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一章:葛藤

 キーンコーン、カーンコーン

 学校のお昼のチャイムが鳴る中、学校の生徒たちは一息つきつつあった。教室から購買へ向かって言ったり用意した弁当を開いたりする。学生にとっては憩いのひと時だ。そう彼を除いては。

 午前中の授業を済ませた一人の少年、机に向かって授業を受けていた彼は束の間の安息を迎えたかのように首を鳴らしていた。

 さてと、これから昼飯かな。ちょうど腹も減っているし、自分の分の弁当は持ってきたんだが・・・・・またあの子たちがやってくるんだろうな。毎日のことだし、彼女たちも俺のこと気に入っているからそれはそれで嬉しいんだが、只こう毎日のように俺に縋り付いて「彼は私のもの」みたいなことされるとどうにも困る。だって俺は誰のことも放っておけないし恋に敗れて悲しむ女の子の顔だって見たくないんだ。でもだからと言って誰かを選ぶことだってできない。そうすれば選ばなかった方も傷つけてしまう。こうした中で俺はどうやって彼女たちに関係を迫られて、どう答えたらよいものやら。勿論俺が優柔不断なのもあるけれども、そう・・・・・あんな出来事があった以上、誰かを傷つけるなんて怖くてできない。あの日犯した罪を償えるものならば、俺はどんな無茶だって顧みないさ。あの子たちのことだってそうやって助けてあげたんだ。これからもそうした存在を助けてあげたい。だからあの三人全員の気持ちを踏みにじりたくない。でも、そのためにはどうしたらいいものなのか。うーん・・・・・。

「義人君、何やっているの?」

 彼に話しかけてきたのは同じクラスの女の子。ふんわり柔らかいセミロングにやんわりした表情と垂れ目に高めの声で彼に話しかけてくる。手には可愛い包みに包んだ弁当箱、これから昼食のお誘いである。

「ああ真美。いや、別になんてこともないさ。何ていうか君を待っていたというかこの時間を待っていたというか・・・・・」

「私を?嬉しい!それって私と一緒にいるのが楽しいってことだよね。それじゃあいつもの場所に行こう」

「ああ、そうする」

 そうして少年少女は敷地内の広場まで向かった。けれどもその間に豊田義人は懸念していたのである。

 もしこのままあの二人に見つからなければ、今日の昼休みをやり過ごすことはできる。けどそうは問屋が卸さないっていうのが常。特にあいつに関しては俺への執着が半端ないからなあ。何しろ中学の時から一緒だったんだもん。「義人のことはあたしが一番知っているんだから」って聞かない。それをもう一人の彼女が正論をぶつけてくるもんだから余計に収拾が付けられなくなるほどに騒ぎ立てる。まさに火に油を注ぐだな。ましてこんなおっとりした子が抜け駆けしようとするものだから二人も更に向きになってくるんだ。

 そうして訪れた屋外の広場、そこのベンチに座り二人は弁当を広げる。義人が開いた包みの中身を真美はまじまじと見る。

「義人君、あなたまたそんな味気なさそうなもの昼食に食べようとしてたわけ?」

 そこにはコッペパンと牛乳、数個のベビーチーズがあった。昼の空腹を満たすにはあまりにもお粗末な食事に真美が驚くのも無理はない。

「いや俺はこう手短にやりたいものでな」

「いいえ、ちゃんと腹持ちとか、栄養バランスとかそういうのも考えないと。あ、私の分を分けてあげる。どうせいつもこうなんじゃないかって義人君の分まで作ってきちゃったの」

「本当に?それはありがたいよ」

 義人は喜んだような素振りで受け答える。「手短に」そうは言ったものの、それ以外にも理由はあった。真美はいつも自分のために何かしら作って食べさせる。それが彼女にとって至高の喜びだからだ。義人にはそれが分かっているから彼女の期待を裏切りたくないとばかりにわざと自分が持ってくる分をこんな粗末なものにしているのだ。

