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田中 栄太と息子3

 シーンとした店内にハッとして田中 栄太は座ってからこういった。

「鳴海君、君は小説を書くことが好きだろう?」


「好きです」

 俺は頷きながら、これからどんな事を話されるのかと身構えた。ただ、どんな話を聞いたとしても依頼を断るつもりはなかった。自分の母親のように俺の物語で一歩踏み出せる人がいるのかもしれないから。


「ストーリーテラーに関わった作家はもれなく3ヶ月以内に筆を折っている」

 そして、私の息子もその一人だと息を吐いているのと間違うほど弱々しく田中 栄太が吐き出した。

「何があったんですか?」俺は先を促す。いつのまにか隣に大森 誠も座っていた。俺と同じく田中 栄太の言葉の続きを待っているようだ。


「息子は自分の才能の無さに嫌気がさしたから筆を折るんだと私に説明してくれたよ。しかし、筆を折ると宣言する直前には”ストーリーテラー”というチームに所属したのだと嬉しそうに話してくれていたんだ。おかしいじゃないか。私は、”ストーリーテラー”について調べた。在籍する作家の入れ代わりが激しいことは分かったが、何が息子の心を折ったのかは判かっていない」

 一気にそう話し、テーブルの上の水をあおるようにして飲む田中 栄太。


「……今、息子さんはどうしてるんですか?」

 心配そうに大森 誠が聞いた。

「なに、心配はいらない。ごく普通の幸せな生活をしている」

 ただ……と田中 栄太が言葉を続ける。

「たまに、原稿用紙を見てはつらそうな顔をするぐらいさ」

 そう言葉を紡いだ田中 栄太もどこかが痛むような苦しげな表情をしている。

「本当に、小説を書くのが好きな子だったんだ」

 俺と大森 誠に聞かせたいというよりは自分に言い聞かせるかのように田中 栄太は言い、すっかり冷めてしまったランチセットを食べはじめた。

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