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姫の花  作者: トムとゼリーwith五目御飯


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第13話 姫花の正体

「足利さん、急にお呼びしてすんません。」

「こんにちは!英年とお付き合いさせていただいている、海辺あさぎと申します。よろしくお願いします。」

病院の受付には車椅子に乗った大久保とそれを介護する海辺が待っていた。

足利とおせちは驚いた、海辺の身長がとても高かったからだ。足利は驚きを表には出さなかったがおせちは少し反応した。

「びっくりした?私身長が195cmあるんだ。」

「すごい…!」

これが大久保の能力の正体である。

大久保の身長は165cmであり海辺より小柄、大久保はそれがコンプレックスだったのだ。大久保のそのコンプレックスの具現化こそが身長が25cm伸びるといった能力に繋がったのである。しかし能力を使用してもなお海辺の身長に追いつかないのは彼の能力に対する執着が高くないからだろう。

足利が大久保を負傷させた事を海辺に謝罪した後、4人で屋上へ移動した。

「いつ見てもこの街の景色って本当綺麗!足利さんとおせちちゃんはこの街についてどう思う?」

「俺も綺麗な街だと思います。」

「私も!!」

「うんうん、景色はのどかで東京から離れているにもかかわらずインフラ整備が整っていて不便の感じない街だよね。山梨の八王子なんて言われてるくらいだし観光客や移住者が後を絶たない。でもね!この街の成り立ちはそんなに綺麗なものじゃなかったりして。」

海辺はアタッシュケースから年季の入った分厚い本を1冊取り出し、足利とおせちに見せた。

足利は本を受け取りおせちと表紙の文字を読み驚いた。

「兵器開発都市計画!?」

足利は本の中に軽く目を通した。

「それがこの街の正体だよ。」

「確かに辻褄が合う。」


姫花の街の正体とは兵器開発都市だったのだ。

以前長島が発見した資料によると戦前はただの農村だったものの終戦後急激な発展を見せていた、それが表す意味は戦争中に兵器の開発や実験を目的とした都市として政府はこの土地を開拓したためであったのだ。当時あった財閥の責任者や今も続く大企業の社長などの権力者達が大勢この街に出資していた事が資料に記載されていた。それらは姫花のオフィス街に今でも拠点を構えている企業が大半だったのだ。

「東京からそれほど離れてないけど海には面していないこの土地が隠れて兵器を開発するのにうってつけだったと当時の日本政府は考えたの。」

「この資料はどうやって?」

「当時の政治家が海外へ密かに横流ししてたのを取り戻したんです。」

「確かにこの街の異常な発展はこの資料から合点がいく。」

足利は考える。

「インフラに関する話だけじゃない、この街が兵器を開発するために作られたと考えれば元総理である池上や国家直属研究機関が姫の花なる装置をこの街に置いている理由にも説明がつく。やはり姫の花はこの街で作った装置というのが一番可能性が高そうだ。」

しかしまだいくつか疑問があった。

「海辺さん、姫花という言葉には一体どういった意味が?」

「意味は無いと思う。日本人の苗字はかつての地名から取られたものが大半だけど姫花なんて苗字の人はこの世界にはどこにもいないの。つまりそれは姫花は最近になって作られた造語であるという事。戦時中に兵器開発の計画が生まれてから名付けられたものだと推測できる。そう名付けた人にとっては意味のある言葉なのかもしれないけど歴史に関わるような意味は特にないと思う。」

「という事はやはり姫の花と装置に名付けたのはこの街にちなんでつけたと考えるのが妥当だな。政府の極秘装置にわざわざそういった名前をつけたという事は柿原豪徹はこの街に何か思い入れがあるという事だろうか。」

足利は再び質問する。

「実際に兵器開発はこの街で行われたのですか?」

「この街が完成した頃に日本が敗戦した事からそれは叶わなかったでしょうね。」

「この街に関する資料はこれで全てですか?」

「他にも細かいのがあるけど役員への配布用でそれを簡易的にした内容ものだからそれに載ってること以上の情報はないよ。」

「なるほど……。」

考え込む足利の視界におせちが入り込む。

「どう?何かわかった?」

足利は海辺に資料を返すとしばらく考え込んでから答えた。

「なんとなく。海辺さん、大久保くん、貴重な情報をどうもありがとう。」

足利とおせちはその場を後にした。


「ねえ足利さん?」

「ん?」

「足利さんは前に言ってたよね、超能力ってのは人の心の悪い部分や弱い部分が具現化したものなんじゃないかって。だから超能力を得たら犯罪に走る人が多いんだって。」

「ああ。」

「確かに超能力を得た人は危険な人が多いけど、私や大久保くんについてはどう思ってるの?」

「記憶を失う前のおせちを俺は知らないし大久保くんに関してもほんの少ししかわからない、だからもしかしたら犯罪的な思考を持つ一面も持っているのかもとは思う。だがそれを悪い事だとは思ってない。人間は色々な面があって当たり前だ。」