「ねえこのタコさんのウインナー作るの苦労したんだ。可愛いでしょ?」

「上手くできてるな、食べるのがもったいないくらいだ」

「でもちゃんと食べなくちゃだめだよ。はい、あーん」

「おお、あーん」

 義人は少し戸惑い気味に真美の受け答えに応じる。このまま何も起こらないでほしい。そう願っていたが、また来るんだろうなあ。今頃俺のことを探してこれからようやくになって見つけ出すんだ。そう気にしながら義人は真美とのランチタイムを過ごす。そうしながらも食べる真美との昼食は義人には心地よかった。今度は花形に切った人参を口に入れてもらう。火の通し加減もよくて似たのか蒸したのか、真美がどう工夫したのか考えるだけでも想像が膨らむ。そうして一時的な安らぎに義人は浸っていた。

「あ!見つけた!」

 向こうから聞きなじみのある元気な声が聞こえた。そう中学の頃から馴染みがあったから誰のものなのかすぐ分かった。声のした方を見てみると目に入ってきた姿もこれまた馴染み深いものだった。これまたセミロングに左右の髪を纏めたツーサイドアップ、吊りでも垂れでもない真ん丸な目に眉はちょっと上がり気味になっている少女。

「由香・・・」

 両手を腰に当てたポーズからそのまま歩み寄って彼女は言い出す。

「全く、いくら同じクラス同士だからって、この幼馴染のあたしを差し置いて佐和山さんとイチャイチャしちゃって」

「別にお前を差し置いたわけじゃない。只誘われたから受け答えただけだ」

「そうだよ三木野さん。第一、幼馴染だから何なの?そうだからと言ってあなたを特別扱いするわけにもいかないんだよ」

 真美は水を差されてちょっと頬が膨れたような表情を見せる。

「アンタに義人の何が分かるっていうの?義人は昔からそうなの。人に頼まれたり誘われたりしたことは何が何でも受け答えいて、そうしすぎちゃってついパンクしちゃうんだから。やっぱり義人にはアタシが付いていないと。ねえ義人」

 そう期待をするような様子で義人を見つめる由香。

「もちろんそうし過ぎちゃうことは自覚しているし、お前が心配してくれていることだって分かっている。けどだからと言って折角の誘いを断るわけにはいかないんだよ。真美の俺に対する気持ちを無駄にしたくないから」

「アンタねえ、それって義理的にやっているだけなんでしょ。アンタ自身はどうしたいわけよ。その子じゃなくてあたしに誘われたらあたしと昼休みを過ごそうっていうの?」

「え、そうだったの?義人君、私と食事するの本当は楽しくなかったとか」

 不安そうに真美が見つめる。

「そ、そんなことあるもんか。真美にも由香にも、どっちにも誘われてもうれしいというか」

 由香が目を細めてこちらを見つめて言う。

「またそんな曖昧なことを。結局アンタは誰のことが好きなわけ?」

「勿論私のことだよね?」

「あたしの方だったら今すぐ一緒に食べようよ。こっちも用意してきてるから」

 由香の手にはフィルムに包まれた市販のサンドイッチとパック入りの牛乳とこれまた義人の昼食と五十歩百歩な内容のものが。真美の弁当とは似ても似つかない。真美と違って由香は料理が苦手なのだ。だから自分の分の昼食も手抜きだったりする。

 ここで義人は葛藤してしまう。包容力あるクラスメイトに元気な幼馴染の由香、どっちも魅力的ではあるし何よりも俺のことが好きなんだ。そのことは分かっているさ。だからこそどっちの気持ちも切り捨てる真似はしたくないんだよ。どちらか一方だけ選ぶことが出来ない。ああどうしたら・・・・・。今正に頭を痛めていた。と、その時。

