を失くせばきっと大丈夫でしょ。」
「確かにそれはそうなんですけど。何か引っかかるんです。大きなやり残しが残ってるような。」
「君はよくやってるよ。今日は1日休むといい。」
「それもそうですね。」
「でも、俺はまだ全て終わってないと思う。」