「そうだね。」

「負の感情を持つ事自体が悪いんじゃない、問題なのはそれを他者へ振りまく事だと俺は思う。」


足利はおせちを事務所に帰すと針葉ダムに足を運んだ。

「俺はこの街の景色を美しいと感じた、しかしこれは兵器開発という試みによって生まれた景色。」

「お前もこの景色が好きか。」

周囲に誰もいないと思い込んでた足利は、隣に人がいる事に驚き振り向く。するとそこにいたのは池上透だった。池上は柵に肘をかけ景色を眺めているようだった。

「池…上…!?」

流石の足利も動揺を隠せなかった、首相辞任以来表立っての姿は一切表さなかった因縁の宿敵が今目の前にいるのだ。

「本物なのか…?まさか…」

「足利、我々は何かと長い付き合いになるわけだが、こうして面と向かって会うのは初めてだな。」

「な、何しに来た…」

「力を抜け、私とお前の仲だろう。これまで随分と…邪魔してくれたよな。」

足利は姫花に来る以前も池上の下請け組織の悪事を何度も阻止してきた。過去の因縁だけでなくお互いは現在進行形で宿敵と見做していたのだ。

「くそ…今すぐ倒すべきか…しかし策もなしに俺の目の前に現れるはずもない、ここは大人しくするしかないのか…?」

「足利、お前はこの街が兵器開発によって生まれた事を知ったよな。」

「!?」

「安心しろ、大久保英年も海辺あさぎも殺すつもりはない。だがバレていないと思ったか?」

足利は何も言い返せない事、そして自分の無力さを改めて実感した。

「お前に問いたい、姫の花についてどこまでわかってる?」

足利はしばらく考えてから答えた。

「姫の花がこの街にある事は間違いないだろうよ。池上、あんたが俺を倒そうとしている事から姫の花は簡単には移動させられないものであり、この街にないと効果を発揮できない装置である事を物語っている。そんな大掛かりな装置であるにも関わらずそれが補完されていそうな施設はこの街に一切見当たらなかった。そしてこのダムは所有者不明の土地に隣接されているし通常のダムにはない不自然な門が中に設置されている。でもってこの街は兵器開発のために作られたときた。つまり研究施設および姫の花はこの街の地下に存在していてこのダムは証拠がいつでも隠滅できるよう地下に水を流し込む為のもの…という事で間違いないだろ。」

「やはりそこまでわかっていたか。」

「この街を調査しているうちに俺は地下研究施設の可能性についてはずっと考えていたぜ。だが無理矢理掘り起こしでもすればこのダムが作動して研究施設の証拠を破壊する、きっと姫の花にはなんらかの機能が働き2度と接触ができなくなる。この街の構造そのものが国家の秘密と姫の花を守るためのシステムなんだろう。」

「その通りだ。」

「つまり、この超能力問題を解決させるにはお前ぶっ倒し正規の方法で地下に入る他にないって事なんだな!!?」

「そうだ。」

「わざわざ俺に答え合わせをさせるために来たわけでもないだろ。何しに来たんだ。」

「このまま隠れて探り合いを続けても埒が開かないと思ったんだ。お前に考えを改めてもらいたくてな。」

「改めるべきはあんただろうが。」

「お前は私を倒せば全てが解決すると考えてるようだが、果たしてそれはどうだろうか。」

足利は池上を睨みつける。

「お前がこれまで戦ってきた超能力者はみな私の手下というわけでもなかろう。いや、半数以上は一般の犯罪者。それに、そもそもの話、超能力犯罪が目立ってはいるが従来の犯罪がなくなる気配もない。姫の花の開発を進めたのは確かに私だがこの兵器開発のための街を生み出したのは当然私ではない。人間というのは常に心に悪性を備えている。それは私を倒しても変わらないんじゃないか。」

