第5話 王室主催のパーティの前に
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そんなある日、王城で他国の王族を招いたパーティが開かれることになった。
無論〝ファッション・ロザリー〟も大忙しよ。
その上、私のためのドレスも華やかに、でも品があるように作ることになったの。
体のラインは見せつつ、透けるレースでふわりとしたスカートを作る。
これだけで見違えるほど美しくなるわ。
「他国の王族か、確か隣国の第三王子がお越しになるという話だ」
「まぁ、隣国の第三王子様がですか?」
「噂では婿入り先、花嫁を探しているそうだよ」
「まぁそうですの。わたくしには関係のない話ですわね」
「だが、そろそろ結婚も考えないといけない年ごろだろう?」
渋るお父様。
でも、私は今、商売が楽しくて仕方ないのよね。
「お父様の言い分もわかりますわ。でもわたくし、今商売が楽しくて仕方ないの」
「ロザリー……」
「もし、この体型のままわたくしを愛して下さる男性が現れたら、その時は素直に結婚致しますわ」
満面の笑みでお父様に伝えると、父は小さく息を吐き「そうだな、お前の幸せがそこにあるんだからな」と微笑んでくれた。
理解のあるお父様で良かったわ。
今から三か月後の他国の王子を迎えたパーティがどうなるかなんて分からないけど。
でも、私は私。
営業もしつつ、いつもの宣伝活動に余念なく過ごすのでしょうね。
その前に、ひとつ小さなパーティに参加することになった。
富も名誉も手に入れた独身女を放っておくほど、この世界は甘くない。
「ロザリー嬢。よろしければ俺と」
「いえ、ロザリー嬢、よろしければ僕と」
そんな、『コイツの金が欲しい』というのが透けて見える男たちが群がってくる。
私の嗅覚と勘を舐めないでいただきたいわね。
――あなた達が欲しいのは、財産と店だけでしょう?
本当に愛を囁く時、人というのは目の色が違うのよ。
真摯に愛を紡ぐ時、男性の瞳、声色、全てに『真心』というのが籠もるわ。
「上辺だけのおべっかはいらないわ」
「そ、そんな」
「上辺だけなんて」
「あなた方、以前のわたくしを指さして笑っていたのは覚えていてよ」
「チッ!」
「記憶喪失と聞いていたのに……」
「分かったらどうぞお引き取りを」
「そう言わずさぁ……」
「そうそう、過去のことは水に流して」
駄目ね。
愛を語る声色一つ作れない男に、口説き文句だけ並べられても響くはずがないでしょう。
「あら、ではあなた方、自分を卑下して笑った女性と結婚できるの?」
「は?」
「え?」
「できないでしょう? わたくしも一緒。笑ったような男とは結婚しないわ。言っておくけど、わたくしを笑い飛ばした男たちは皆、顔を覚えていますからね」
「くそっ!」
「お高くとまりやがって!」
「あら? それのどこが悪いの? わたくしは結果を残したわ。あなた方は何か、結果を残したのかしら?」
「もういい!」
そう言って去っていった。
こういうことが最近増えたわね……。
いい加減ああいう馬鹿が増えるのも鬱陶しいし、婿養子も欲しい。
どこかにいい人いないかしらね?
「ロザリー様のまわりは、いつも賑やかですわね」
「フォロスマ公爵夫人。お久しぶりでございます」
「堅苦しい挨拶は結構よ。私も今では〝ファッション・ロザリー〟の愛好者だもの」
「恐れ入りますわ」
今では公爵夫人さえも私の店のファン。
〝ファッション・ロザリー〟を知らぬ者はいないと言う程になっていたわ。
短期間ではあるものの、品質、美しさ、着心地全てを兼ね備えたドレスは、どの貴族にも愛用されるまでになったの。
「来月開催される王室主催のパーティには来られて?」
「ええ、伺う予定ですわ」
「そう……もしかしたら、貴女はその時〝女神〟になるかもしれなくてよ?」
「女神……ですか?」
「ええ、今は内緒。……そう呼びたくなる者が現れても不思議ではなくてよ」
女神……という単語だけではわからないけれど、一体どういうことかしら?
考えても仕方ないわね。
王室主催のパーティ次第だもの。
「もし女神になることがあれば、貴女は更に手の届かない素晴らしい女性になるわ」
「ふふふ、もし女神になることがあれば、ですわね」
「私はその可能性が高いと信じています。その時を楽しみに……」
「ええ、わたくしも楽しみにしておりますわ」
でも――。
見た目がふくよかでも、どれだけ体型を気にしていても。
それがいつしか〝女神〟になる。
ある意味、浪漫があるわね。
とは言っても、隣国の第三王子が来るパーティ次第だけど。
隣国の勉強まではしていないわね。
だって、ドレス案を出すのに忙しいんですもの。
まだまだこの忙しさは続きそう……。
終わったらリフレッシュするために、体をほぐして一日でも自由時間を持つの。
その時を楽しみに、私は今を頑張っているのよ。
隣国はその後ね。
覚えていればだけど。
「それより、我が家を狙う羽虫が増えたことが問題だわ。早急になんとかしたいけど」
でも、運命の相手なんて――簡単に出会えるわけでもなし。
私は小さく溜め息を吐き、その日のパーティでいつも通り広告塔になりつつ女性たちと歓談し、客を広めていった。
そして待ちに待った一ヶ月後の王室主催のパーティ。
隣国の第三王子が国に訪れパーティが開かれることになった。
お父様の言う通り、隣国の第三王子にはまだ結婚相手も婚約者もいないらしく、女性たちは色めき立っている。
(王子と結婚なんて、よく夢見られるわね)
私だったら、ノーサンキューだけど。
そう思っていたのに――注がれる熱い目線に、私は気づかなかった。
そして、それが何を意味するのか、知ることになる……。




