失礼な店員4
どのくらいの時間が経っただろうか。画面に書き込まれた文章を見たとき俺は思わず「少なすぎる」と零した。落胆しながら”あるカフェ”と題されたそれを読む。
”[あるカフェ]
小さなステンドグラスで彩られたモダンな扉を開けるとコーヒーの香りが出迎えてくれた。カフェ「ジョーカー」、店主の趣味でつけられた店名には、「人生の切り札となるような思考ができる場所であってほしい」との願いが込められている。それにふさわしくダークブラウンで統一された内装が醸し出すは、落ち着いた大人の雰囲気。丸いオレンジ色の間接照明がコーヒーカップの輪郭を優しく照らす。
コーヒーの深い色合いと共に過ごす何物にも替えがたい時間。ボックス席5、カウンターに椅子が3つ程しかない店内。こぢんまりとした内装にもかかわらず窮屈さを感じないのはかすかに流れるクラッシック音楽のおかげだろうか?”
何度も読み返す。しかし、どんなに待っても丑弌 論咲が出てくる気配はなかった。書きたいのは内装の話じゃない、その店内で繰り広げられるであろう人間ドラマ、読者がその主人公になれるかもしれないという期待を抱かせる物語だった。
「……通うしかないか」
俺はため息混じりにつぶやく。このカフェはディナーもやっていると大森 誠が言っていた。仕事の終わりに顔を出すことはできる。できれば大森 誠がぎゃふんというような完璧な小説を持って再会したかったのだが、書けないのじゃ仕方がない。書くと約束した以上は書くための努力をすべきだろう。せめて大森 誠が休みだったらありがたいな。そんなことを考えながら俺は冷蔵庫にあったコンビニのおにぎりを食べた。