「少なくとも超能力の蔓延は止まる。」

「まだわからないか、姫の花の停止は不可能なんだよ。」

「嘘つけ!!」

「嘘だと思うなら好きにすればいい。」

「…ッ」

「これからまた、お前の元に1人の刺客が送られてくるだろう。しかしそれに関して命じたのは私ではない。お前の考えに反対する人間は私の他にもいるという事だ。きっとお前はそいつとの戦いに負けるだろう。せめて死ぬ前に甘い考えを反省するんだな。」

「お前は必ずぶっ倒す!!」

「…ならば最後に見せてやろう、この2年の間で私にも超能力が宿った。」

ダムのふもとから無数のガトリングガンやマシンガンが浮かんでき、足利に向けて乱射された。銃弾の雨で足利は池上を見失った。


長島は神戸宇月の墓へ花束を持って訪れていた。

「宇月さん。これは僕と流星くんからだ。流星くんは君の家族に恨まれてるからここには来ないだろうけど、今でも君を想って頑張ってくれてるよ…」

神戸宇月を助けられなかった悔しさは長島も同じだった。長島は花束を墓前に置いた。そこには新しい別の花束が既に置かれていた。

「そうか…さっきも誰か来たんだね…」


ある国の建物の大広間で、それぞれ別の修道服を着た男達が集まって会議を行なっていた。

「なあ、知ってるか日本の話。」

「超能力問題だろ?あの力はギルリア教団が管理していたはずだ。」

「ギルリア教団の真の顔がバレてしまえば我々もすぐ裏を取られ潰されてしまうぞ。」

「だがここ数ヶ月あそこと連絡が取れないんだ…」

するとどこからともなく池上透の側近の女が現れた。

「なぁに?私抜きで内緒話?」

男達は彼女を見て驚愕した。

「ベ、ベガ!?生きていたのか!?」

「生きていたら不満?」

ベガ、それが彼女の名である。

男の1人がベガに詰め寄り震えた声で話しかけた。

「ベガ様…生きてたんだね…心配してたんだ…」

「私も…」

ベガは話しかけてきた男の頬に左手を当てる。

「な、なぁ…話してくれないか?ギルリアの人々は今何をしている?」

「それはね…」

ベガは左手から赤いイナズマを発生させた。するとその男は白目を剥き涙を流しながら発狂し地面で悶え出した。

男達は再び驚愕する。

ベガは隣にいた別の男を人差し指で軽く触れた。

するとその男もまた叫びながら苦しみだした。

「なんだ!?何をしたんだ!!」

「まさか…超能力…!?おぼふ!!!ギィヤアアアアァ!!」

ベガは次々と男達を倒して行く、するとそのうちの1人がベガに命乞いをした。

「ま、まさかあの時の事を恨んでるのか…?頼む…許してくれないか…」

「んー、いつの事?」

ベガの右腕から赤いイナズマが強く走り出す。

「ま、待て!!」

「いいじゃん、あなた達の信じる神は不滅なんでしょ?祈りなよ。」

「神なんかいない!!わかってるだろお前も!!」

「あらそうなの?じゃあ試してあげる。」

ベガは顔面をパンチした。するとより大きい叫び声で男は悶える。

男達はみんな叫び苦しむ、しかしそれは殴られた痛みでもイナズマによるものでもない。潜在意識の奥が滅茶苦茶にされているのだ。自我や記憶を直接破壊しているため外部からはどうしようもなく逃れる方法もない。肉体的な痛みはなくとも脳内を痛めつけられる不快感が彼らを苦しめているのだ。

「私の神を殺す能力は気に入ってくれたかしら。」

建物から脱出を図ったベガは池上に連絡を入れるとまたどこかへ向かって行った。


時間は夜、足利探偵事務所に1人の男が忍び込んでいた。真っ先に向かったのは2階の事務室ではなく3階のおせちの部屋だった。男は部屋に侵入しベッドで寝ているおせちに手を伸ばす。おせちを攻撃する目的で手を伸ばしたのにも関わらずおせちのバリアは発動されなかった。

「柿原おせちじゃない…!」

「おせちは避難させている。」

「!?」

部屋の暗がりに視線を移すと足利の姿があった。

「やはりこういう事だったか。待っていたぜ、Y.R.P.野比。」

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