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田中 栄太と息子5

 カフェ”ジョーカー”を出たのが15時過ぎ。明日の予約でもしようと取り出したスマホにはメールが一通きていた。

 母親から、「明日、お寿司を食べるのは行けなくなった」という連絡だった。俺はがっくりと肩を落として祖父母にその旨を連絡する。寂しさを埋めてくれる代わりの人が見つかったのだろう。自分の役立たずさが浮き彫りになったようでつらかった。祖父母からの返信は「気を落とさないでね、お母さんは少し弱いところがあるけど許してやってね」だった。

「分かってるよ」誰にも伝わることのない返事を呟いて俺は空を見上げた。雲一つ無い青空に初めてヒメと出会った世界を思い出す。


「物語を書く相手って、選ぶ事ができるのかな?」

 もし出来るのならば。母親が泣いているときに俺が側にいてやることが出来るんじゃないだろうか。

 自然と笑みがこぼれた。母親が帰らないと分かっている祖父母宅で待ち続けられるほど俺は強くないが、母親が笑顔になるのならなんでもしてやりたい気持ちもあった。今度、ヒメに会えたら聞いてみよう。

 そんなことを考えているといつのまにか家にたどり着いていた。玄関を開けベッドに直行する。午前中の掃除が良い運動になっていたのか、心地好い眠気が俺を包んでいくのに任せた。

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