「見つけましたよ三木野さん」

「あ、俵さん」

 後ろから由香に話しかけるように一人の少女が現れ、由香は固まりかけるような声と動きで振り返る。黒いボブヘアー、シュッと締まった唇に少し吊り目の凛とした佇まい。

「千恵まで・・・・・」

 これでとうとう義人が頭を痛める少女三人が揃ってしまった。彼にとってこれは最悪の事態と言っても過言ではない。

「三木野さん、この前の小テストでまた赤点を取りましたね。今日再試験があるのに勉強もしないでいいのですか?」

「お前またなのか・・・・・」

「うるさいわね!今はそれとこれとは別よ!」

 慌てた様子で由香はわめき散らすが、千恵は冷淡に言い続ける。

「『それとこれとは』じゃないでしょう。あなたそうやって義人君との色恋沙汰に現を抜かして勉学を疎かにして、そんなことではこれから先落第するようなことがあってもおかしくありませんね」

 それに負けじと由香も言い返す。

「何よ!そういうアンタこそ、この前義人とイチャイチャしてたくせに。自分だって人のこと言えないじゃないの」

「え、俵さんと?」

 真美もちょっと不安そうな顔をする。

「あ、あれは義人君に色々学校の手伝いをして貰っていただけです。それに仮にそういうのだったとしても、私はちゃんとやるべきことをやっているうえで彼と交流しているまでです。あなたのように現を抜かすような馬鹿な真似はしません」

「馬鹿って何よ!?それじゃあ義人の意志はどうなるわけ?自分だけ勉強できるからって、優等生だからって義人を独占していいとでも?それって自分以下のものにその資格がないって見下しているんじゃないの?そうやって恋敵、お邪魔虫を牽制しちゃって!」

「だからそういうわけでは・・・・・」

 由香に喧嘩腰に物を言われ、千恵も次第に苛立ちを見せる。激しい応酬の声は広場中に響いてその場にいる人たちの注目を集めてしまう。

恋の争奪戦とはかくも熾烈なものになってしまうものだ。自分のものにしたい一心で周りが見えなくなってしまうばかりか、自分のライバルを蹴落とすためなら色々と詰ったりすることもいとわない。こうした泥仕合で自分たちが醜態を晒していることも知らないでいるものだから尚のこと収拾がつきにくい。よく昼ドラやらなんやらで血みどろになったりすることもあるけれども、こちらとしても本人たちとしてもそれは避けてほしいところだ。

「義人君、今のうちにさあこっちへ」

 そのまま広げていた昼食を纏め、真美は義人の手を引いてその場からこっそり抜け出していく。

「あ、こら!待ちなさい!今日こそはっきりさせてもらうよ義人!」

「三木野さん!話は終わっていませんよ!」

 あとの二人もそれぞれを追いかけていくように走り出す。穏やかになるはずだった昼休みは早くも一人の男を巡ったドタバタ劇に変わってしまったのだった。

そうしている間にも周りの人たちが見ていた。「あ、いつもの四人だ」「また始まったな」「あの男子も罪作りだなあ」そうした目で見ていたのだった。勿論この光景を見られているこっちとしては実に恥ずかしい。よもやこんな馬鹿みたいな愛憎劇を見せつけるなんて。こうなってくると折角の昼の憩いのひと時も全く意味をなさなくなってしまう。あの子たちはそうした本質を見失っている。自分たちの安らぎさえ忘れてしまうだなんて、ここまでくると重症だ。






 そうして何やかんやありながら食事を済ませて午後の授業に向かう。

 しかしまあ三人もああして取り合ってまで俺のことを好きになったものだ。恋は盲目ともいうけどまさにその通りだ。自分の好きな人を我がものにしたい一心でそれ以外を顧みなくなってしまう。だから周りにどう見られてもお構いなしなのかもしれない。俺に対して答えを求めてこようともする。・・・・・分かってる、分かってるよそうしたい気持ちは。でもあんな複数人から求められたら誰を選んでいいのか分からないじゃないか。だって誰だろうと俺のことが好きだっていう気持ちには変わらない。だからこそその全員の気持ちを踏みにじりたくないんだ。それで失恋にくれて、この上ない不幸に陥るようなことがあったとしたら?俺はそんな目には合わせたくないよ。あの日のあの子にあんな言葉で傷つけて、そのことを謝ることもないまま二度と会えなくなったんだ。もうあんなことをするなんて御免だ。あの三人の気持ちにも応えたい。問題は選択肢だ。あの中で誰を選んでも残りの二人に応えてあげられなくなるのは確実だ。これでどうすればいいって言うんだ。

 どうしようもない状況に頭を抱える義人、そのまま静かに自分の席に着く。教科書、ノート、筆記用具、必要な道具は揃えた。授業を受ける心の準備も出来ている。それでも三人にどう受け答えればよいのか、深い悩みは消えることはない。






 放課後の当番の掃除も上の空だった。手に箒は持っているけど義人は全然作業にならずにいた。頭の中は三人のことでいっぱい、そうして教室の掃き掃除をしていたのだが、きちんと作業はしてもどうしても忘れることが出来ない。こうして自分の生活に支障をきたしているともなれば自分がどうにかしなければならない、義人はそんな使命感に今正に駆られていたのである。外を眺めれば青い空とそこに静かに漂う白い雲、そんな中にでもどういうわけか三人の顔が浮かんでくる。俺もとうとう病んでしまっただろうか、そう義人は思っていたのだ。

「コラ!」

バシッ

「痛った!」

 突然後ろから棒のようなもので頭を叩かれ、振り返る義人。そこには義人とは正反対の活気に満ちた少年がいたずらに笑って立っていた。大谷源、義人の親友だ。

「何だよ源!?」

 義人は頭を押さえながら言う。

「何だよじゃない。サボってんじゃないぞ、今日は俺らがそれぞれのクラスの当番なんだから」

「ここはあらかた終わったよ」

「そうか、それじゃあ俺と一緒にゴミ捨て場にゴミでも捨てに行ってもらおうか」

「ああそうする」

 そうして二人はゴミが詰まった袋を担いで校舎裏のゴミ捨て場まで向かった。その間にも二人は話をしていた。

「なあ義人。前からそうだけどさあ、お前うちの俵や由香、そっちのクラスの佐和山さんと随分な距離で接しているじゃないか」

「確かにそうだけど、でも俺対応に困っているんだ。皆俺に関係を迫ってるみたいで、一体だれを選んだらいいのか。由香は昔からの付き合いだし、真美は俺のことを温かく擁護してくれるからそれに応えてあげないと悪いし、千恵は堅物そうに見えて実はすごいやせ我慢しているから放っておけないし」

 義人は項垂れて言い返す。

「うーんモテる優男は罪だなあ。おまけにどっちのことも見捨てることが出来ないものときた。優男の宿命だなあ。そんなのお前の好みとか基準を立てられないのかよ。」

「それもよく分からないんだよ。俺っていつも相手の気持ちとかそういうのばかり気にしているから、自分がどう思うのかなんでどうでもよくなっちゃうんだよ」

 これまた複雑な回答に源は顎をさすって考える仕草をする。

「うーんそう来たか。何よりも皆が幸せになることを第一に考えているか。それじゃあさ・・・・・」

 そうして源があることを提案しだす。

「このまま全員と付き合ったらどうだよ?」

「え?」

 源の言葉に義人は一瞬耳を疑った。一体どういうことなのか今の彼には頭の処理が追いつかなかった。

「それって?」

「だからな、その三人全員をお前の彼女にしようってのはどうだ?ハーレムを作るんだよ!」

「はーれむ・・・・・」

 ハーレム、その言葉は今までの義人にはその頭にも思いつかないものだった。そう、たった一人の男が複数の女を自分の女にするのである。源としては義人が三人全員の気持ちに応えたいという人が良過ぎる性格を理解していた。だからこそそれに応えるためには自分を彼女たちに分け合ってもらうしかない。そうした結論に至ったのである。

「ほらよくあるじゃないか。漫画とかラノベでもさ、ヒロインたち全員が主人公のこと好きになって、その全員が主人公と結ばれるってやつが」

 義人に良かれと思って言い出した源、けれども義人は慌てて言い返す。

「馬鹿を言え!そんなの女たらしのお前の夢物語でしかないじゃないか。それにあれはお話の世界の中の話じゃないか!ましてそう言うものの中には異世界物である場合が多いから出来ることじゃないか。ここは日本だぞ。法で複数人との結婚なんて認められないし、倫理的にもどうかと・・・・・」

「だからどうした。そんなものはうまく潜り抜けられるようにすれば問題ないじゃないか。それに何よりも愛さえあればそんなの知ったこっちゃない。全てはお前の声を信じて、な?」

「俺の声を信じて、か」

「まあ俺だってとんでもないこと提案したことは自覚している。でもあれだ、当たり前に固執しては解決できるものも解決できないんじゃないかな?これから先無理な選択を迫られてばかりいるよりも彼女たちにそういう話をお前から持ち掛けた方がいい。それはあの子たちのためだし、お前のためでもあるじゃないか」

「俺のためでも・・・・・」

 自分のためにも、その言葉は義人の心にも響いたのである。

 源だって自分のことを案じてそう言ってあげているのかもしれない。こいつも中学の頃からの親友だし、色々不安になったり無理をしている俺に何かと気づかいしてくれて来たから分かる。確かに皆を幸せにすることが俺の幸せだ。だからこそ、そうした方が皆のためにも自分のためにもなるだろう。

「とはいえ、お前自身の思想、主義みたいなものもあるだろうからな。そこは無理に強制させるつもりはない。もうすぐバレンタインデーだし、あの子たちもお前にアタックしてくることだろう、それも三人同時に。そうなった時までの間に考えておくことだな」

「そうするよ」

 とりあえずそう答えておいた義人、その様子はなんだか落ち着いたように見えた。

「忘れるなよ。俺はお前の味方だから、お前がどうしようと健闘を祈ってるぜ!」

 源は義人を元気づけるように背中を叩きながら言う。こうして中学生からの親友に思いもよらない助言を受けた義人。そんな彼は嬉しい気持ちと同時に新たな不安にも駆られていた。

 ハーレムかぁ。確かにそんなこと考えもしなかったよ。男女の関係なんて一対一が普通だ。だけれども複数人に求められていて、その全てに応じたいともなればその方がいいかもしれない。そうして彼女たちを平等に幸せにできれば俺としても本望だ。だけれどもその後のことも視野に入れなきゃいけないし、何よりそれで彼女たちが受け入れてくれるかどうかだ。もしそれで拒否されたらどうしよう、俺は今度こそ追い詰められてしまうかもしれない。でも何としてでも説得しないと、これは皆のためなんだって。俺が誰のことも傷つけたくない気持ちさえ伝えれば分かってくれる。だけれど本当に俺は一人だけで三人を幸せにしてあげられるのだろうか。そこがどうにも心残りになってしまう。もしそれでダメでしたってなったらそれこそ彼女たちを不幸にしてしまう。法律上でも彼女たち全員と結婚することもできないし、家族や世間の人たちがどう思うだろうか。叶ったとしても問題は色々山積みだ。やっぱり無理があるかな。それでも愛があればいいって源も言ってくれはしたけれども、それだけでどうにかできるわけでも・・・・・。

 義人としては複雑な気持ちである。これもまた一つの葛藤か。源からハーレムに関しても提案されたはいいが、これまでは男女一人ずつが結ばれ合うことが普通である。それを一人の男が複数の女と結ばれるだなんて、普通であれば女をより取り見取りしているようにしか見えず、実に卑しいものになってしまう。男のロマンだのなんだのともいわれているが、自分の場合はそういうわけではなく、あくまで自分を好きになった子たちの期待に応じるものでしかない。そうである以上何も卑しいものではなく、むしろ全てを受け入れようとする度量がある寛大なものだと考えれば悪いものでもないだろう。こうして義人は彼女たちとの関係で思いを巡らせていたのだった。


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